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【心理学】リスキーシフトとは? 具体例や回避方法をわかりやすく解説

小日向るり子

「赤信号、みんなで渡れば怖くない」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? これは、集団において危険な判断をしてしまう心理、「リスキーシフト」を表しています。今回は心理カウンセラーの小日向るり子さんが、リスキーシフトの意味と具体例、回避方法を詳しく解説します。

「リスキーシフト」という言葉を聞いたことはありますか? これは、集団で議論する際に、よりリスクの高い方向へ思考が動いていく心理状態を指します。

「赤信号、みんなで渡れば怖くない」という言葉がありますが、これはリスキーシフトによる行動を的確に表現したものだといえます。

今回はこの「リスキーシフト」について、その概念や心理状態、危険な判断を回避する方法を解説します。

リスキーシフトとは?

まずは、リスキーシフトの意味や概念について見ていきましょう。

意味は「集団になると高リスクな判断をする心理」

「リスキーシフト」とは、集団で何かを判断する時、より危険でリスクの高い決断をしてしまう心理状態のこと。

集団で討論する場合、極端にハイリスクもしくはローリスクな決断をしやすくなる「集団極性化」という心理の1つで、1961年、心理学者であるジェームス・ストーナーが提唱しました。

例えば、ある課題について討論する会議に参加するとします。その時、ほとんどの人は討論する内容について、事前に自分の意見やスタンスを持ってその場に臨むでしょう。

しかし終わってみると、当初思い描いていた結論以上に過激でリスクの高い意見に同調していた、ということがあるかもしれません。

つまり、このように「場の雰囲気に流されて」極端な判断をしやすくなってしまうのが集団極性化という心理なのです。

リスキーシフトが起こる原因

ではなぜ、集団になると極端な決断をしやすくなってしまうのでしょうか? リスキーシフトが起こる原因として、以下のようないくつかの背景が考えられます。

(1)集団では多数派の意見が目立ちやすいことにより、無意識にその意見を補完し合う心理状態が作られるため

(2)多数派の意見に強く同調することで、「仲間として好ましい人物」と認識されたい心理が働くため

(3)集団においては「極端な意見を言っても責任が分散される」という意識が働くため

(4)集団において、より過激な意見を出す人物が注目されやすい傾向にあるため

(5)集団の中に、他者が「NO」と言えないほど影響力の大きい人物が存在するため

こうした心理が働くことで、リスキーシフトが成立してしまう可能性があるのです。

「リスキーシフト」と「コーシャスシフト」の違い

いずれも集団極性化の心理の1つであり、集団において極端な判断をすることで問題を引き起こす可能性があります。

リスキーシフトは、集団反応がよりリスクの高いものになることを指し、闘争を引き起こしやすくなるという問題があります。

一方コーシャスシフトは、集団反応がより安全性の高い無難なものとなることを指し、変化が必要な局面においても現状維持に留まってしまうという問題があります。

つまり、リスキーシフトは集団において危険性の高い判断をすること、コーシャスシフトは集団において保守的な判断をすること、という違いがあります。

日常におけるリスキーシフトの事例

今やリスキーシフトは、私たちの日常にあふれていると言っても過言ではありません。

SNSや掲示板に見るリスキーシフト

昨今、話題に挙がることの多いネット炎上なども、集団極性化におけるリスキーシフトが影響していると考えられます。

リアルな討論の場では、発言者が明らかであり、状況によっては発言者が責任を問われることもあるでしょう。

しかし、SNSやインターネット掲示板は匿名性が高く、本名や顔を明かさずとも集団討論の場を作ることができます。

そのため、責任の所在が曖昧になり「赤信号、みんなで渡れば怖くない」の心理状態に陥りやすいといえます。

次ページ:リスキーシフトを回避するには?

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