【第10話】恋は辛いもの? 初恋のもたらした功罪とは
恋愛・婚活コラムニストのやまとなでし子さんが、フジテレビ系連続ドラマ「恋なんて、本気でやってどうするの?」を毎週考察&するコラムです。”恋に本気になれない”6人の男女が織りなす群像ラブストーリーの同作。6人が「恋はいらない」と言う理由は? この先も恋はしない? 現代らしい合理主義な登場人物たちの恋愛模様を考察します!
※このコラムにはドラマ『恋なんて、本気でやってどうするの?』第10話までのネタバレが含まれます。
最後に見せたわざと息子との約束を破った母の愛
突然人生の転機に立たされた純(広瀬アリス)。
食器デザイナーとして頑張ってきた中、営業部への異動を命じられ、柊磨(松村北斗)との関係はギャンブル依存症の母・真弓(斉藤由貴)の存在によって一気に悪化。そんな中、安心安全の大津(戸塚純貴)からはプロポーズを受け……と、環境が一気にぐるぐると渦を巻き始めました。
一方、純を失った柊磨はオーダーを取り間違えたり、大学生の飲みサーばりの瓶一気をワインでかますほどの傷心っぷり。そんな柊磨の様子を見て、真弓もつられて店のワインを開け「お店のお酒飲んだら施設に帰るって約束だったよね」と施設に帰ることに。おそらく純といることが柊磨にとって一番の幸せであると考えて、身を引くためにわざと約束を破ったのでしょう。最後に母親らしい姿をお洒落な演出で見せてくれました。
拳でぶん殴り、札束で殴り返す泥試合
突然道端で男にぶん殴られた要(藤木直人)。前科を乗り越え、シェフとしての人生を歩み始めた週刊誌の記事を見て、昔の投資詐欺被害者が「ふざけるな!」とカチコミにやってきたのです。
そんな被害者に、「おいくら?」と被害額200万に対し500万の小切手を切り、圧倒的財力でぶん殴り返して有無を言わさず突っ返した最強の女・沙羅(藤原紀香)。
沙羅は我々に、世の中金が全てであり、金こそ最強だということを身をもって教えてくれました(違)。ウーララー。
沙羅のおかげで要は命拾いし、断っていたフランス行きも決行することに。
一方響子は、妄想から始まった要との料理教室がきっかけで、フレンチのシェフになりたいという夢を持つことができ、ゲーマー旦那と離婚して料理の修行をするという大きな一歩を踏み出しました。今まで安心安全の道を歩んできた響子にとっては大冒険です。でもやりたいことが見つかるって人生において最も幸せなことの一つですよね。おまけに一緒に夢に向かって歩める理解者がいるなんて尚更です。
3年間は国を超えた遠距離恋愛ですが、ジョジョのスタンドばりに空想の要をいつどこにでも発現させて、いちゃつける響子の特殊能力があれば一切問題ないでしょう。国を超えた遠距離と言えば、会うや否や取るものも取らずホテルに直行して授かり婚となった横井プロを思い出しますが、響子たちは夢を叶えるためそこはしっかりタイミングを図っていただきたい。そして3年後、要が日本に戻って二人が結ばれることになった際には、沙羅は白紙の小切手をご祝儀に切るなどして、また財力でぶん殴っていただきたいものです。
恋のラフィオール料理対決! どっちの料理ショー!
大津は新オープンする勤務先のホテルを貸し切ってのディナーに純を誘います。そこで出てきたのはメインの料理がのった純のデザインしたお皿、ラフィオール。
予算上難しいとのことで、ホテルには別のお皿を発注いただいたはずでしたが「特別なお客様用に10組だけ発注したんだ」とどうにか少しでも純のお皿を発注しようという大津の計らいがイケメンすぎて泣きそうになってしまいました。
営業部に異動が決まり落胆する純に「いいよね、純の(お皿の)デザイン。俺は好きだよ」と絶対的な味方でいてくれて自己肯定感も上げてくれる最高の男。そんな大津が純にプロポーズをし、「お前は本当の気持ち、聞かせてくれん?」と問うのです。
画面越しに視聴者が「YES!」と前のめり答えたくなるほどの最高のシチュエーションでしたが、場面は変わり、突如サリューに走り出す純。誰もいない店内で、そこに置いてあったのは同じく純のデザインしたラフィオールにのった柊磨の料理。それを誰の断りもなくおもむろに食べ出す純。
え? 勝手に食べていいの??! サブリミナル的に一瞬柊磨に断り入れたりしてる場面でもあった?? と困惑し、何回か巻き戻してみましたが、やっぱりそこには突然店に入って勝手にモリモリ料理を食べる純の姿がありました。
大津と高級フルコースを食べた直後にも関わらず、こんだけ食べたくなるほどですから、柊磨の料理がどれほど彼女の気持ちを動かし、確信に変えたのかがわかるでしょう。
それぞれのラフィオールと料理の味が、恋に迷子だった純の気持ちをはっきりさせてくれました。
やっと恋にバカになれた純の念願のバカップル行動
純は、柊磨の料理を口にしたことで明確になった「好き」の気持ちをぶつけ、一番欲しかった柊磨からの「好き」の言葉を求めるのですが、そこも一筋縄ではすみません。
突如公園へと柊磨を連れ出し「みんなに聞こえるように好きって言ってー!」と離れた距離から大きな声で叫ぶのです。昭和のドラマをも彷彿とさせる突然のバカップルムーブでしたが、これは人前で手を繋ぐことさえ「いつか別れるのに恥ずかしくないのかな?」と言っていたはずの純が、バカみたいに恋に夢中になれるほどやっと恋に本気になれた大切な証なのでしょう。
初恋が柊磨だったことによる恋の刷り込み
柊磨も「大好きだーー! 二度と俺から離れないでくれー!」と答えるのですが、それに対する純の答えが「わかりません! 次は柊磨が苦しむ番! 私がいなくなるかもってヒヤヒヤしながら暮らすんだ。恋するってそういうもん!」と返したことにアヒルの刷り込みを思い出してしまいました。
アヒルって初めて見たものを親だと思い込みますが、純のこの発言も初めての恋愛が柊磨だったもんだから、モテ男ゆえの問題や、毒親問題に振り回され、安定や安心のない恋が当たり前であり普通だと刷り込まれてしまったからなんだろうと思います。
もし初恋相手が大津だったら、「次はあなたが苦しむ番」ではなく、「恋って彼氏という絶対的な味方ができて、心に平穏と安心、安定が生まれるもの」となっていたように思いますし、「同じ苦しみをあなたには味わわせたくない」と慈しむのが恋という認識になったのではとも思います。
初めての恋がエクストラハードモードだったために、恋は大変なことばかりだと刷り込まれてしまったわけですが、やっぱりここは大津だったろ!(個人的な大津推し)
でも、この人を好きになれたら幸せだと頭では理解していても好きになれないものですし、理性ではわかっていても、実際心がときめく相手って違いますからね。恋は本能が巻き起こすものですから。恋のライバルも真弓もいなくなった今、これからは障害のない楽しくて温かい恋が純に訪れ、認識がまた変わっていくことでしょう。
それぞれの幸せを掴んだハッピーエンド
その後、営業部異動に落胆していた純は会社を辞め、フリーランスでやりたいことを仕事にし、ゆくゆくは公私ともに柊磨と歩める道を選びました。柊磨は無事店の権利を得ることができ、ビストロを順調に切り盛りしているようです。
激甚災害レベルの出来事が色々降りかかった柊磨と純ですが、あのガラスのブレスレットのように何か起きても直せばいい! の精神で約一年後も順調に関係を構築しているようでしたね!
新たな夢に向かって歩みはじめた要や響子、紆余曲折乗り越えて結ばれたアリサ(飯豊まりえ)と克巳(岡山天音)もみんなそれぞれの幸せを見つけて順調そうでした。ひな子(小野花梨)だけ、なーちょび(ナダル)とは別れたのかサリューの2周年パーティに一人で来ていいましたが、きっと違う男性ともう恋に落ちているに違いありません。
いろんな人間模様と生き方、そして五月雨のように降りかかるトラブルやドラマに目が離せない10週でしたね!ドラマの後も彼らが見つけた本物の幸せはずっと続いていくことでしょう。
10回のコラムもお付き合いいただきありがとうございました!
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(やまとなでし子)
※この記事は2022年06月27日に公開されたものです