【File65】彼の地元にまで飛んで追いかけたのに失恋した話
今振り返れば「イタいな、自分!」と思うけれど、あの時は全力だった恋愛。そんな“イタい恋の思い出”は誰にでもあるものですよね。今では恋の達人である恋愛コラムニストに過去のイタい恋を振り返ってもらい、そこから得た教訓を紹介してもらう連載です。今回はぺろ美さんのイタい恋。
こんにちは、ぺろ美です。
主にTwitterにて数多の恋愛相談を受ける私ですが、結婚して家庭を築くまでの恋愛の失敗はなかなかのものがありました。
思い込んだらイケイケドンドンで、好きなら好き! と突き進むタイプ。当時を詳しく思い出すほどに、変な声が出たりうつ伏せになって足をバタバタしてみたくなったりと少し様子がおかしくなりました。自分と向き合うってしんどいですね。
今日は皆さんに私のイタい過去の恋愛をお話しします。初めて話すのがこんなビッグな場所で大変恐縮ですが、どうぞ心の中で笑っていただけると幸いです。
優しくてノリが良く、話の尽きない男
学生の頃の話です。
春から始めたアルバイト先で知り合った、2つ年上の男性。話すうちにどんどん仲良くなり、柔らかな相槌と優しい笑顔の彼をいつしか大好きになっていました。
「連絡先教えてよ!」とメールアドレスを教えてもらい、それからはほぼ毎日メールを送り合う仲に。メールでも、会って話しても話が尽きることはなく、何を話しても大笑いで、バイト先でも「お似合いだねえ(笑)」などといつもからかわれていて、彼も「なんだよ(笑)!」と言い返しつつも照れたような笑顔だったし、はたから見てもかなりいい感じだったと思います。
そこに公園があれば、ジュースを飲みながらあーでもないこーでもないと夜通し空想のようなことを話し込んだり。たまにうちに遊びに来て、夕方になればご飯を買い出しに行って、音楽をかけながらふたりでわいわいと作って食べました。エモ。
パスタ作るの上手だったな。美味しいパスタ作ったお前。
彼の地元に招待される
初夏のよく晴れた日。私と彼が同じシフトでバイト中のことでした。
「俺、夏休みに入ったら帰省するんだー」
「え、そうなんだ! しばらく会えないね〜寂しいなぁ」
彼の実家は他県で、かなりの距離があります。どのくらいの期間帰るんだろう。少し考えていたら彼が、
「……うちの地元、遊びに来る?」
……行っていいのっっ…………!???
舞い上がった私は「行く!」と秒で返事し、約束を取りつけたのでした。
だいぶ遠いとか関係ない。行きたいなら行く。むしろ行かない理由がない。彼の地元、どんなところなんだろう……! 楽しみすぎる!!
その日のバイトは忙しかったけど笑顔で頑張れました。早く来い夏休み!
と同時に私は、「そろそろこの関係に名前をつけたい! ちゃんと彼女になりたい!」と、彼の地元に行った時に告白しようと決意したのです。
こんなに一緒にいて、地元にまで行けて、これは脈しかないだろって思ってました。
そして数週間後、私は新幹線に乗り、彼の地元に遊びに行ったのです。地元の駅の改札で待ってくれていた彼と会った時、すごく胸がキュンとしたのを覚えています。かっこいい!! 会いたかった……!!
それから彼は有名な地元のスポットや飲食店に案内してくれました。とても暑く、キラキラと眩しい日でした。
ついに気持ちを打ち明けるも……
彼との地元デートを楽しむかたわら、私は夜にする予定の告白のことを考えてずっとソワソワしていました。
(なんて言おうか、うーん、でもいいか、気持ちが伝われば……!)
いざ、夜になり、彼とこじんまりとしたおしゃれな居酒屋でご飯を食べていました。いい感じの照明の暗さと、ゆったりした音楽の雰囲気の良さに力を借りてついに……
「あのね、私たちさ……ちゃんと付き合おうよ!」と彼に伝えました。
……言った!!!
彼は一度じっとこちらを見てからスッと目線を外し、
「ごめんね、いま好きな人がいるんだ」
え、え、え、マジで???? この状況で振られることってあるんだ???
きっと顔に出ていたんだと思います。もしかしたら声にも出ていたかもしれません。地元にまで飛んで追いかけてきたのに、こんないい雰囲気の中でのダイナミック失恋。
……恥ずかしすぎる!!!!
気まずくて沈黙もつらくて、「……地元にまで遊びにおいでなんて言ってさ、」と言ったら、彼も「……ごめん! 来てくれたら楽しそうだなって思って……」と弁解しましたが、楽しそうだなで呼ぶんじゃないよ女性を! 暇つぶしにすんな!!
悲しさもありましたが、急激に心が冷えていくのがわかりました。みんなみんな全て無くなればいいのに。滅。
恋の終わり
こうして私の恋は撃沈し終わりを迎えました。
その後の記憶が無いのできっと彼の地元のどこかに落としてきたのでしょう。あのやたらしゃれた居酒屋でしょうか。もうそれでいいです。
帰りの新幹線でお弁当をもぐもぐと食べたのだけなんとなく覚えています。どんな時でも食べられることは大変良いことです。こんな時くらい落ち着いてもいいんですけどね、私の食い意地。元気かよ。
その後しばらくして夏休みが終わった彼が出勤してきましたが、バイト先で顔を合わせた時も何もなかったかのように「無」でいられたのは良かったなと思います。
自分の切り替えの速さは今もけっこう好きです。
イタい恋から得た教訓「恋は理不尽」
どれだけ好きであったって、どんなに相手を想っていたって、たとえそれが相手に伝わっていたとしてもそれが片方のみじゃダメで……。双方向でなきゃカップルにはならないんですよねえ。いや落ち着いて考えたら当たり前のことなんですけど。
当時は天啓かのように「そっか!!!!」って思いました。そっか! じゃないよ。
でも、できることはやったし、想いは出しきったので全然引きずらなかったのが幸いです。若い恋心を思いっきりぶつけさせてくれてありがとう。いつも楽しくて大好きだった。もう顔もあんまり覚えてないけど。
思い出すと少し切なくて甘酸っぱい、私のイタい恋の思い出です。
(文・ぺろ美、イラスト・菜々子)
※この記事は2022年10月23日に公開されたものです