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好きなものに囲まれて働く「好きキャリ」。KOMEHYO 小上馬舞さんの働き方

#働くわたしの選択肢

朝井麻由美

「バリキャリ」「ゆるキャリ」……女性の働き方って、本当にこの2つだけなの? 100人いれば100通りの働き方がある。一般企業で働く女性にインタビューし、会社の内側や彼女の働き方を通して、読者に新しい働き方「○○キャリ」の選択肢を贈る連載です。

取材:宮本紗恵/マイナビウーマン読者アンバサダー はたらくmuse
文:朝井麻由美
撮影:洞澤佐智子
編集:高橋千里/マイナビウーマン編集部

使わなくなったものを売り、売ったお金で今欲しいものを買う……。某フリマアプリの台頭により、ここ数年でそういった買い物の仕方が世の中にかなり浸透しました。

ですが、そういったサスティナブルなお買い物が古くから行われている世界があります。それはリユースショップ(買取・販売店)。使わなくなったブランド品を売り、そのお金で今欲しいものがお得に買えるわけです。

今回は、日本最大級のリユースデパート「KOMEHYO」の銀座店で、ブランドバッグの鑑定士として働く小上馬舞さんにインタビュー!

聞き手はマイナビウーマン読者アンバサダー「はたらくmuse」の宮本紗恵さん(@saetime_38)です。宮本さんはホテル業界で働いていることもあり、同じ接客業として小上馬さんの仕事ぶりに興味津々。また、同世代ということも手伝って、インタビュー前から意気投合して盛り上がりました。

ブランドバッグ鑑定士・小上馬さんが語る、知られざるリユースの世界とは? 接客のコツに、オンオフの切り替えは? 毎日楽しく働くエッセンスを探ります。

偽物か本物かは“におい”で分かることも

「鑑定士」って何だか、かっこいいです。周りに鑑定士の仕事をしている友人もいないので、珍しいイメージもあって。

そうですよね。私も就職活動を始めた時は、鑑定士という職種になじみはなくて。最初は百貨店やブランド業界を中心に見ていましたね。

鑑定士に行き着いたきっかけは何かあったんですか?

人とコミュニケーションを取るのが好きだったので、人と関わるサービス業に就きたいとは思っていたんです。その元々のきっかけをたどると、高校2年生の時にオーストラリアへホームステイに行った経験が私の中で大きくて。

鑑定士、オーストラリア、ホームステイ……。何もかもがかっこよすぎてまぶしい……!

あはは、ありがとうございます(笑)。そのホームステイで、言葉が全然通じないながらも、意外とジェスチャーで気持ちが通じるのが面白いと思って。それがきっかけで、大学進学後は“対人コミュニケーション”について学んだんです。

対人コミュニケーション、奥が深そう!

それで、人と関わる職業についていろいろ調べていくうちに、鑑定士という仕事もあるんだ、と知っていきました。販売だけでなく、買い取り業務もできるのが面白いと思ったのが最終的な決め手でしたね。

入社してすぐは販売業務をしていましたが、今はブランドバッグの買い取りをメインにやらせていただいています。

バッグを鑑定して買い取る、ってことですよね。

そうです、そうです。お客様にお持ちいただいたバッグを鑑定して、買い取らせていただいています。

……あの、どうやって鑑定しているのかって聞いちゃっても大丈夫ですか?(ドキドキ)

はい、大丈夫ですよ! まず、買い取り業務を始める際には3~6カ月程度みっちり勉強するんです。その時に先輩方から見るべきポイントを教わったり、実際に本物と偽物を見比べてみたりして覚えていきます。

どのバッグも細かい部分までルーペで見ますが、偽物の場合、そもそものお作り自体が全然違うものもありますね。あとは、においとか。

におい! 違いがあるんですか!?

そうなんです。特有のにおいがするんですよ。本物のにおいと、偽物のにおいを比べてみると結構分かります。

へえ~! 面白~い!

バッグが偽物だったら……。お客様への伝え方

ええっと、鑑定したら偽物だった、ってことも中にはあるんですよね。それって、正直言いづらくはないですか? そういう時、どういう表現をされるのでしょう?

当社では本物か偽物かというのはお客様にお伝えしていなくて、あくまでも「KOMEHYOの基準に照らし合わせて買取できるかどうか」をご説明しています。

なので、確かにこれをお伝えするのは難しいんですよね。お客様自身がお気付きではなかったり、ご家族の大事なお品物だったりするので、失礼にならないような言い回しにしなければならないですし……。

うん、うん、そうですよね。

どう表現するかは、お客様の年代や性格で全然違ってきますね。20代くらいの若い方からご年配の方まで、いらっしゃる方々の層が幅広いので、臨機応変に対応していくため、日々勉強です。

分かるなぁ。私もホテルの仕事で幅広い年代のお客さんと接するので、めちゃくちゃ共感します。言い回しを勉強するにあたって、何か参考にしているものはありますか?

いろいろな人の査定を聞くのは勉強になりますね。こういう言い回しがあるんだ、とか、こういう説明は聞いててすごく納得できるな、とか。先輩だけでなく、逆に後輩の接客から学ぶこともあって。良いと思ったフレーズはどんどん取り入れるようにしています。

なるほど! 確かに人の査定を聞いていると、自分では思いつかなかったような言い回しを学べそうです。

家宝の「エルメスのバーキン」を売っていただけた

今までで印象に残っている査定ってありましたか?

ちょうど今年の出来事なのですが、あるお客様から、家宝を預けていただいたのが印象に残っています。

家宝!

昔からご利用いただいているお客様で、エルメスのバーキンを家宝としてずっと大切に持っていらしたんですね。以前から、「いつか売る時は小上馬さんにお願いする」と言っていただけていて、それで今年ついに売る、ということで。

わー! うれしいと同時に、緊張しますね! 家宝ですし、本当に良いんですか、ともなりますし。

いつのタイミングで売るかについても、信頼して、ずっと相談してくださっていたんです。

それだけの信頼関係は、どのようにして築かれていったのでしょう?

月並みですが、出会ってから少しずつ、コミュニケーションを取っていってお互いのことを知っていって……ですね。バッグのことだけでなく、プライベートのこともたくさんお話させていただきました。

へえ~! なんか、話したくなる気持ち、分かるなぁ。小上馬さん、すごく話しやすい雰囲気だなって話していて思います。

ありがとうございます。あと、お客様から伺った話は昔から全てノート(※現在は電子化)につけていて、好きな色、好きな素材、好きなタイプのバッグなど、こまめにメモするようにしています。

好きなものに囲まれて、好きな人たちと働く

ちなみに、働いていて不満に思うことって何かありますか?

それが……ないんですよね。何も不満がないって言うと、変だと思われるかもしれないんですけど、本当になくて。職場も風通しが良く、良い人ばかりで、毎日好きなものに囲まれて仕事ができているので、嫌だと感じることは全然ないです。

まぶしい……! キラキラしていて惚れ惚れしちゃいます。

でも、しょんぼりすることは時々あります(笑)。お客様のバッグを鑑定した時、中には期待よりも大幅に安い金額をご提示しなければならないこともあって、そうなるとやっぱりがっかりされてしまうんですよね。後から振り返ると、もう少し良い言い方があったんじゃないか……と落ち込むことも。

しょんぼりした時は、どうやって立ち直るんですか?

考えすぎてマイナスにならずに、次は改善しよう、と切り替えを意識することですね。働き始めたばかりの頃はかなり落ち込んで引きずっていたのですが、最近では自分自身との付き合い方も分かってきました。それに何より、好きな仕事だから頑張れます。

オンとオフの切り替えはうまくできていますか?

そうですね。それは結構ちゃんとできていると思います。スーツを着ると仕事モードになれるんですよね。

ああ~、わかります。スーツとか制服とか、切り替えのスイッチ代わりになって、意外とありがたいですよね。プライベートでやっている趣味は何かあるんですか?

今はピアノですね。最近、家にいる時間が増えたので、昔やっていたピアノにまた熱中しています。

ピアノ! 似合う! 私、ブランドバッグの鑑定が未知の世界すぎて、今日すごくドキドキしながら来たんです。でも、小上馬さんが気さくで、今度実際に買いに来ようかなって思えました。

うれしい! 買わなくても、相談だけでも全然大丈夫ですよ!

小上馬さん、キラキラしていて何もかもが完璧なんですが、それでいて話しやすい雰囲気があるんですよね。同じ接客業の人間として、勉強になりました!

※この記事は2020年08月06日に公開されたものです

朝井麻由美

ライター・編集者。著書に『「ぼっち」の歩き方』、『ひとりっ子の頭ん中』。
Twitter:@moyomoyomoyo

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