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もしも太陽が2つになったら「ベテルギウスは太陽になるの?→多分ならない」

SF映画の金字塔・スターウォーズでは、2つの太陽を持つ惑星タトゥイーンが描かれていた。地球には無縁の話と思っていたが、近いうちにベテルギウスが爆発し、2つめの太陽になるという話がまことしやかに広まっている。

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本当にベテルギウスは太陽になるのか? 大質量星の超新星爆発は避けられない宿命だが、爆発しても数秒程度の閃光に終わり、第二の太陽になる可能性はほとんどなさそうだ。

膨らんで縮んでさようなら

ベテルギウスはオリオン座の恒星で、シリウス、プロキオンと組み合わせて「冬の大三角」として理科の授業にも登場するポピュラーな天体だ。地球から約400光年とされていたが、数年前に640光年程度と改められた。

太陽と比較すると直径は2,360倍、質量は7.7~17倍ほどとされ、現在は寿命末期の赤色超巨星に分類されている。

ベテルギウスが爆発する説の発端はなにか? これは近年の観測で大きさが変化していることが報じられたのが原因だ。カリフォルニア大学の2009年の観測では、15年間に15%も収縮したとされ、はりま天文台によるとこの40年間で直径が2~3倍に膨張していることが分かった。

太陽と同じ恒星なので、大きさが変わるのは不思議ではないのだが、あまりにも急激に膨張/収縮しているため、爆発の前兆ではないかと考えられているのだ。

恒星が迎える最期は質量によって異なる。太陽が自らを構成する水素を燃料に、核融合によって熱と光を放っているのはご存じの通りで、質量が末路に影響するのは、持っている燃料の量によって、核融合の進み具合が異なるからだ。

恒星の核融合は、まず水素を燃料にして始まる。やがて水素を使い果たすと、核融合で生まれたヘリウムを燃料にして炭素やネオンを生み出す。ヘリウムがなくなると炭素やネオンを燃料に、と続き、新たに生まれた物質を燃料にできる大変経済的な仕組みなのだ。

同時に、自分の発する熱で膨張し、恒星は大きく膨らむ。

核融合は続くよ、どこまでも。

ただし、燃料の変化を重ねるうちに、だんだん核融合が難しくなってくる。ヘリウムと比べ、炭素やネオンには大きなエネルギーが必要だからだ。そのため太陽の1~2倍ほどの恒星では、水素→ヘリウム→炭素あたりで打ち止めとなり、くすぶりながら静かに最期を迎える。

対して大質量の恒星は、パワーにものをいわせて炭素からネオン→酸素へと核融合を続け、最終的には鉄のコアを持つようになる。地球上では気体の水素やヘリウムと比べ、はるかに密度の高い鉄にまで進むと重力も増す。この頃になると核融合も衰えをみせ、膨張よりも自分の重力によって収縮が始まる。

ベテルギウスの膨張/収縮は、寿命の前触れと考えられても、さほど不思議ではないのだ。

ベテルギウスの断末魔

ベテルギウスが寿命を迎えたらどうなるのか? もう核融合できない状態になると中心に向って一気に収縮し、コアの重力が高まる。太陽の10倍超クラスになると原子も崩壊し、やがてブラックホールが誕生する。細かいプロセスは省略するが、自転と残がいを使って光速の99.99%ほどの強いジェット「ガンマ線バースト」を放つ。

この輝きが第二の太陽と勘違いされているのだろう。

ガンマ線バーストはビーム状に放たれるので、宇宙でもっともまぶしい光に違いない。また、その名が示すようにガンマ線が含まれているので、浴びれば無事ではいられない。

ただし、輝く時間は長くても数分程度の一発屋なので、第二の太陽と呼べるような存在にはなり得ない。しかも、方角的に地球に当たることはないそうだし、こちらに向かったとしても到達するのは600年以上先の話だから、今いる人たちが被害を受ける可能性は皆無なのだ。

そもそもベテルギウスはお爺ちゃん状態だから、太陽として返り咲くこともない。末期にガンマ線バーストを放ったとしても、届くのは600年以上先のことだから不問とする。

よって、ベテルギウスは無罪。

(関口 寿/ガリレオワークス)

※この記事は2014年02月02日に公開されたものです

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