お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

全て並立する「フレキシブルキャリ」。日本ロレアル菅友美さんの働き方

#働くわたしの選択肢

ミクニシオリ

「バリキャリ」「ゆるキャリ」……女性の働き方って、本当にこの2つだけなの? 100人いれば100通りの働き方がある。一般企業で働く女性にインタビューし、会社の内側や彼女の働き方を通して、読者に新しい働き方「○○キャリ」の選択肢を贈る連載です。

取材・文:ミクニシオリ
撮影:三浦晃一
編集:錦織絵梨奈/マイナビウーマン編集部

働きながらの子育てって、まだ経験していない自分からすると、ものすごく大変なことのように感じることがあります。自分の時間が少なくなって、家事をしながら働くという生活は、自由に働ける独身時代にはあまり想像できません。

日本ロレアルのリサーチ&イノベーションセンターで働く菅友美さんも、働くワーママのひとりです。院卒でロレアルに入社して、育休取得後現在は2人のお子さんを育てながら、とあるスポーツを続けて日本記録を更新した女性でもあります。

実は、菅さんはフリーダイビングという競技の日本記録保持者。お子さんが小さかった頃に、学生時代から続けていたスポーツの世界大会で記録を更新しました。

都会で子育てしながらのフルタイム勤務、そしてスポーツへの挑戦……。とても凡人にはできない生活のようにも感じましたが、菅さんは「やってみると意外と、なんとかなっちゃったんです」と言って柔らかく笑ってくれました。

そんな菅さんの働き方は、一言で表すなら「フレキシブルキャリ」。忙しい菅さんは、少ない時間の中でさまざまなことを効率良く並立していきます。複数のことを同時に行う、働くママ研究員の効率の知恵……気になりますよね。

悩んだ時は「自分のタメになる選択を」。その勇気が作った両立キャリア

ミクニ
菅さんは新卒から14年間、ロレアルの研究所に勤めていらっしゃるんですよね。フリーダイビングに挑戦しながら会社員も……って、珍しい経歴じゃないですか?
菅さん
もともと大学では海洋について研究していて、フリーダイビングと出会ったのも海に興味があったからなんです。マイナースポーツなので、プロとして活動しようとはもともと考えていなくて。

菅さん
海の汚染物質を食べてくれる海洋細菌に興味を持って修士課程まで進み、大学で研究した微生物の知識を利用した研究に関わりたいと思って就活をしました。その時に、ロレアルのブランドであるshu uemuraが、当時海洋細菌を使ったコスメを開発していたことを知って面接を受けた……という感じです。
ミクニ
化粧品業界志望というわけではなかったんですね。
菅さん
理系の修士卒は研究職の仕事に進む人が多いので、私も食品メーカーや化学メーカーの研究職の面接を受けていました。化粧品業界に進むというのは、学科の特徴から考えるとすごく珍しかったと思います。海洋研究ですからね(笑)。
ミクニ
となると、逆に入ってからお仕事にギャップはありましたか?
菅さん

そうですね、当時はかなりありました。運良く入社後はshu uemuraの研究開発員として配属されましたが、海洋細菌のコスメの開発のプランがすぐには無かったので、私は研究とは特に関係無く、スキンケア商品の商品開発に関わりました。

でもまあ、なかなか自分の研究をそのまま続けていける研究員も少ないので、社会人になった段階で変化する必要はあるのかなと、必死でスキンケア成分の勉強をしましたね。

ミクニ
社会人になってからも、学生時代とはまた違う勉強を続けられているんですね。
菅さん
はい。その後、産休・育休を2回取って、現在はスキンケアの成分開発のチームに所属していますが……その間も、できる範囲で日々勉強は続けています。
ミクニ
お子さんもいらっしゃるんですか⁉ 産休・育休を2回取られたということですが、職場復帰は大変ではなかったですか?
菅さん
そうですね、当初はちょっと勇気が必要でした。産休中も結局バタバタで、なかなか勉強ばかりしていられないし、いざ育休が明けても、保育園の送り迎えやら子育てやらで、なかなか残業もできないですし。

▲日本ロレアル リサーチ&イノベーションセンターが入っているかながわサイエンスパーク(提供写真)

菅さん
でもロレアルはすごく社員の生活に理解のある会社で、女性も多いし、産休を取得する方もとても多いので、誰かが休みを取っても「みんなで助け合おう!」という空気があるんです。だから私もがんばらなくちゃと、フレックスタイムで調整したり、家で子育ての合間に勉強したりしています。
ミクニ
職場の雰囲気がとても良さそうですね。それでも、子育てと研究開発職の両立は大変じゃないですか?
菅さん
まあ、開発中も何か分からないことがあれば、本を開いてメモを取ってと勉強しながら働いている感じですね。先輩たちも親身に教えてくれますし、今振り返るとなんとか効率良く両立していたのかなあと。今は子どもが少し大きくなって、出産で一度休んでいたフリーダイビングにもまた挑戦できるようになっているんです。

ミクニ
子育てとフルタイム勤務とスポーツを掛け持っているということですが、もし自分なら……と考えるとできる気がしません。出産前などに「できなかったらどうしよう」という不安はありませんでしたか?
菅さん
もともとあまり計画的なタイプではなくて、今考えると「なんとかなるかな」と軽い気持ちでやってみてしまった感じかもしれません。先回りの準備は苦手なので、その時その時でなるべくフレキシブルに対応できたら、とは思っていました。職場復帰も長男がまだ生後3カ月の時に、まあやってみようかと思ってしてみたり。
ミクニ
一般の産休より早く上がられたんですね。
菅さん
産まれたのが2月だったので、4月の保育園への入園には間に合わないかなと思っていたんですけど……5月になって急に、一人分枠が空きましたと電話をもらって。それを逃したら来年の4月かと思ったら、もうやるしかないなあと。5月に慣らし保育して、6月には職場復帰という感じで、バタバタでしたね。
ミクニ
そういった「ここぞ」という選択で、悩まれることはありますか?
菅さん
あまり無いかもしれないですね。だいたい、どっちかしか無いということが多いと思うんですけど、そういう時はまあ、できるだけポジティブな方というか、自分のタメになりそうな方を選ぶようにしているかもしれません。

ミクニ
いざやってみたらやれちゃうというか、そういうご自身を信じているんでしょうか。
菅さん

決める瞬間は、そんな深いところまで考えていないんですよ。その後、下の子が2歳になった頃にフリーダイビングの世界大会に出場できるタイミングもあって。挑戦してみたいなと思ったけど、潜りに行くまでの時間はなかなか作れなかったんです。

だから保育園の送り迎えをしながら、電車に乗っている時は一駅分息を止める……という“ながら練習”を日々していました(笑)。その時の大会で、日本記録を更新できたんです。

次のページを読む

SHARE