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私の恋愛志向を変えた、アコーディオニスト「coba」への偏愛を叫ぶ

#PM6時の偏愛図鑑

いくえちゃん

定時後、PM6:00。お仕事マインドを切り替えて、大好きなあの映画、あの舞台、あのドラマを観る時間が実は一番幸せかもしれない。さまざまな人が偏愛たっぷりに、働く女性に楽しんでほしいエンタメ作品を紹介する連載です。

私はもうずっと前から、「coba」が奏でるアコーディオンの音色が大好きだ。

それに合わせて鍵盤を叩く音、ジャバラが戻る音も含めて、全部好き。テレビや街で聴こえるアコーディオンの音色も、cobaのものなら大体分かる。「あっ、cobaだ」。

「cobaって誰?」という人も多いと思う。いつもセントジェームスのしましまボーダーシャツを着ている、アコーディオンを抱えた黄色い髪のおじさんだ。その見た目よりも、彼の音楽を聴くと、ぴんとくる人もいるのではないか。

私とcobaの出会い

私は小学生の頃の音楽会で、アコーディオン担当に指名されたことがある。なんで指名されたのかは分からないが、もしかしたらお稽古事でピアノをやっていたから、という単純な理由だったかもしれない。

張り切って練習に励んだが、右手で鍵盤を弾いて、左手でジャバラを左右に動かす、といった左右の手で全く違う動きをしなくてはいけないことが、どうしてもできなかった。ジャバラを動かせば、鍵盤が弾けず、鍵盤に気を取られていると、ジャバラが動かせない。ということで、すぐにその他大勢のリコーダーに回されてしまった。

ところが、ある日私がテレビをつけたら、アコーディオンを器用に、しかも芸術的に弾いている金髪おじさんが映っていた。あんな重い楽器を抱えているのに、踊っているようだし、楽しそうだ。

cobaへの愛は、もしかしたら私のアコーディオンへのトラウマから生まれたのかもしれない。

cobaコンサート戦記

そんなcobaのコンサートが、やっと今年の10月に開催されることになった。チケットを購入したのは去年の夏。当初の開催予定だった3月を楽しみにしてたのに、コロナ禍で延期。待ちに待って、今月、やっと会える。

私のcobaコンサートデビューは約10年前。初めてチケットを手に入れた時は、うれしくて、じっとしていられなくて。コンサート当日も落ち着かずに、部屋の掃除をしていた。

が、グキッと鈍い音が! 腰痛で、そのまま倒れ込んでしまい、次にその場を離れる時には、白い帆布で巾着のように包まれて、救急隊員6人に運ばれた。その後、3日間の入院生活を余儀なくされた。

この失敗を生かし、翌年のコンサートの日は出かける時間までとにかく動かずにいた。早めに家を出て、会場近くで開場時間を待っていたのだが。なんと時間を間違えてしまい、30分の遅刻。

演奏の合間に会場へ入り、通路で初めてcobaのアコーディオンを聴いた。あまりの感動で涙があふれた。なんてすてき!

それから東京で開催されるcobaのコンサートは皆勤賞。タイミングを見計らって「コーバー!」と叫ぶことも忘れない。 発売されたアルバムも全て私のiPhoneにダウンロード済み。cobaだけは、ストリーミングでは気が済まないから。

街でcobaと偶然会いたい

cobaに影響されて、代官山のセントジェームズに通ったこともある。階段を登って、お店に入ったら、ちょうどcobaがお財布からカードを出して、お支払いをして……。

……なんてスチュエーションを何度も繰り返し想像しているのだが、一度も見かけたことがない。ただただセントジェームスのシャツだけが増える結果だ。

とはいえ、実は一度だけcobaと話をする機会があった。

cobaの場合、コンサートの会場でCDかパンフレットを買えば、公演後に握手ができる握手券がついてくる。私もお姉様方に混じり、握手券を握り締めて、列に並んだ。お姉様方は、手を握ったままたくさんのお話をcobaとされるものだから、なかなか列は進まない。

そしてやっと私の番が。cobaを目の前にすると、一言も話せず、「シャツ、おそろいですね」というcobaの言葉にほほ笑むのがやっとだった。そう、私は肝心な時に気の利いたことが言えない、あがり症なのだ。

それから一度も列には並んでない。握手券はたまる一方。「こんな私なんか、遠くから見ているのが似合っているわ」と思いつつも、スタンプカードみたいに、握手券を10枚ためると写真を一緒に撮影してくれるとか、ハグできるとか、何か良いことはないものか。

ヴェネチアの風景にcobaはよく合う

cobaの源流を知りたくて、彼が19歳の時にアコーディオンを学んだというイタリアのヴェネチアにも思い切って行ってみた。さすがにcobaと会える気はしなかったが、街を歩いていると、cobaの曲を口ずさんでしまう。

まあ、一人旅だから、アコーディオンの他、ドラムもピアノもベースも、すべて一人で歌うのはとても大変なんだけれど。

ヴェネチアに向かう列車の中には『ヴィーナス誕生』、ベネチアの中心を流れる運河カナル・グランデには『SARA』、サンマルコ広場を抜けて海辺の「スキアヴォーニの河岸」には『ダフネの夢』、ガラスの島「ムラーノ島」に並ぶカラフルな家には『花市場』などなど、それぞれの場所から着想を得たcobaの曲がある。

その場所を通る度に、勝手にBGMが私の頭の中で流れるのだ。そして頭の中のBGMにうっとりする。すてきすぎる。

私の恋愛志向を変えたcoba

私は今まで、正直、恋愛において相手の見た目でいろいろなことを判断してきた。

イケメンには目がない。でも、cobaのおかげで単なる見た目ではなく、「働く男性のかっこよさ」というものを感じられる大人女子になることができた。

何かに長けている人はとにかくかっこいい。そして、アコーディオンを弾くcobaは世界で一番、かっこいい。

息を吸って、『リベルタンゴ』のような激しい曲調の演奏を始める、その姿にしびれる。ちょっとプヨプヨして見える手からは、魔法にかけられた音が波に乗って生まれてくるのだ。

今月のコンサートでは、コロナを考慮して 叫べないけど。心の中で叫ぶようにします!

「コーバー!」

(文:いくえちゃん/マイナビウーマン編集部、イラスト:谷口菜津子)

※この記事は2020年10月19日に公開されたものです

いくえちゃん

ラグビーとサッカーが大好き。自分はイタリア人だと思っている。並外れたコミュニケーション力と積極性が魅力であり、欠点。

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