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昔の映画は、ひとの動きが速いのはナゼ?「コマとコマの間隔が大きいため、速く動いているようにみえる」

日々進歩する映像技術。高画質・大画面は充分に普及したので、今後は「滑らかさ」が重要になってくる。

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白黒やサイレントなど昔の映画では、ひとの動きが速くみえるのはなぜか? 昔のひとは動作がキビキビしているのかと思ったら、1秒間に撮影できるコマ数が少ないのが原因。たった毎秒6回の差で、動きが粗くみえてしまうのだ。

火事の原因はフィルム?

映画やテレビはパラパラ漫画と同じ原理で、静止した絵や写真が高速で映し出されているだけだ。動いていると感じても、実際は残像を利用した「目の錯覚」でしかない。

1秒間に映し出される画像はfpsの単位であらわされ、例えば10fpsなら1秒間に10枚、の意味だ。身近なもののfpsを比較すると、

・映画 … 24fps

・テレビ … 30fps

・HDTV(高精細テレビ) … 60fps

で、数が大きいほど動きが滑らかにみえる。さらに高速なハイスピード・カメラは、3万~155万fpsとケタ違いに速い。水滴が落ちる様子など、一瞬のできごとを撮影するためで、3万fpsで撮影した映像なら3万分の1秒ずつの変化が確認できる。

対してサイレントと呼ばれる無声映画の時代は16.6fpsで、現在の70%程度しかない。fpsが小さくなると紙芝居に近い状態となりギクシャク感が生まれる。もし1fpsなら1秒毎のスライド・ショーと同じなので、あいだが抜け、急に変化したようにみえる。

これが速く動いているようにみえる原因だ。

なぜ昔の映画は16.6fpsだったのか? コスト面で有利なのも確かだが、おもな原因は機械の性能だ。当時は感光式のフィルムだったので、16.6fpsならシャッターも毎秒16.6回開閉する。1分間のシーンでも1,000回近く動作するのだから、材質/精度ともに限界に近かったはずだ。

もう一つは、ナイトレートと呼ばれる燃えやすいフィルムが使われていたことだ。フィルムはベースと呼ばれる透明な材質にさまざまな薬品を塗って作られる。現在のベースはジュースでおなじみのPETなので、劣化しにくく熱にも強い。

対して昔のフィルムには燃えやすいニトロ・セルロースが使われていたため、上映中に燃えてしまい映画館が火事になった例が少なくない。35ミリ・スタンダードフィルムの場合、1コマの長さがおよそ25.5ミリ(約1インチ)になる。

これで1時間の映画を撮影すると、

・1コマの長さ … 25.5ミリ

・1秒間のコマ数 … 16.6コマ

から1分で約25.4m、1時間ならおよそ1.5kmとなる。フィルムも時速1.5kmで動くので摩擦も生じるし、上映中は強い光/機材の熱が加わり、燃えやすい条件が揃う。

なかには編集中に燃えた例もあるので、映画づくりは命がけの作業だったのだ。

写真のほうが変化に気づきやすい?

逆にfpsを落とした微速度撮影も人気が高まっている。滑らかな映像が楽しめるハイスピード・カメラに対し、5秒に1回など極端に落とす方法だ。

微速度撮影のメリットはなにか? まずはフィルムやメモリの節約だ。fpsを半分にすれば、同じ容量でも2倍撮影できる。また、変化が遅いものにも有効で、天体観測や動植物の成長記録も微速度撮影の得意分野だ。人間の目は動きの速いものには敏感だが、極端に遅いと変化に気づかない場合が多い。

月を見て、止まっていると感じるのもこのためだ。そこで極端にfpsを減らすと紙芝居のようにあいだが飛ぶため、かえって変化に気づきやすい。普段いっしょにいる家族の成長や変化を感じにくいのも同じ理由で、1日1枚写真を撮ったほうが、動画よりもはるかに分かりやすいだろう。

まとめ

・現代の映画は秒速24コマ。昔の映画は16.6コマ

・コマとコマの間隔が大きいため、速く動いているようにみえる

・「動いている」と感じるのは、目の錯覚

・昔のフィルムは火気厳禁

左右の映像を交互に映す3D画像は、60fps程度ないとギクシャク感で気分が悪くなるというデータもある。この先どこまで高性能になるのか楽しみだ。

(関口 寿/ガリレオワークス)

※この記事は2014年02月15日に公開されたものです

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