お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

処女の定義とは? 処女と非処女を見分けることはできる?

宋美玄(産婦人科医・医学博士)

処女とは証明できるもの?

「処女の医学的定義」のところでも少し触れましたが、処女を医学的に証明することは、とても困難といえます。女性器の専門家ともいえる産婦人科医が診察しても、証明はできません。

処女膜は出産経験のある女性にも存在するため、産婦人科医が診察で処女膜を見ても、セックス経験の有無を判断することはできません。他に処女かどうかを正確に調べる方法も報告されていません。したがって、処女であることの証明は、現時点では不可能です。

処女であるうちに接種すべきワクチン

証明の有無に限らず、そもそも世の中には「処女でなければダメなこと」というのは、ほとんど存在しません。しかし、HPVワクチンの接種に関しては、処女のうちに行うことが勧められています。

HPVワクチンとは、子宮頸がん、咽頭がん、肛門がん、腟がん、尖圭コンジローマなどの原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染を予防するワクチンです。とくに子宮頸がんにおいては90%以上がHPVへの感染が原因で発症しており[*5]、セックスの経験がある女性の半数以上が、生涯に一度はHPVに感染するといわれています[*6]。

感染しても、大半の人は自然にウイルスを排除しますが、なかには排除できずに感染した状態が続き、子宮頸がんを発症してしまう人もいます。

それを予防するために、HPVワクチンを接種するのですが、HPVワクチンには、接種する時点ですでに感染しているウイルスを排除したり、がんの病変の進行を止めたりする効果は確認されていません。

そのため、最大限の効果を享受するには、セックスを経験する前に接種を受けることが推奨されています。日本では小学校6年~高校1年相当の女性を対象に、定期接種が行われています(2021年2月時点)[*6]。

もちろん、セックスを経験している人でもHPVワクチン接種による新たな感染予防の効果は十分にありますから、未接種の場合は医療機関に相談のうえ、HPVワクチン接種を受けましょう。

男性はセックスのとき、相手の女性が処女だと気付く?

処女であることを隠したい女性がいますが、その心理の背景に、「相手の男性に自分が処女であることを知られたらどう思われるか不安」という感情があることが考えられます。セックスをする相手に自分が初めてであることを知られると引かれてしまうののではないかという思いから、処女であること自体を忌まわしく思ってしまうかもしれません。

自分に経験が少ないことをコンプレックスに思う気持ちはとてもよくわかります。しかし、医学的にみても処女かどうかの判断は難しく、初めてのセックスで血が出るかどうかも個人差があります。初めてでなくても、腟への摩擦で傷ができれば血が出ることもありえます。

「セックスに慣れていないのかな」と感じることはあるかもしれませんが、処女かどうかを正確に判断することはできないでしょう。

処女かどうかより、相手との関係を充実させて

セックスをするとき、相手のセックス経験の有無を気にしている人は、じつはあまり多くないのではないでしょうか。セックスにおいて大切なのは、2人の間で楽しい時間を過ごすこと。処女であることを気付かれるかどうかの心配をしていると、せっかくのセックスを楽しめなくなってしまうかもしれません。

処女が知られてしまうかどうかを心配せず、まずは目の前の相手とのスキンシップを楽しみ、愛情を育んでいきましょう。

「処女」「非処女」にこだわる必要はない

ここまで、「処女」について述べてきましたが、処女の定義は、ここで紹介したものだけがすべてではありません。人によって考え方も定義もさまざまです。なかには処女を神聖なもの、希少なものと考え、価値を見出す人もいます。

ですが、先に紹介した調査にもあったように、18~34歳の女性の約半数がセックス未経験≒処女ということを考えると、処女はそれほど特別な存在ではないように思えます。

また、一度セックスをしたからといって、処女だったときと比べて、急に何かが大きく変わるものでもないでしょう。セックス経験の有無よりも、大切な相手と気持ちのいいセックスができることのほうが、ずっと大切なことではないでしょうか。

 

(監修:宋美玄、文・構成:山本尚恵)

※画像はイメージです

【参考文献】

[*1] 「大辞林 第三版」松村明・編/三省堂 p1260
[*2] 「暮らしのことば 語源辞典」山口佳紀・編/講談社 p344
[*3] 「セックスセラピー入門 性機能不全のカウンセリングから治療まで」日本性科学会/金原出版 p29
[*4] 「第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」国立社会保障・人口問題研究所 p24
http://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou15/NFS15_reportALL.pdf
[*5] 「HPVワクチンQ&A」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/qa_shikyukeigan_vaccine.html
[*6] 「ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン~」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/index.html

 

※この記事は2021年03月26日に公開されたものです

宋美玄(産婦人科医・医学博士) (産婦人科医・医学博士)

大阪大学医学部医学科卒業。丸の内の森レディースクリニックの院長として周産期医療、女性医療に従事する傍ら、テレビ、書籍、雑誌などで情報発信を行う。

主な著書に、ベストセラーとなった『女医が教える本当に気持ちいいセックス』がある。

一般社団法人ウィメンズヘルスリテラシー協会代表理事

この著者の記事一覧 

SHARE