「的を得る」は誤用? 「的を射る」の意味や使い方を解説
「的を得る」は誤用なのか?
ここでは、本来の言い方であるとされている「的を射る」に対して、よく目にする同様の意味を表した「的を得る」という言い方が誤用なのかどうか、ひもといていきます。
「的を得る」は必ずしも誤用とは言えない
冒頭でも述べたように、長らく「的を得る」「的を射る」はどちらが正しいかという正誤論争があり、はっきり決着しているわけではありません。
『三省堂国語辞典 第7版』では、「的を得る」を採録。「得る」には「当を得る・要領を得る・時宜を得る」の用法と同様に「うまく捉える」という意味があることから、「的を得る」を誤りではないとしました。
一方で、それ以降も「的を得る」誤用説を載せている辞書、誤用説を載せていない辞書、「的を得る」誤用論には触れないまま「的を射る」のみ採用している辞書などが混在しています。
つまり、辞書によっても立場が分かれており、「的を射る」「的を得る」両方の用法が混在しているのが現状です。
日常生活では「的を射る」「的を得る」どちらでも通じる
それでは、「的を得る」「的を射る」は、それぞれ実際にどの程度、認知されているでしょうか?
平成24年度に行われた『国語に関する世論調査』において、「“物事の肝腎な点を確実に捉えること”を表現する時、どちらの言い方を使うか」という問いに対して、「的を射る」と答えた人は約5割、「的を得る」と答えた人は約4割、その他は約1割でした。
調査では、全ての年代で「的を射る」を使うと答えた人の割合が、「的を得る」と答えた人の割合を上回っていますが、大差なく使われているわけです。
このように、どちらも同じくらいの割合で使われていて、前段でも触れた通り辞書でも両方が混在していることから、日常生活ではどちらでも通じると見ることができます。
公式な場では「的を射る」を使う方が無難
ここまで、「的を射る」「的を得る」の両方が混在していることについて述べました。
ただし、ビジネスにおいては、公的な文書やウェブサイト、公式な場での用法を統一する方が、混乱は起きません。
新聞記者やテレビ局のアナウンサーが表記の基準とする各社のハンドブックがあります。その中では、「的を得る」をただちに誤りとするものではないとしながらも、「的を射る」に統一するケースの方が多く見受けられます。
ビジネス文書などの書き方は、文化庁や報道の動きに準じることが多いため、今のところは「的を射る」の方が優勢である印象を受けます。
もちろん、日常会話におけるコミュニケーションでは、どちらでも理解されると考えて良いでしょう。