チョコレートも「豆」の違いで味わって。作り手の技が冴えるビーントゥバー
今年多くの話題を集めたサードウェーブなコーヒーショップ。シングルオリジンという言葉とともに、コーヒー豆の産地で味が違うことも知られるようになりました。コーヒーと同じように焙煎した豆から作られるチョコレートも、産地によって味わいが異なるそう。カカオ豆によるチョコレートの楽しみ方を、All About「チョコレート」ガイドの市川歩美さんに聞きました。
カカオ豆に魅せられて、Bean to Bar(ビーントゥバー)が誕生
「カカオ豆は、南米、東南アジア、アフリカ各国など、主に赤道の南北緯20度以内の国で栽培されており、その産地ごとに風味が異なります。ベトナム産はフルーティな香りと爽やかな酸味、トリニダード・トバコ産は独特のスパイシーな香りを持つなどの特徴を持っています。商品のパッケージにカカオ豆の生産地が書かれていることも多いので、いろいろ食べ比べて違いを楽しむことをおすすめします。カカオを70%以上使用しているチョコレートであれば、より風味の違いを感じることができます」(市川さん)
カカオ豆の種類による違いが語られるようになったのは、アメリカで「Bean to Bar(ビーントゥバー)」という言葉が使われはじめた2007年頃からだと市川さんは言います。
「ビーントゥバーは、カカオ豆の産地や個性に注目し、カカオ豆本来の風味や個性を最大限に引き出して作るチョコレートの製造スタイルです。このスタイルの火付け役とも言われる『マスト・ブラザーズ』は、映像作家である兄とミュージシャンである弟が創りあげたブランド。まったくの異業種からカカオ豆に魅せられ、製造に必要な機械を揃えカカオ豆を輸入しこだわりのチョコレートを創り上げるというプロセスは、他のビーントゥバーブランドに共通するところも多いですね」
日本人好みの「ビターなミルク味」のビーントゥバーチョコレート
日本でも、ビーントゥバーブランドのチョコレートが登場しています。
「日本産ビーントゥバーチョコレートとしておすすめしたいのが『アルチザン パレドオール』です。日本を代表するショコラティエ・三枝俊介氏が手掛けており、日本人の好みにあう『おいしい』バランスが特徴です。10月から発売の『ビターミルクタブレット』は、ベトナム、キューバ、トリニダード、ハイチの4つの産地を選べるミルクチョコレート。ビターでありながらミルクをしっかり感じられ、かつ砂糖は控えめ。本格的でありながらリーズナブルな価格も魅力です」(市川さん)
異業種から起業、華やかなパッケージにも注目
市川さんがお薦めしてくれたのはアメリカとベトナムの2ブランド。「マスト・ブラザーズ」同様に異業種からビーントゥバーを起ち上げたブランドが、やはり注目のようです。
「ディック・テイラー クラフトチョコレート」は、2010年にカリフォルニア州の元家具職人、ディックとテイラーがはじめたビーントゥバーブランド。豆のブレンドを一切行わない“シングルオリジン”の手法をとっているのが特徴です。原料は、カカオ豆ときび糖のみで、乳成分、保存料、香料、カカオバターを加えないシンプルなダークチョコレート。
「木工技術者出身であることから自らカカオ豆のロースト機を開発し、豆の産地ごとに異なる方法で、その豆の持つカカオ豆の香りや酸味、苦味のバリエーションを最大限に引き出しています」(クロンティップ/広報)
「マルゥ・チョコレート」は、サンフランシスコの広告代理店で働いていたフランス人ヴィンセントと元銀行員のサミュエルが立ち上げたビーントゥバーブランドです。ベトナム産カカオのみを使用し、工場もベトナムのホーチミン市郊外。直接農園に買い付け製造しています。
「6種類すべてベトナム産でありながら、産地ごとの違いがはっきり味にあらわれています。カカオ生産地での現地製造の強みもあり、品質の良いカカオ豆だけを選んでチョコレートにしています。口に入れたときだけでなく、長く続く香りの余韻と力強さが特徴です」(アマイジャパン/広報)
いずれのビーントゥバーチョコレートも、味もさることながら、パッケージの美しさにも定評があります。
これからのチョコレートシーズン、美味しくて華やかなビーントゥバーチョコレートの世界にますます魅せられていきそうです。
(齋藤純子+ガールズ健康ラボ)
※この記事は2015年11月04日に公開されたものです