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ビジネスにおける「いたします」と「致します」の違いとは?

前田めぐる(ライティングコーチ・文章術講師)

「いたします」を使った例文

さて、ビジネスシーンでは漢字の「お願い致します」より「お願いいたします」がよりふさわしいと分かったところで、他にはどのような動詞や漢語名詞を使った表現があるのか、見ていきましょう。

(メールや手紙で)
・以上、何卒ご配慮いただきますようよろしくお願いいたします。

(メールやメッセージのやり取りで)
・明日にでも書類をご用意してお待ちいたします。

(いつでも立ち寄ってほしいとのメールへの返信で)
・承知しました。ではお伺いする前にご連絡いたします

(相手の配慮に謝意を表すメールで)
・このたびはお手数をおかけいたしまして、恐縮です。誠にありがとうございます。

この4つの「いたします」はいずれも補助動詞としての働きです。

なお、4つ目は最後に「が」をつけて、しばしば「お手数をおかけいたしますが」のようにクッション言葉として使われます。

この際、後に続く言葉によっては「いたします」が重複することがあります。間違いではありませんが、無理に使う必要はありません。

次のように、「いたします」ではなく「ございます」にしても良いし、シンプルに「お手数ですが」でも良いでしょう。

・お手数をおかけいたしますが、よろしくお願いいたします

→ お手数ではございますが、よろしくお願いいたします
→ お手数ですが、よろしくお願いいたします

このようにすっきりした文章になりますね。

クッション言葉としての用法では、初めから「お手数でございますが」「お手数ですが」を使うと決めておくといいでしょう。

そうすることで、「いたします」の重複を避けることができるだけでなく、文章で悩む時間も短縮できます。

「致します」「致す」を使った例文

ここまで読んで、「ビジネスでは“致します”と漢字で書く場面は一切ないの?」という疑問が湧いてくるのではありませんか?

そこで、冒頭で述べた意味について振り返ってみましょう。

(1)「する」の謙譲(丁寧)語。
(2)先方まで届くようにする。

この場合は、漢字で「致す」と表します。

「致す」が本動詞として意味的に独立しているからです。

(1)「する」の意味で使う場合

・私が致します

・良い香りが致します

・おっしゃるようには致しかねます。

・私と致しましては、何とも申し上げにくいことです。

・帰ることに致します

・ぶしつけに、大変失礼なことを致しました

(2)「先方まで届くようにする」の意味で使う場合

この場合の意味は( )内のように非常に広範です。

・先様には書を致して(=送って)お礼を申し上げました。

・思いを致して(=そこまで深く考えて)おりませんでした。

・私の不徳の致す(=自分の不徳の結果として引き起こした)ところと反省しております。

・誠心誠意、力を致して(=努力をして)成功させたい所存です。

・どう考えても、致し方ない(=方法がない)ことです。

「根拠を知って書くこと」の積み重ねで自信を育てる

仮名遣いを統一するのは、文章を書く時の基本的なルールです。

しかし今回のように、ビジネス文書として仮名書きが一般的でありながら場合によっては漢字が正しい、という言葉も存在します。

・課長には、「K社の一件は致し方ないこと」とご連絡いたしました。

このように、一つの文中に両方が混在することも起こるわけです。

なぜ仮名なのか、漢字なのか? 根拠を知って書くことが大切です。

知識の裏付けがあると、発する言葉、書く言葉に自信が持てます。それは、やがて仕事上の自信にもつながります。

気になったら調べてみる。そんなちょっとした習慣を始めてみてはいかがでしょう。

(前田めぐる)

※画像はイメージです

※この記事は2020年07月29日に公開されたものです

前田めぐる(ライティングコーチ・文章術講師)

コピーライターとして長年「ことば」に関わってきた経験値を元にまとめた「ほどよい敬語」(https://ameblo.jp/comkeigo/)が好評。過剰さや不適切さを排し、明快に説く内容は「違和感の理由がわかりスッキリした」と質問サイトなどでたびたび引用される。

自治体・団体・医療機関向けSNS活用、文章術研修の講師でもある。

著書に『この一冊で面白いほど人が集まるSNS文章術』(青春出版社)『前田さん、主婦の私もフリーランスになれますか?』(日本経済新聞出版社)『ソーシャルメディアで伝わる文章術』(秀和システム)など。公益社団法人日本広報協会アドバイザー。

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