仕事へのモチベーションが低くなっていたり、「最近気分が上がらないな」と感じたりすることはないでしょうか。気分が上がらない原因を、自分なりに考えてみてもかえって鬱々としてしまうもの。また、原因がわかっても、どのように気分を変えたらいいのか悩んでしまいますよね。そこで今回は、心理カウンセラーの大塚統子さんに、気分が上がらない原因と、そんな時の対処法について教えてもらいます。
■気分が上がらない原因とは
気分が沈んでしまうのはただの気まぐれではなく、明確な理由があります。その原因となる状況や、気分が上がらなくなってしまう考え方をご紹介します。原因を知れば、それだけでもスッキリするのではないでしょうか。
◇気分が上がらないのはなぜ?
☆やらなければいけないことがいっぱいだから
「~しなければいけない」「~すべきだ」といったことがたくさんある場合、責任感が強い人ほど、仕事の負荷を重く感じるでしょう。それらを全部こなさなければならないことに、ウンザリしてしまいます。また、「本当はやりたくないことなのに、誰かにやらされている」と思うと、なおさらその仕事に抵抗を感じるもの。「もうこれ以上はがんばれない」と心が悲鳴を上げているので、モチベーションも気分もなかなか上がらないのです。
☆自己否定があるから
自分自身を「不十分だ」「ダメだ」と感じていると、ほかの人や、自分の頭の中にある“普通の人”像と比べて、同じ状態になろうとがんばります。ところが、このがんばりの結果で得られるのは「ダメな自分がバレなくてよかった」というその場だけの安堵感で、「私はよくがんばった」「何かを成しとげられた」となどといった達成感ではありません。自分がダメだと思っていると、どんなにがんばってもよい気分にはなれないので、意欲がわきにくく、気分が上がらなくなります。
☆完璧主義だから
完璧に仕事をしなければと思っていると「あれも完璧に、これも完璧に」とどんどんプレッシャーがかかります。ある程度のところまでは気力を保ってがんばれますが、「完璧にするのはもう無理」と思ったところで緊張の糸が切れてしまい、その仕事への情熱も失われてしまいます。完璧主義者の深層心理には「完璧にできないものはやりたくない」という気持ちがあるので、結果的に気分が上がらなくなってしまうでしょう。
◇「感じ方のクセ」・考え方のクセ」が気分にかかわる!?
気分というのは、「起きたできごとから何を感じるか」という「感じ方のクセ」と、「起きたできごとをどう理解するか」という「考え方のクセ」が関係しています。たとえば、同じ部屋にいる上司が咳払いをしたら、どう感じるでしょうか。「私何かミスしたかな?」と不安に思う人もいれば、「うるさいなぁ」とイラッとする人もいるでしょう。「風邪でも引いたのかな?」と心配する人もいるかもしれません。
不安に思う人は、ほかの人との関係でも「迷惑をかけていないだろうか」と気にしやすいでしょう。イラッとする人は、ほかのことにもイライラしやすいのではないでしょうか。上司を心配する人は、どちらかというと人を思いやる気持ちが強いのかもしれません。同じできごとでも、その人がそのできごとをどう理解するのか、そのことから何を感じるのかは人それぞれ。つまり、感じ方・考え方次第でものごとのとらえ方は異なります。気分は感じ方や考え方から影響を受けるので、このように「感じ方のクセ」・「考え方のクセ」が関係してくるのです。
気分が上がらない場合は、自分が苦しくなる考え方や自分が否定される気持ちで、いろいろなものごとを受けとめている可能性が高いでしょう。このような「考え方のクセ」・「感じ方のクセ」がついていると、自然と毎日気分が上がらない状態になってしまいます。
■仕事の気分が上がらない時の対処法
それでは、気分が上がらない時はどのように対処すればいいのでしょうか。具体的な対処の方法を5つご紹介します。気分に悪影響を与える「考え方のクセ」・「感じ方のクセ」を変えていきましょう。
◇テンションは無理にでも上げるべき?
仕事のために、一時的にでもテンションを上げなければならないことはあるでしょう。「笑う門には福来る」といわれるように、無理にでも笑っていたらそのまま気分がよくなる場合もあります。しかし、自身の感じ方や考え方のクセが原因で気分が上がらない場合、無理に上げたテンションは長くは続かないでしょう。遠回りに思えても、根本にある自分が辛くなるような考え方や感じ方のクセを変えていくことをオススメします。
◇気持ちを切り替える5つの方法
☆歩く・身体を動かす
気持ちが沈んでいる時は、うつむいてじっとしていることが多いのではないでしょうか。気持ちと身体はリンクしているとされています。姿勢を変えたり、身体を動かしたりすると、気分も動かしやすくなります。背筋を伸ばして歩いたり、軽いストレッチをしたりするほか、その場で3回ジャンプしてみるのも効果的。会議中など、大きな動きができない時は、目線を上にあげるだけでもよいでしょう。
☆鏡に映る自分を肯定する
気分が上がらない時は、自分に否定的になっていることが多いです。そんなときは化粧室などに行き、自分を鏡に映しましょう。その自分を見て、「私はがんばっている(がんばってきた)」「私は○○できる」など、肯定する言葉をかけてみてください。「がんばれ」は悪い言葉ではありませんが、今がんばっていることを認める言葉ではありません。「がんばれ」と励ますよりも、「がんばっている」の現在進行形や、「がんばった」と過去形での声かけがオススメです。
☆その仕事を通して喜ぶ人の顔を思い浮かべる
その仕事をしたら、誰がどんな顔で喜ぶのか想像してみましょう。その人を喜ばせることができた時の気持ちも想像してみてください。人は誰かを喜ばせたいものです。そして、気分が上がらないのは、喜びが不足している傾向が。誰かの喜び、自分の喜びを想像して、感じてみましょう。自分のためにがんばるのが苦手な人でも、誰かのためにがんばろうとすると意欲がわいてくることがあります。
☆自分なりの気分を変えるスイッチを使う
あらかじめ「これをしたら自分の気分が変わる!」という自分なりのスイッチを探しておきましょう。「このドリンクを飲んだら」「このお菓子を食べたら」「この曲を聞いたら」「この香りをかいだら」「この写真を見たら」など、自分で「これがあったら大丈夫」と思えれば、なんでもスイッチになります。お守りやおまじないのようなものですね。そして、そのスイッチを使ったら、さっきまでとは違うことを考えてみてください。
☆24時間以内にラッキーだったことを5つ思い出す
「私は運がいい!」「私はラッキーだ!」と思えると、気分が上がります。24時間以内と時間を区切って、ラッキーだったことを5つ探してみましょう。たとえば、信号が青だった、電車で座れた、ランチがおいしかった……など。気分が上がらない時は、ついアンラッキーなことに目が向いてしまいがち。5つ探そうとすることで、ラッキーなことに意識が向きやすくなります。自分がラッキーだと思えたら、気分が変わるでしょう。
■考え方のクセを知って気持ちを切り替えよう
仕事で気分が上がらない場合は、自分の考え方や感じ方のクセが原因となっている可能性もあります。たとえば、つい自分に否定的な考え方をしてしまう場合には、鏡に映った自分に「私はがんばっている」と声をかけてあげたり、意識的にラッキーだったできごとを思い出したりしてみるとよいでしょう。人を喜ばすのが好きな人は、自分のした仕事で誰かが喜ぶさまを想像してみてください。また、体を動かしたり、気分を切り替えることができる「スイッチ」をあらかじめ作っておいたりすることも大いに役に立つかもしれません。
(文:大塚統子、構成:Kaoru Sawa)
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