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前田敦子を女優に変えた「映画への偏愛」

マイナビウーマン編集部

アイドルの「あっちゃん」は私たちの青春であり希望だった。

当時大学生だった私は、テレビの歌番組ではどのメンバーよりもあっちゃんを目で追っていたし、カラオケであっちゃんの真似をしながら女友だちと振り付きで歌ったこともあった。そんな青春時代を過ごしていたから、あっちゃんがアイドルを卒業したときは本当に本当に悲しかったのを覚えている。

2012年以降、あっちゃんは「女優・前田敦子」として、活躍の場を“映画”に変えた。

映画DVDを1,000本以上所有するほどの映画好きらしく、それがきっかけで女優を志したとも聞く。アイドルから映画の世界に飛び込んで、幅広い役柄に果敢に挑戦しながら、結婚してママになったあっちゃん。

ひとつの偏愛が、人生を大きく変えることもある。それを証明してくれたあっちゃんに、映画への愛を語ってもらった。

妊娠してから、映画の好みが変わった

――映画好きで有名な前田さんですが、どんな映画がお好きなんですか?

フランス映画とか昔の邦画とか、ひとりで観られる系の映画が好きでした。特にフランス映画ってちょっとダークな部分がある作品が多いですよね? そういう作品をひとりでじーっと観るのが好きだったんですけど、妊娠してからは映画の好みが変わってきましたね。

――妊娠後はどういう作品を?

最近観たのは『メリー・ポピンズ』。ディズニー映画とか、子どもも楽しめるかわいい映画をよく観るようになりました。

――今後お子さんが大きくなったら、一緒に映画を観られるかもしれないですね!

そうなんですよ! 子連れOKの映画館も増えているので、早く一緒に映画館に行きたいなあ。

――学生時代に「アイドルのあっちゃん」を応援していた私にとって、ママになったエピソードを聞くのがとても感慨深いです……! ちなみに「アイドルのあっちゃん」が「女優・前田敦子」に転換した時期に、影響された映画はありますか?

若尾文子さんの女優デビュー作『青空娘』という昭和時代の映画ですね。TSUTAYAでたまたま見つけた若尾文子さん傑作選DVDに入っていた作品なんですけど、10代のころの若尾さんが出ている、すごく爽やかな映画なんです。見た瞬間「すっごくタイプの女性!」と虜になりました。

――具体的に、若尾さんのどんなところに惹かれたんですか?

見た目もドンピシャですし、あとはお芝居の仕方も凜としてかっこよくて。だけど、お芝居していないときの若尾さんも、喋り方とかたたずまいとか、お芝居中とまったく変わらないんですよ。そのままの雰囲気で、悪女役からかわいい娘役まで幅広い役柄を演じられるのがすごいなあって……。

――前田さんにとって若尾さんが目標の女優像なんですね。

そうですね。でも、そもそも生き方がちがうから、私とはまったく系統がちがうなあと思っています。だからこそ憧れているのかもしれないですね。

たくさん悩んだ経験が、女性を強くする

――映画好きの前田さんが、恋愛や生き方で悩む20~30代の働く女性たちにおすすめしたい映画はありますか?

『(500)日のサマー』ですね。私が一番好きな恋愛映画です!

――有名なアメリカ映画ですよね! でも私まだ観たことがなくて……どんな内容ですか?

男性目線で「男性が女性に振り回される映画」というふうに描かれているんですけど、実はそれよりも女性のかわいさが詰まっている映画だなあと私は思ってます。観た男の人からは「女性って怖い」と言われることが多いですけどね(笑)。

――好きなシーンはありますか?

主人公の男の子が追いかけていた女の子が、すごくいい子に見えていたのに、一気にその幻想がひっくり返ったりするシーンですね。とにかく女の子に惑わされているんですよ。でも、それは男の子側の被害妄想だったりするんですよね(笑)。

――おもしろそう! 男女の恋愛観のちがいを感じられそうですね。

最後はびっくりするような結末なので、ぜひ観てほしいです!

――前田さんが主演を務める『旅のおわり世界のはじまり』(2019年6月14日公開)も、主人公の葉子(ようこ)がリポーターの仕事に専念しなきゃいけないのに、恋人のことで悩んでしまうなど、働く女性たちが共感できるシーンも多いですよね。

葉子は仕事では強いけど、実はすごく脆い女の子。ウズベキスタンでのロケ期間中、恋人への不安が出てきた途端ボロボロになって、仕事が手につかなくなったりしちゃうんです。

――でもその感じ、すごく共感できます。実は私もこの前、恋人と別れて、泣きながら仕事していたので(笑)。

うんうん、そういうときもありますよね。仕事してるときの女性はかっこいいけど、何も考えずに仕事だけしてる女性ってきっといないじゃないですか。みんな何かに悩んでるし、葛藤してる。

――特に今は女性の生き方の選択肢が広がった分、悩みも増えている気がします。

そうですね。でも、悩んだ経験があるから、女性は強くなっていくんじゃないかなって思うんです。そういう成長過程が映し出されているのが、今回の作品。

働いている女性は強く見えても、実はそれだけじゃない。いろんなことと戦っているんだって共感しながら観てほしいです。男の人にも「ああ、女性っていろいろがんばっているんだな」と思ってもらえたらいいな。

INFORMATION

映画『旅のおわり 世界のはじまり』

テレビリポーターを務めながらも“舞台で歌う”という夢を諦めきれない葉子は、巨大な湖に棲む“幻の怪魚”を探す番組ロケのため、クルーとともに、かつてシルクロードの中心地として栄えたウズベキスタンを訪れた。

ある日の撮影が終わり、ひとり街に出た彼女は、聞こえてきた歌声に誘われて美しい劇場に迷い込む。彼女が旅の果てで出会ったものとは?

黒沢清監督がウズベキスタンに1カ月まるまる滞在し、広い国土を使って撮影された本作。リポーター・葉子役の前田敦子を中心に、番組クルー役に加瀬亮、染谷将太、柄本時生を迎え、絶妙のチームワークを見せる。

2019年6月14日(金)、テアトル新宿ほか全国公開

(取材・文:高橋千里/マイナビウーマン編集部、撮影:洞澤佐智子)

※この記事は2019年06月13日に公開されたものです

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