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「致します」「いたします」違いはある? 漢字・ひらがなの使い分けや例文を紹介

前田めぐる(ライティングコーチ・文章術講師)

「致します」「致す」を使った例文

ここまで読んで、「ビジネスでは“致します”と漢字で書く場面は一切ないの?」という疑問が湧いてくるのではありませんか?

そこで、冒頭で述べた意味について振り返ってみましょう。

(1)「する」の謙譲(丁寧)語
(2)先方まで届くようにする

この場合は、漢字で「致す」と表します。「致す」が本動詞として意味的に独立しているからです。

そこで、ここからは本動詞としての「致します」「致す」を使った例文を紹介します。

(1)「する」の意味で使う場合

「する」の意味で使う「致します」「致す」の例文としては、以下のようなものが挙げられます。

・私が致します。

・良い香りが致します。

・おっしゃるようには致しかねます。

・私と致しましては、何とも申し上げにくいことです。

・帰ることに致します。

・ぶしつけに、大変失礼なことを致しました。

(2)「先方まで届くようにする」の意味で使う場合

この場合の意味はかっこ書きしているように非常に広範です。

・先様には書を致して(=送って)お礼を申し上げました。

・思いを致して(=そこまで深く考えて)おりませんでした。

・私の不徳の致す(=自分の不徳の結果として引き起こした)ところと反省しております。

・誠心誠意、力を致して(=努力をして)成功させたい所存です。

・どう考えても、致し方ない(=方法がない)ことです。

「言葉の根拠を知って書くこと」の積み重ねで自信を育てる

仮名遣いを統一するのは、文章を書く時の基本的なルールです。

しかし今回のように、ビジネス文書として仮名書きが一般的でありながら場合によっては漢字が正しい、という言葉も存在します。

・課長には、「K社の一件は致し方ないこと」とご連絡いたしました。

このように、一つの文中に両方が混在することも起こるわけです。

なぜ仮名なのか、漢字なのか? 根拠を知って書くことが大切です。

知識の裏付けがあると、発する言葉、書く言葉に自信が持てます。それは、やがて仕事上の自信にもつながります。

気になったら調べてみる。そんなちょっとした習慣を始めてみてはいかがでしょう。

(前田めぐる)

※画像はイメージです

※(2022年11月14日)上記の文章は、筆者監修による元記事に編集部で加筆を行いました。

※この記事は2020年07月29日に公開されたものです

前田めぐる(ライティングコーチ・文章術講師) (ライティングコーチ・文章術講師)

コピーライターとして長年「ことば」に関わってきた経験値を元にまとめた「ほどよい敬語」(https://ameblo.jp/comkeigo/)が好評。過剰さや不適切さを排し、明快に説く内容は「違和感の理由がわかりスッキリした」と質問サイトなどでたびたび引用される。

自治体・団体・医療機関向けSNS活用、文章術研修の講師でもある。

著書に『この一冊で面白いほど人が集まるSNS文章術』(青春出版社)『前田さん、主婦の私もフリーランスになれますか?』(日本経済新聞出版社)『ソーシャルメディアで伝わる文章術』(秀和システム)など。公益社団法人日本広報協会アドバイザー。

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