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【File55】モテたくてついた嘘から大変なことになった話

#イタい恋ログ

ウイケンタ(コラムニスト)

今振り返れば「イタいな、自分!」と思うけれど、あの時は全力だった恋愛。そんな“イタい恋の思い出”は誰にでもあるものですよね。今では恋の達人である恋愛コラムニストに過去のイタい恋を振り返ってもらい、そこから得た教訓を紹介してもらう連載です。今回はウイケンタさんのイタい恋。

「大人の条件は何か」と問われれば「過去の失敗や修羅場を笑って話せる人」と答えます。人は皆、過ちを繰り返し、反省し、自分を許しながら大人になっていくのです。

特に恋愛において人は多くの過ちを犯してしまうもの。みなさんも今思い出すと「なぜあんなことをしたんだろう」と恥ずかしくなり、枕に顔を突っ伏して懊悩してしまうような思い出がいくつかあるはずです。

今回はそんな過去の過ちを、39歳で独身を謳歌する僕がお話しさせていただきます。

好きな人の趣味に話を合わせてしまう功罪

若き頃の僕はとにかく「女性は自分と共通点が多ければ多いほど好意を抱いてくれるに違いない」と信じていました。これは女性も同じかもしれませんね。だから、気になる異性が「このバンド好き」とか「この食べ物が好き」と言えば「俺も(私も)それ好き」と言ってしまうのです。

僕の場合の問題は、そのハードルが低いこと。時に自分が全然好きじゃないものや、全く知らないものだったりしても「俺もそれ好き」と言ってしまうのです。

例えば映画。しんどかったのは、好きな女性が「フランスの映画が好きだ」と言った時。「好きな映画はタイタニックとアルマゲドンです」と言っていた僕も、その瞬間からフランス映画好きになります。とりあえず次のデートまで何本もフランスの映画を見ました。アメリカよりもはるかに覚えにくい名前の監督や俳優さんも覚えました。

その中で特につらかったのは、その子が好きな映画のほとんどがモノクロ映画ということ。しかも、物語が難解なものが多く、(何が面白いんだろ……)と眉にシワを寄せながら何本も見た記憶があります。

でも、これくらいはもしかしたらみなさん経験あると思うのです。しかし、そんな僕が今もなお、いつ思い出しても(あれはやりすぎだったな……)と感じることがあります。

「雪国出身ならスノボ上手いよね?」「もちろん!(嘘)」

それはスノーボードです。確か21歳だったと思います。気になる女性に「そういえば山形出身だったよね? 雪国の人ってスノボ上手でしょ? 私、2回しか行ったことないけどスノボって楽しいよね。スノボ行きたい」と言われて、「俺もスノボ好き。めちゃくちゃ上手いよ。雪国なんてスノボしかすることないから。冬になったら行こうよ。教えてあげるよ」と言ってしまったのです。

雪国の人って寒さに強くてウインタースポーツが上手いと思われがちですが、寒いもんは寒いし、ウインタースポーツしたことない奴なんて山ほどいるもの。

これで終わるなら良いのですが、時々引くに引けない状況が訪れます。その時は「じゃあ冬に何人かで泊まりでスノボ行こうよ。今友達に連絡しちゃうね。なかなかスノボ連れてってくれる人いないから助かる!」と、どんどん具体的になってしまったのです。

モテたいがためにスノボに時間とお金を費やす

それから大変でした。スノボやったことないなんて口が裂けても言えません。なぜなら、モテたいから。

まず、夏スキーができる場所に初心者向けの合宿に行きました。もちろん1回の合宿では上手になれないので「人に教えられるくらい」になるまで何回も通います。

道具も一式揃え、バイト代はスノボのギアや合宿代に全部溶けました。さらにはスキー場に行けない時も本やDVDで勉強するほどの入れ込みよう。スノボがうまくなると聞けば、スケボーの教室にも通いました。

……と、こんな風に僕はスノボに膨大な時間とカロリーとお金を費やしてしまったのです。結果、冬が来る頃にはアマチュアの大会で優勝できるくらいの腕前になってしまいました。

準備万端。しかし現実は甘くなく……

予定よりうまくなっちゃったけど、とにかくこれでモテるに違いない。そう安心したのもつかの間。想定外のことが発生しました。スキー場までの運転です。当時の僕は、免許証は持っていましたが、ペーパードライバーでした。何人も乗れる大きな車で、しかもスキー場までの雪道運転なんかできるわけありません。

ということで、レンタカーを借りて何日も運転の練習をしました。一般道はもちろん、高速道路や雪道も。練習で当日行く予定のスキー場まで一人で運転して帰ってきたこともあります。

その甲斐あってか、当日は当たり前のように運転して、当たり前のようにスノボをして楽しめました。

しかし、帰りの道で僕の好きな子が「今、好きな人がいて。バイト先の先輩なんだけど」と話し始め……。この時、(もう俺にはスノボしかないな)と感じました。

僕にとってはモテたくてついてしまった嘘から始まった半年間の壮大なプロジェクトですが、彼女にとっては楽しい冬の一日に過ぎなかったのです。

イタい恋から得た教訓「キモさと本気さは紙一重」

今考えると己の猟奇的とも言える行動に(何やってたんだろ。必死だな。当時の自分、キモイな)と感じるのですが、これは僕に限ったことではなく、世の中の定説として「恋愛すると人はキモくなる」というものがあるのです。

人間は恋愛すると間違いなくキモくなります。それは、時々SNSに晒されるLINEのスクショや、恋愛リアリティショーと言われている番組を見ていればよく分かるはずです。

みなさんも、僕のような自分をよりよく見せようと知ったかぶりをしたり、ロマンチックを演出したり、偶然を装ったり、嘘をついたり。そんなことが、なんかあったと思うんですよ。無いとは言わせませんよ。

僕らは大人になればなるほど、賢くなり、ずるくなってしまい、傷つかないように、恥をかかないように、変なやつと思われないように、何でもかんでもスマートに終わらそうともしちゃうんですけど、キモさと本気さって本来は紙一重なんだよなぁ、時々自分のことキモイと思えるくらいの恋愛も必要なんだろうなと、今回このコラムを書きながら思いました。

(文・ウイケンタ、イラスト・菜々子)

※この記事は2022年07月03日に公開されたものです

ウイケンタ(コラムニスト) (コラムニスト)

38歳独身。物書き。『ハッピーエンドを前提として』(KADOKAWA)、『エンドロールのその後に』(大和出版)著者。オンラインサロン「喫茶クリームソーダ」オーナー。15年のサラリーマン生活を経て、現在は書評、ブログ、コラムなどを執筆。カレーと飲酒とゴールデンレトリバーが好き。

Twitter&Instagram @ui0723

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