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やりたいことは実現させる「突破キャリ」。りそなアセットマネジメント山口佳子さんの働き方

#働くわたしの選択肢

太田 冴

「バリキャリ」「ゆるキャリ」……女性の働き方って、本当にこの2つだけなの? 100人いれば100通りの働き方がある。一般企業で働く女性にインタビューし、会社の内側や彼女の働き方を通して、読者に新しい働き方「○○キャリ」の選択肢を贈る連載です。

取材・文:太田冴
撮影:洞澤佐智子
編集:鈴木美耶/マイナビウーマン編集部

アラサーにもなれば、なんとなーく気になってくる「お金」のこと。

将来、結婚して子どもを育てるならお金はかかるだろうし、一人で生きていくにしても準備は必要。「資料を集めなきゃ」「勉強しなきゃ」と思っても、なんだか面倒でついつい後回しに……なんていう人も多いはず。

今回訪ねたのは、りそなアセットマネジメント「未来資産形成ラボ」で所長を務める山口佳子さん。資産運用の会社で所長を務めるくらいの人なのだから、さぞかしお堅い雰囲気の方なのかしら?(偏見が強くてすみません……) と予想していたら、そのギャップにびっくり。

「私、とてもズボラですよ!」「お金のことを考えるのとか、正直面倒くさいですよね〜」と、あっけらかんと笑うのです。

所長なのにお金にズボラって、どういうこと!? お話、もっと聞かせてください!

新設部署は「社長に直談判して作ってもらった」

太田
今日はよろしくお願いします! 山口さんが所長を務める「未来資産形成ラボ」は、2021年1月に新設されたばかりなんですよね。
山口さん
そうなんです。実は今、とても忙しいです(笑)。
太田

そうですよね……! そんな中、時間を取っていただきありがとうございます。そもそも「未来資産形成ラボ」って、どんなことをするところなんですか?

山口さん
ざっくり言うと、資産形成に関する調査・研究を行って、情報発信をしていくところです。資産形成って、正直難しそうなイメージないですか?
太田
あります。「ちゃんと考えなきゃな〜」とは思いつつ、よく分からないんですよね……。
山口さん
そうですよね。資産形成自体のニーズは高まっているはずなのですが、金融機関から説明を受けてもいまいち分かりづらいことが多いと思うんです。しかも、分かりづらいこと・難しいことが、今まで当たり前のこととされてきました。

 

他の業界では、「いかにお客様に心地よく商品を使っていただくか」というようなことが重視されているのに、金融業界では「分かりやすさ」がないがしろにされてきたところがあるんです。

太田
たしかに、資産形成は難しいものだと諦めてしまっているかもしれません。
山口さん

そこを私たち「未来資産形成ラボ」では打破していきたいんです。私自身が過去にお客さまに接する現場にいたこともあって、現場目線と運用の専門家としての目線を融合させた形で、資産形成について発信をしていきたいと思いました。

そこで、社長に直談判して「未来資産形成ラボ」を作ってもらいました。

太田
え!? 社長に直接!?
山口さん

はい(笑)。既存の部署で新しいことをやるよりは、新たに部署を作っちゃった方が自由にやれると思ったんです。とは言いつつ、やっぱり仕事は増えるだろうなというのは覚悟していました。

予想通り忙しく過ごしていますが、やりたいことをやれているので楽しいです。

太田
私、今回の取材に際して「所長」と伺っていたので、勝手な先入観ですが、もっとご年配の男性にお会いするのかなぁなんて思っていたんです。同年代の女性が大企業の組織のトップを務められているなんてと驚きましたし、なんだかうれしかったです。
山口さん

そういうところも、狙いの一つでもあります。ファイナンシャルプランナーの方に話を聞くとしても、生真面目でいかにも金融の専門家って感じの人が説明しているとなんとなく「難しそうだな……」と構えちゃいませんか?

私自身は「資産形成なんて面倒くさいな〜」と思ってしまうほどズボラな人間(笑)。だからこそ、私のような人が発信する方が、より一般の方に近い目線で資産形成の大切さをお伝えできるんじゃないかと思うんです。

入社後のモヤモヤは資格取得が突破口に

太田
所長がズボラなんて、信じられません。そもそも山口さんは、お金や資産形成に興味があってりそな銀行にご入社されたんじゃないんですか?
山口さん
実はあまり金融に興味はありませんでした。
太田
そうなんですか!?
山口さん
2011年に入社したのですが、当時もひどい就職氷河期だったので、春の入社に間に合うように内定をくれた今の会社に、迷わず就職を決めました。金融系は、りそな銀行1社しか受けていなかったんです。
太田
入社してすぐは、どんなお仕事をしていたんですか?
山口さん
関西での採用だったので、関西にある支店で個人のお客さまに対して金融商品をご提案する営業をしていました。入社以降勉強はしていましたし、なんとなく知識は増えていく一方、少しモヤモヤする部分もあって……。
太田
モヤモヤ、というと?
山口さん

本当にお客さまの役に立っているのだろうか、と自信がなかったんです。私がご提案している商品で、お客さまは幸せになるのだろうか、と。

もちろん一生懸命やっていましたし誠心誠意お客さまに向き合っていましたが、だからこそ自分の仕事の意義みたいなものに疑いを持ってしまって……一度は退職も考えたくらいでした。

太田
そんなに悩まれていたのですね。どうして退職しなかったんですか?
山口さん

ちょうどモヤモヤしている時、タイミングよく東京の支店へ異動することになったんです。一度は東京で働いてみたかったし、「これはチャンスだ」と思い踏みとどまりました。でも、いざ上京したら、友達もいないし暇で暇で(笑)。

土日に何をすればいいか分からなくて、資格の専門学校に通い始めたんです。キャリアの幅を広げたかったので、資産運用の仕事をする人が一般的に取得している「証券アナリスト」という資格を取りました。

太田
精力的! 一度は退職まで考えたのに、結果的に前向きにキャリアを考えられているのがすごいです。
山口さん

きっと、上昇志向が強いんだと思います。当時すでに入社して5年が経っていましたが、そこで転職して全く別の業界で働くとしたら、ただ単に5年出遅れただけの人になってしまうと思ったんです。

それよりも、今までの経験を生かしながら何ができるか、というふうに考えた方が自分にとってプラスになると考えました。

太田
なるほど。実際、証券アナリストの資格を取得してみて、考え方は変わりましたか?
山口さん
大きく変わりましたね。モヤモヤが一気に晴れました。
太田
すごい。それはどうしてでしょう?
山口さん

これまで自分がやってきたこと、つまり、お客さまに金融商品・サービスをご提案するということに、アカデミックな裏付けができたことがうれしかったんです。というのも、勉強するまでは少し感覚的に仕事をしている部分があって。

資格の勉強をすることで、「全てにちゃんと理論があるんだ」と納得できたんです。

太田
自分の仕事の意義が、腑に落ちたんですね。
山口さん

はい。資産運用に関してアドバイスをする仕事は、勘に頼るようなものではなく、アカデミックなプロのお仕事なんです。資産形成は、お客さまにとって必要なこと。そう確信できたことが、現状を突破するきっかけになりました。

そして「これしかない!」と迷いなく今のキャリアを歩めるようになったんです。

アラサー女性は、まずは積み立てから!

太田
仕事柄、たくさんの資産形成の例を見ていると思います。マイナビウーマンの読者のような20~30代の独身女性たちの資産形成には、どのような特徴がありますか?
山口さん

きちんと積み立てなどに取り組んでいる方もいらっしゃる一方で、将来のお金のことを考えるのが面倒で何も手をつけられていない……という女性も多いのではないでしょうか。

私の周りでも、お給料の高い会社で働いているはずなのに、海外旅行や買い物で散財して貯金はゼロ、というような人も中にはいます。

逆に、資産形成に興味は持っているけれど、株などの短期的な運用のみに興味を引っ張られ過ぎているというケースもあります。もちろんちょっとした遊びくらいの感覚なら良いのですが、それとは別に土台となる資産形成にはぜひしっかり取り組んでほしいですね。

太田
株の売買で儲けるというだけでは、不十分なのですか?
山口さん
資産形成の世界では、短期的な売り買いよりも、長期的に運用を続けている方が確実に成功するといわれているんです。早めに始めて、運用をできるだけ長く続けることが確実に資産を増やすコツです。
太田
なるほど。では、全く何も手をつけていない人は、何から始めればいいのでしょうか?
山口さん

まずは積み立てをおすすめします。年齢が若く、しばらく使わないお金が少しでもあるのであれば、非課税枠を使って「つみたてNISA」を始めるといいと私は思います。税制優遇があり、本当におすすめです。

その上で、まだ余裕があるのであれば、iDeCo(個人型確定拠出年金)の利用もおすすめです。60歳まで引き出せない点は注意が必要ですが、その代わりに税制優遇を活用して確実に老後の資産形成ができます。

太田
山口さんのお話を聞いて、「ちゃんと資産形成に取り組まなくちゃ」と思いました。
山口さん

よかったです。お客さまがより良い資産形成ができるようにお手伝いをするのが私の役割ですから。ただ、今まで伝えられてきたことを疑ったり、今まで当たり前とされてきた考えを変えようとしたりしているので、なかなか理解してもらえないことも多いです。そこを乗り越えるのはやっぱりしんどいなとは思います。

太田
壁にぶつかった時は、どうやって乗り越えているんですか?
山口さん

乗り越えようというよりも、反対されて諦めるくらいだったら、そもそもそんなにやりたいことじゃなかったんだろうなと思います。そこまでの気持ちだったんだろうな、と。

結局私が諦めずにやってこられたのは、周りに手を差し伸べてくれる人がいて、志を持ち続けられたから。やりたいことができないなら、実現できる場所を自分で作っていくしかないんです。

太田
めちゃくちゃかっこいいです。与えられた環境で頑張ろうという考え方もありますが、山口さんの場合は「自分のやりたいこと」が軸になっているんですね。
山口さん

そうだと思います。思い返せば、これまでの仕事は全て自分で手を挙げて切り拓いてきました。同じ会社にいても、できることって無限にあるんです。

不平不満を言うのは簡単だけれど、その中で自分に何ができるのかというのを考え続けていれば、自分なりに満足のいく働き方ができると信じています。

太田
最後に、山口さんにとって「お金」とは何ですか?
山口さん

「面倒くさくて、煩わしいもの」ですね。

太田
意外な答えです。「人生において最も大切なもの」とかではないんですね。
山口さん

基本的に、面倒くさいじゃないですか、お金の管理って。ぼーっと置いておいたら勝手にお金が増えてくれたらどれだけラクかと思うんです。

でも、だからこそできることがあるとも思うんですよね。その煩わしさを分かっているからこそ、同じ目線で発信できることがある。その視点を大切にしていきたいですね。

※この記事は2021年03月19日に公開されたものです

太田 冴

ライター/平成元年生まれ。舞台、韓国ドラマ、俳優、アイドルグループ、コスメなどを幅広く愛する雑食オタク。ジェンダー・ダイバーシティマネジメント・メンタルヘルスなどの社会問題にも関心あり。30歳で大学院に入学し、学び直しをしました。

●note:https://note.com/sae8320

●Twitter:https://twitter.com/sae8320

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