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「根に持つ人」の執念はどこからくるの? 心理と対処法

平松隆円(化粧心理学者)

対人関係において、人を怒らせたり傷つけてしまうことは、よくあります。謝罪や埋め合わせ、トラブルの原因を解決して手打ち、で一件落着すればいいのですが、相手がそれを根に持って、後々までこじれてしまうことも、めずらしいことではありません。この「根に持つ」とは、どういう心理なのでしょうか。心理学者の平松隆円さんに教えていただきます。

こちらはすっかり忘れている何年も前のケンカをずっと覚えていたり、ちょっとしたボタンのかけちがいをいつまでも覚えている。そんな人を「根に持つ」タイプなんていったりしますが、決してめずらしい性質ではないでしょう。

どうして人は、過去のことをいつまでも根に持ってしまうのでしょうか。

「根に持つ」ってどういうこと?

根に持つタイプ

まずは「根に持つ」という意味を確認しておきましょう。

『大辞林』(三省堂)には、“根に持つ”の意味として、「いつまでも恨みに思って忘れないでいる」とあります。つまり“いつまでも忘れない”というだけではなく、そこに“恨みの心”があるんですね。

これを、“根に持つ”と表現するのはなぜでしょうか。「根気(こんき)」や「根本(こんぽん)」という言葉があるように、「根」には“粘り強く続けていく”や“事の起こり”という意味があります。おそらくこのあたりから、「いつまでも恨みに思って忘れないでいる」という意味になったのかもしれません。

蛇足ですが、“根に持つ”という言葉はけっこう古くからあり、1651年に書かれた俳諧『崑山集(こんざんしゅう)』に、すでに見ることができます。

「根に持つ人」の特徴

それでは具体的に、「根に持つ人」というのはどんな人なのでしょうか。

記憶力がいい

根に持つタイプ

根に持つ人というのは、いつまでたってもそのできごとを忘れません。そういう意味では、記憶力がいいといえるでしょう。

感情のコントロールが苦手

根に持つタイプ

たいていは、嫌なことがあったら気分転換をして、なるべく気にしないようにしたり、なんとか忘れようと心がけたりするものです。ですが根に持つ人というのは、自分の感情をコントロールするのが得意ではないため、その嫌な気持ちをいつまでも引きずってしまいます

執着心が強い

根に持つタイプ

よくいえば記憶力がいいのですが、裏を返せば“執着心が強い”ともいえます。一度、恨みを持ってしまうと、そのことに執着してしまい、復讐するまで気が済みません。

傷つきやすい

根に持つタイプ

“傷つきやすい”というより、もしかしたら被害妄想を抱きやすいといえるかもしれません。根に持つ人というのは、誰に対しても何に対しても、恨みを抱きやすいものですよね。

その執念はどこからくるのか

執念深くいつまでも根に持つ人がいる一方で、ひと晩寝たらすっきり忘れてしまうように、まるで“根に持たない”なんて人もいます。両者のちがいはいったい何なのでしょうか。

考え方がマイナス思考

根に持つタイプ

考え方がマイナス思考な人は、根に持つタイプかもしれません。

例えば何かで損をしたとして、たいていの人は、ある程度のところであきらめたり、気持ちを切り替えて、別の“いいできごと”に気持ちを向けようとします。

ですが、根に持つ人というのは、物事を悪い方向にしかとらえることができず、すぐに不平や不満を言う傾向にあるでしょう。

実際、執念深い

根に持つタイプ

執念深い性格というのは、けっこう面倒なものです。何かトラブルがあった場合、その直後は「この人のことは絶対に許さない!」と心に誓っていたとしても、時間が経つほど、だんだんとその怒りはおさまってきませんか? それは結局、あなたが執念深くはないからです。

問題解決が苦手

根に持つタイプ

 

人間関係でトラブルが起きれば、両者でしっかり話し合って解決するしかありません。ですが、問題解決が苦手な人は、どのようにトラブルを解決していいのかをわかっていません。“傷ついた”という自分の気持ちを整理することができず、結果的に心の中で恨みに思うことで、解決をはかろうとします。

コミュニケーションが苦手

根に持つタイプ

 

問題解決以前に、そもそもコミュニケーションが苦手、ということもあるかもしれません。それはちょうど、子どもが最適なコミュニケーション手段をまだ知らないばかりに、好きな相手をいじめてしまうようなものです。

被害者意識

根に持つタイプ

根に持つというのは、「あいつのことは絶対許せない!」と恨みを持つこと。つまり、自分は被害者の側なんですね。相手を恨んでいる限りは、“自分はこんなにもかわいそうな人間なのだ”という立場でいられます

被害者でいる限り、周囲もやさしく見守ってくれるでしょうし、相手よりも優位な立場に自分をおくことができます。人間関係を上手に築けないことも、これに影響しているかもしれません。

根に持つ人への対処法

このように執念深く“根に持つタイプ”の人とは、どのようにつきあうのがよいでしょうか。また、自分が根に持つタイプだという場合、その性格はどのようにすれば軽減できるのでしょうか。

コミュニケーションは最低限に

根に持つタイプ

一番シンプルな方法は、必要以上のコミュニケーションを取らないということです。

根に持つタイプは、自分の気に入らないことがあれば、すぐに恨みます。つまりどうしたって、そういうタイプからは、ほんのちょっとしたことで恨みを買ってしまう。であれば最初から、必要最低限のコミュニケーションにとどめておくのがよさそうです。

相手のプライドを傷つけない

根に持つタイプ

根に持つタイプというのは、ささいなことで傷つきやすかったりもします。もちろんそれは、相手の意に反しているから。そんな人には、相手のプライドを傷つけない言動が必要になってきます。

また、自分が根に持つタイプであれば特に、“他人を気にすること”をやめましょう。他人を気にしすぎると、自分の気に入らないことがイヤでも目について、結果として、根に持つということにつながることがあります。

恨みをいつまでも忘れない“根に持つ人”を、“恋人にフラれた人”に置きかえて考えてみてください。自分をフッた相手を忘れない限り、いつまでも心の中に未練が残りますよね。根に持つ人の心境も同じです。根に持つ原因となったできごとを忘れない限り、いつまでも次に進むことはできないんです。

(平松隆円)

※画像はイメージです

※この記事は2019年09月28日に公開されたものです

平松隆円(化粧心理学者) (化粧心理学者)

1980年滋賀県生まれ。2008年世界でも類をみない化粧研究で博士(教育学)の学位を取得。京都大学研究員、国際日本文化研究センター講師、タイ国立チュラロンコーン大学講師などを歴任。専門は、化粧心理学や化粧文化論など。魅力や男女の恋ゴコロに関する心理にも詳しい。日本やタイを拠点に、大学の講義のみならず、テレビ、雑誌、講演会などの仕事を行う。主著は『化粧にみる日本文化』『黒髪と美女の日本史』『邪推するよそおい』など。

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