お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

性格の不一致で離婚する夫婦の割合とは? 離婚の流れと注意点【弁護士が解説】

石濱嵩之

「性格の不一致」で離婚する場合の注意点

03

もし性格の不一致を理由に離婚することになったら、女性はどうすればいいのでしょうか。必要な別居期間や性格の不一致を証明するもの、そのほかの法的確認事項について、詳しく解説していただきました。

法律が定める離婚事由

もし夫婦の一方が離婚したいと考えたとき、相手も離婚することに同意し、財産分与などの条件についても当事者同士での話し合いができるのであれば、調停や裁判を起こす必要はありません。いわゆる協議離婚(民法763条)です。しかし、なかにはさまざまな理由で、相手から離婚することの同意が得られないことがあります。そんなとき、裁判所はどういう場合に夫婦を離婚させるという裁判が下せるのでしょうか。

民法770条1項は、裁判上の離婚ができる場合として次の5つを定めています。

(1)配偶者に不貞な行為があったとき
(2)配偶者から悪意で遺棄されたとき
(3)配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
(4)配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
(5)その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

上の(1)から(5)のなかに「性格の不一致」が含まれていないことがわかると思います。性格の不一致は離婚を決意する動機であっても、それ単体では裁判上の離婚を成立させるだけの強い意味はないのです。

「性格の不一致」や生活費などの経済的事情、性的不調和といった離婚を決意する動機は、「(5)その他婚姻を継続し難い重大な事由」があるかどうかを判断するための事情の1つとして意味を持つことになります。そして、こうした動機から生まれてしまった夫婦関係の不調和が、婚姻を継続することができないくらいに発展してしまったとき、裁判上の離婚が認められることとなります。

「性格の不一致」を証明できるもの

「性格の不一致」は、必ずしも外面にあらわれるものではありませんから、「性格の不一致」そのものを証明するというのは簡単ではありません。考えられる証拠としては、夫婦で意見の衝突があったときのLINEやメールなどのやり取りや録音データ、日記などがあるでしょう。

もっとも、結婚とは、そもそも生まれ育った環境がちがう他人同士が行うものであり、お互いの価値観がちがうことが通常ですから、単なる「性格の不一致」だけでは離婚が認められない可能性があります。

「性格の不一致」による離婚を裁判で認めてもらうためには、「性格の不一致」の程度が大きく、夫婦共同生活を送ることが極めて困難であることと判断される必要があります。そして、夫婦共同生活を送ることが極めて困難かどうかを見極めるための事情として、いわゆる「別居期間」の長短が考慮されることになります。

「性格の不一致」で離婚する場合に必要な「別居期間」

上述のとおり、法律は「(5)その他婚姻を継続し難い重大な事由」があるかどうかという総合的な判断で離婚の是非を決めるという態度をとっていますから、何年別居すれば離婚できるという決まりはありません。

別居期間が長ければ長いほど、夫婦としての実体がなくなっていくため、夫婦関係が回復される見込みがないという結論に傾いていくことになります。それまでの婚姻期間の長さにもよりますが、特別な理由(勤務先都合による単身赴任など)のない別居期間が3~5年にも及ぶとか、婚姻期間の半分が特別な理由のない別居という場合には、離婚が認められやすい傾向にあります。

仮に、「別居期間2年で離婚できた」という裁判例があったとしても、その裁判ではほかの事情(経済的事情や子どもの有無、人数、年齢など)も全部ひっくるめて考慮した結果、別居期間2年の夫婦に離婚を認めただけかもしれないのです。

結局のところは、「性格の不一致」や「別居期間」などの事情をもとに、いかに夫婦関係が破たんしてしまっているのかを、裁判所に対して説得的に主張し、証明していくことが裁判上の離婚を成立させるための指針となります。

「性格の不一致」で離婚するときに確認すべきこと

単純な性格の不一致で離婚する場合、「どちらが悪い」ということはないので、基本的に慰謝料などは発生しないでしょう。しかし、一方の配偶者が離婚に消極的であるのに、離婚を押し切りたい場合などは、解決金として一定の金額を支払う場合があります。これは当事者の納得の問題ですので、金額が決まっているわけではありません。もちろん、いくら解決金を積んだとしても、離婚に応じてくれないということもあり得ます。

また、「性格の不一致」だけの離婚に限らず、離婚する場合には、夫婦の共同生活の中で築いた財産を折半する「財産分与」や、子どもがいる場合の「親権」や「養育費」、「面会交流」、「年金分割」の取り決めが行われます。子どもがいる場合、原則として親権者を父母のどちらにするのか決めなければ、離婚届は受理されません。このような取り決めは、あとで「言った言わない」の論争を防止するために、合意書や公正証書にして、きちんと残しておくほうがよいでしょう。

次ページ:「性格の不一致」があっても離婚しない方法

SHARE