「主体性を持って行動してほしい」。
面談などで、上司からこう言われたことはありませんか? 仕事で頻出するビジネス曖昧語は多々ありますが、ビジネス慣用句二大巨頭は「コミュニケーション能力を生かしてほしい」と「主体性を持って仕事をしてほしい」ではないでしょうか。
大事っぽいのは分かるが、具体的にどういう状態を求められているのかがピンとこない……。皆さんも、ざっくり「自ら動いて問題を解決できる人」という認識はあるはずですが、結局どうすればいいのか悩むこともあるでしょう。
今回は、そんな「主体性」について解説します。
■主体性とは? 意味と求められていること
まずは、主体性の意味についておさらいしておきましょう。
◇主体性の意味と自主性との違い
主体性とは、「自分の意志・判断によって、自ら責任を持って行動する態度や性質」という意味です。似た言葉で「自主性」がありますが、こちらは「他に頼らず、自分の力で考えたり、行動したりすることのできる性質」とされています。
ぱっと文字列の意味を比べると、正直「同じでは?」と思ってしまいますよね。主体性も自主性も自ら物事を動かすという言葉ですから。とはいえ、類義語であっても同義語ではないため、もう少し差異を考えましょう。
主体性は「何をすべきかも含めて自分で考え、意思決定して実行すること」であり、自主性は「ある対象に対して、やるべきことを判断し、積極的に行動すること」です。
◇何を求められているのか?
主体性を求められるとは、「何をするべきかの“対象”を絞り込み、それを誰がするのか、そして実行に移すまでの一連のフローを1人でできるようになってほしい」とも言い換えられます。
自主性よりも主体性の方が、厳密な言葉の定義では範囲と粒度・関与率が高いといえます。問題を発見・定義して、行動を取ることを求められており、要は「その場にその人がいればある程度仕事が勝手に回る」状態を求められているのです。
ストレートに言えば、「指示が無くても、何をすべきか自分で考えて行動でき、必要なことは報告・確認をしてくれる人物になってね」と言われているわけです。
■主体性が必要とされる3つの理由
では、仕事をする上でどうして主体性は求められるのでしょうか? その理由は3つです。
◇(1)会社としてあなたを雇う意味を示してほしいから
主体性が必要無い仕事とは、「考える必要が無く、誰にでもできる定型業務」といえます。では、その仕事を人件費を掛けて自社でやり続ける意味はなんでしょうか? ありませんよね。
テクノロジーの進化によって「機械がやってくれる仕事」は増えました。定型業務は、特に置き換えが簡単です。会社としても「その人を雇う意味」にシビアになっていく中で、主体性とは個性を発揮し、社会での存在価値を高める自衛手段でもあります。
◇(2)利益を生む行動を取ってもらいたいから
「言われたことだけやる」よりも自分で決めて動く仕事の方が、裁量があり、得意なことで力を発揮することができるので、楽しいかつ自己成長につながる仕事ができます。ある意味「好き勝手」ができるのです。
そして、チャレンジは人を成長させます。主体的に動く人は成長機会を得て会社の利益に貢献してくれる人です。会社側はコストになる社員よりも、利益を生む社員を欲しがるのは当然です。
◇(3)チームの戦力になってもらいたいから
上司が全ての会議に同席したり、全ての言動をチェックしたりすることは不可能です。顧客とのやり取りや商談は、究極的には一人一人がその場で推進してくれないと困ります。
そして、その時々の状況や立場を考え、どのような行動を取るべきかを選択してくれる人を増やすことは、チームの力にそのまま直結します。
誰かの指示があるまで動くことができない人は、目の前にチャンスが巡ってきたとしても自己判断できず、チャンスを逃したり仕事相手を待たせてしまったりします。ですので、最短で最高の利益を得るためにも主体性を持った動きを期待されます。
■主体性がある人・無い人の違い
次に、どんな部分から主体性のある・無いは判断されているのか確認していきましょう。
◇(1)主体性がある人は「業務を点でなく面で捉えられる」
例えば、書類印刷の作業をお願いされた場合。
書類印刷という「点」の業務で終わるか、作業に付随する周辺業務である「封書」「配送手続き」といった他業務が必要なのでは? という仮説をたてて作業依頼者に確認し、実行できる人・できない人ではどちらがありがたいでしょうか。圧倒的後者ですよね。
なので、プラスアルファが考えられる人間だというだけで「主体性」は示せます。
◇(2)主体性がある人は「仕事の成果を最大化してくれる」
例えば、Aという商品の商談に行った時に、顧客がAには興味を示さずBについて相談してきた場合を考えましょう。
担当製品外だからと無視する人は主体性がありません。反対に主体性のある人は、自分の担当製品外のBの情報を追加で確認して顧客に提示し、関係構築を行います。
どんどん自分の仕事の範囲を広げられる人と、そうではない人では成長スピードに差が出ますし、案件獲得率や顧客リレーションにも差が出ます。人は「何でもどんどんやってくれる人」に、より仕事をお願いしたくなるのです。
◇(3)主体性がある人は「成長意欲がある」
主体性がある人は成長マインドを持っているので、(1)や(2)で見たように、自分の範囲外の仕事でもやろうとする気持ちと実行に移す行動力があります。
もちろん、仕事は依頼された業務をやっていれば一定の評価を得られますが、「言われたことをやる」のでは、あなたにお願いする必要が無い、つまり代替可能であるという点は否めません。
「人から頼まれたことしかやらない」、「自分からは動かない」という態度を続けていると成長の機会を失います。そして、「やれることを増やす行動」が取れないと、自分の経験値が上げられるかどうかは頼まれた仕事のみに左右されることになります。
その場合、頼まれる仕事が経験を積めるものでない限り成長ができないという、ある意味ばくちのような状態になるでしょう。
■主体性を持つためのコツ
主体性が必要とされる理由は分かってきたでしょうか? ただ、あった方が良いのは分かっても、主体性を持つにはどうすればいいのかが分かりませんよね。
最後に、主体性を持つコツを3つ紹介します。
◇(1)「やります」と言う
主体性のある人と無い人の一番大きな違いは、「私がやります」の一言が言えるか言えないかの違いです。
瞬発力とチャレンジ精神の違いです。手を挙げるための自信の有無や、能力の有無もありますが、一番大きいのは結局「やります」の一言が言えるかどうか。
「手を挙げて失敗したら……」「面倒だしいいや」と考えず、まずは「手を挙げる」ことをゴールにして実行するように務めましょう。
仕事は考えるよりやった方が早いことが多いです。「成功させる」ではなく、「やると言う」点をゴールにすることで、少しずつ主体的に行動することが身に付きます。
◇(2)他人は「自分にそれほど興味が無い」と理解する
主体性を持った行動とは、ある意味目立つ行為ともいえます。行動する過程で失敗を恐れたり、目立ちたくないと心配したりする人も多いですよね。
「自信を持て」「失敗を恐れるな」というご提案もできますが、人より心理的なブレーキが掛かりやすい人も確かにいます。
ですので、そんな人はマインドセットを変えましょう。「人間は対して他人に興味が無い」と認識し、過剰に他人を意識してしまう部分を書き換えるのです。
「自分が“やります”と手を挙げた時に、周りの人はどう思うのかな……」と不安になった時は、「みんな自分のことでいっぱいいっぱいだから、私のことなんて気にしていないか」と考えてみましょう。
◇(3)達成可能なゴール設定を作り、成功体験を積む
主体性も持つには自分に自信を持つことが必要で、その自信を得るには成功体験を積むしかありません。
そこで、小さなゴールをたくさん作り、それを達成して、自分に「できた」と思わせる機会を増やしましょう。
例えば、いつもより5分早く起きる、通勤時間に必ず勉強アプリを開くなど、「絶対に達成できるものを目標において続ける」を繰り返します。
ある程度習慣化したらハードルを上げるということを繰り返していくと、少しずつ自分への評価が「何でもやればできる人」変わりますし、思ってもいなかった大きな目標が達成できることもあります。
主体性という言葉にビビらず、自分ができる範囲を広げていく
主体性とは、究極的には「あの人なら大丈夫」「何とかしてくれるでしょう」と思ってもらうこと。その「大丈夫」とか「何とかしてくれる」の範囲を広げていくことが成長ともいえます。
受け身でいるのは一見ラクに見えて、リスクでもあります。なぜなら、自分の決定権を他人に預けてしまっているから。
このリスクに気付き、「いつまで経っても何もできない」という状態にならないよう、主体性を身に付けて、自由に仕事を進めていける人材を目指しましょう。
(ぱぴこ)
※画像はイメー