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成田凌が語る「悪い男」。映画『愛がなんだ』インタビュー

マイナビウーマン編集部

直球のラブストーリーも、心温まる人間ドラマも、ちょっと怖い任侠映画だって。どんな作品にも、どこかに「愛」が散りばめられている。そんな映画の中の恋や愛にフォーカスするインタビュー連載「恋するシネマ」。今回は、映画『愛がなんだ』で彼が演じた究極のダメ男・マモちゃんを演じた成田凌さんに話を聞きました。

わかる、すっごいわかる。

これは、映画『愛がなんだ』を観た私の感想だ。2019年4月19日(金)に公開される本作は、直木賞作家である角田光代の同名小説が原作。平凡なひとりのOLが自由なダメ男に「究極の片思い」をするストーリーは、ちょっとの爽快感と莫大な共感を与えてくれるから清々しい。

主人公テルコ(岸井ゆきの)が抱く“時間のすべてがその人のためにある”という狂った恋の感覚は私自身も経験したことがあるし、彼女が惹かれるマモちゃん(成田凌)のいい加減さや調子のよさなんて、すべての男性に潜む一面だとも思う。

今回話を聞いたのは、どこまでも自分本位でつれないマモちゃんを嫌味なく演じきった俳優、成田凌さん。彼はマモちゃんにどんな感情移入をしていたのだろう。

マモちゃんの存在は「自分の余白の部分」

――成田さんが今回演じたマモちゃんの役は、とにかく女子からしたら悪い男なんですけど、どこか憎めない。そんな究極のダメ男役の話をもらったとき、どんなお気持ちでしたか?

「俺の印象って(側から見たら)マモちゃんなのかぁ」って。でも、やっぱり「あ、俺だよな」って感覚ですね。

――それはマモちゃんと成田さんで合致する部分があったからでしょうか。

僕的には、マモちゃんの性格や恋愛観にあまり違和感がなかったんです。

そこにギャップがないからこそ、「俺が演じておもしろくなるかな」っていう不安もありました。マモちゃんみたいな経験をしているわけじゃないけど、なんとなく彼の要素は僕のなかにある部分でもあるし。

映画を観た人は彼の感覚を普通じゃないって思うだろうけど、僕は「マモちゃん普通じゃん」と思ってしまいました。

――現実でも彼のようなスタンスで恋愛をする男性はたくさんいる気がします。映画をはじめて観たとき、「こういう男性いるなぁ」って思わず共感しちゃいました。

僕の中のリミッターや頭のネジをとっぱらって理性を忘れたら、マモちゃんみたいになるんじゃないかなと思いますね。この映画に出てくる登場人物はどこかおかしいけど、みんなそう。人間の中にある「余白」の部分というか。

そんな言動はとったことないけれど、そういう考え方なら少なからず潜んでる、って感覚ですね。登場人物全員をぎゅって寄せ集めたら、「僕になるんじゃないか」と思うくらい。

役の魅力は「ちょっと憎みきれない誤差」

――成田さんから見た、マモちゃんの好きなところと嫌いなところはどこですか? こういう部分は男性として好きだなって思うけれど、あの部分は逆に許せないとか。

好きなところは、「ちょっと憎みきれない誤差」の部分。

彼の発言内容って、あのままストレートに言っちゃえば本当にただの悪い男になっちゃうと思うんです。でも、ちょっとした誤差で愛嬌にすりかえる。

劇中で、マモちゃんは自分に尽くしてくれる主人公のテルちゃんに、ひどいことをたくさんしますよね。でも、そこには同情の気持ちが強くある。マモちゃんの言動には、きちんと血が通ってるんです。

だから、ひどい言動なんだけど、そう思われないギリギリのラインを意識して演じました。

ほかに好きなのは、朝起きて突然「動物園行こうか」ってテルちゃんを誘うシーンのマモちゃん。

彼、はっきりしてません? そこがいい。

だって、嫌いな人のことをこんなふうに軽く誘ったりはしないじゃないですか。マモちゃんは弱い人間のはずなのに、潔いところがあってちょっと憧れる。ちなみに、嫌いなところはそれ以外。全部。

――ははは、それ以外全部ですか(笑)。テルちゃんは、そんなマモちゃんに盲目的に惹かれていますよね。彼のどこにそこまでの魅力を感じていたんだと思いますか?

それは難しいですよね。映画のなかでテルちゃんも「なんで好きになるんだかわからない」ってきっぱり言ってるじゃないですか。

僕自身、実際にマモちゃんのような状況になったとき「この人はなんで僕なんかと一緒にいてくれるんだろ」「なんで好きになってくれたんだろう」って思っちゃうタイプ。

他人にはわからない「何か」にドンピシャにハマるんでしょうね、きっと。好きってそういうものなのかもしれない。

――まあ、理由がないほうが「正しい好き」な感じもするっちゃする。

言葉にしなきゃ失礼ってときもあるから、無理やり気持ちを言葉にしちゃう瞬間もあるけど。細かく考えれば、そこには言い表せない感情がきっとあるんだなと思います。

「主観的な好き」じゃ愛されない

――それにも関わらずマモちゃんは、あいまいな態度を取り続けますよね。そこに好意があるのかどうかわからないような。付き合ってはくれないし、真面目に向き合ってもくれないじゃないですか。マモちゃんのような男性って、いったい何を考えているんでしょうか?

ひと言でいうと、「ラク」。

――ラク?

はい、人と無責任に関わったほうが多分ラクなんです。

テルコは深夜に電話したら来てくれるし、好きって気持ちを見せてくれるでしょ? だから、それに対して甘えちゃうんです。いつでも待ってくれている存在がいるって事実に。

一方で、マモちゃんはすみれという破天荒な女性に惹かれていきますよね。目で見て楽しくって、明るくて、自分のほうにこれっぽっちも振り向いてくれない女性。

「次、何喋ろう」って緊張するような相手です。でも、結局彼はそういうヒリヒリする女性を好きになっちゃうんですよね。そういう欲、誰にでもあると思います。

――やっぱり女性からすると悪い男です、マモちゃんは。

でもまあ、最終的にはっきり結論を出しているので、マモちゃんは。そこは映画の中でちょっと成長したのかな、と思いますよ。

テルちゃんに対しても愛情はあったはずです。あるからこそ、最後にあの決断をするのであって、まったく愛がなかったら答えは出さないと思います。

――じゃあ、テルちゃんはどうしたらよかったんでしょうか。彼女の愛は、何を間違えていたんでしょう?

それは、「結果的に自分のことしか考えてないからじゃん?」ってすごく思います。彼女の好きって主観的なんです。実はマモちゃんに向いているものじゃなくて、「私はこれでいい!」っていう自分に向き合ったものでしかない。

そういう女性に惹かれる男性ってひとりもいないから。それはぜひ映画を観て学んでほしいですね。

『愛がなんだ』あらすじ

(C)2019『愛がなんだ』製作委員会、配給:エレファントハウス

いつもと同じ景色がまるでちがって見える。時間のすべてがその人のためにある。1分でも1秒でも、その人のそばにはりついていたい。彼の心に、別の誰かがいても……。

平凡なOLテルコは、猫背でひょろひょろのマモちゃんに究極の片思い中。会社の電話は取らないのに、マモちゃんからの連絡は秒で取る。呼び出されれば、残業せずにさっさと退社する生活を送っていた。そのせいで会社はクビ、さらにはマモちゃんの近くにすみれというひとりの女性が現れ……。

どこまでも“自分系”のテルコが辿り着く、凶暴で愛おしい片思いの行方とは?

2019年4月19日(金)、テアトル新宿ほか全国公開

(取材・文:井田愛莉寿/マイナビウーマン編集部、撮影:須田卓馬)

※この記事は2019年03月14日に公開されたものです

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