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【少女マンガに学ぶ不倫】第12回『深夜のダメ恋図鑑』

和久井香菜子

少女マンガ攻略・解析室室長の和久井香菜子が不倫を扱った少女(女性向け)マンガを毎週1冊ピックアップ! そこに描かれた男女の姿から、不倫の哀しさ恐ろしさを学んでいく連載です。美しく描かれることも多いけど、不倫はダメ、絶対!

こんにちは、少女マンガ攻略・解析室室長の和久井香菜子です。
心理学のひとつに「行動心理学」というのがあります。
例えば有名な心理学の実験で、ボタンを押すとエサが出てくる装置を動物に操作させるもの。その実験でボタンをネズミや鳩が一生懸命押すのは、ボタンを押すという行為が、餌をもらえるというメリットとして返ってくるからです。餌が出なくなると、ボタンも押さなくなります。
これはとても当たり前のように思えますよね。
行動心理学によると、「やるとメリットがあることは繰り返しやるようになるし、デメリットがあることはやらなくなる」「やらないことでメリットがあることはやらないままだし、やらないことでデメリットがあることはやるようになる」という単純な思考により、動物の行動は決まっていくんだそうです。

不倫に関して考えてみます。
不倫をすることのメリットは、まあ恋人気分を味わえるとかでしょうか。デメリットは、自分が一番じゃないこと、人に言えないこと、誰かを不幸にするかもしれないこと、もしも嫁に訴えられたらぜったいに負けること。
不倫をしないことのメリットは、お天道様の下で堂々と生きられるとか? デメリットは……わからん。

フツーに考えて、メリット・デメリットを足し引きしたら、デメリットの方が多いと思うんです。嫁から損害賠償を請求されたり、誰かを傷つけることの罪悪感を背負ってまで、自分に必要な人っているのかしら。それが恋愛関係である必要があるのかしら。

そういう計算を、甘~い誘惑に負けてしなくなっちゃうと、痛い目に遭うことになる気がします。

今週の教科書『深夜のダメ恋図鑑』

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この作品は、女が「甘~い誘惑に負け」ることなく、自分の利益をしっかり確保している潔さが心地いいです。人気の理由はそこですよね。

たいていの女性は、惚れた弱み、手に入れた地位の確保のために、いろんなことを我慢してますから。

主人公は、千代、円、佐和子の3人女子。千代は少女漫画脳に侵されているため、リアルな男性が気持ち悪くてうまく行きません。円は元ヤンなのに男性経験なし。佐和子はつき合う彼氏がダメンズです。

さてこの円、会社の取引先の山田さんから、積極的にアプローチされます。そして“すっかり参ってしまいまして……”円は山田さんに思い切って告白します。
「あたし実は、山田さんに隠してることがあって…」「あたし…初めてなんです、男の人とつき合うの」
すると山田さん、ドン引きするどころか喜んでくれました。てっきり引かれると思っていた円は、本当のことを話してよかったと、自分を受け入れてもらえたことに安堵します。すると、
「俺も一つだけ隠してたことがあるんだ」「すっかりだまされちゃったお返し」「オレ、実は結婚してるんだ」「大きなヒミツを打ち明けてくれたキミの気持ちに、オレも精一杯応えたい」
と言い出します。

さて、ここで目をつぶれば、人生初の彼氏ができます。
円が取った行動は……。

円に学ぶ「不倫男の撃退方法」

「あたしの話と山田さんのソレ、同レベルの話?」「オレを好きなら、不倫関係に甘んじろってこと……?」
しどろもどろになった山田さんに、円は畳みかけます。
「オマエどんだけいい男なんだよ」「福山雅治でもねェよそんなハナシ」「毎日アイロンのかかったシャツ着て、キレイに洗濯されたパンツはいて、外で楽しく女と遊んで、純な女コマして、オマエは楽しいことだらけ。こっちは失うもんだらけじゃねぇか……!!」

そして円は、八百屋さんに置いてあったりんごを握りつぶして、不倫男山田を追い払います。
「ざけんじゃねェ……!! いっぺんカーチャンの腹ん中からやり直してきな…………!!」
よく言った円……!!
読者たちからの割れんばかりの拍手が聞こえてきそうです。

この作品は、3人の女子たちの、男に対する容赦ないリベンジがたいそう心地いいです。
彼女たちを見習っていたら、不幸な女は9割減になりそうです。『愛人たち』(https://woman.mynavi.jp/article/161210-42/)のキャラにも読ませてあげたい。時代は変わり、女は強くなりました。

まとめ

恋愛なんて、理性が効かず、感情が暴走する最たる行為ではないでしょうか。
その感情優位の問題に、理性で解決しなければいけない法律を絡めたのが結婚制度。そりゃあいろいろ問題が起きてくるでしょう。
不倫も同じで、感情ではなく理性で判断して解決していきたいものです。
となるとどうすればいいかの教科書が、『深夜のダメ恋図鑑』なんですね。

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「少女マンガに学ぶ不倫の実態」、今回が最終回です。おあとがよろしいようで。

(文・イラスト:和久井香菜子)

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※この記事は2016年12月24日に公開されたものです

和久井香菜子

少女マンガ攻略・解析室 室長(http://kanako-wakui.net/index/)、編集・ライター。卒業論文で『少女マンガの女性像』と題して、女性の社会進出と少女マンガの主人公の描かれ方がどうリンクしているかを研究。以後、各種少女マンガレビューの執筆を始める。著書に『少女マンガで読み解く 乙女心のツボ』(カンゼン)がある。

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