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「貴殿」の正しい使い方とは? 注意点や言い換え表現

Sai

「貴殿」の正しい使い方、理解できていますか? フォーマルな文書などでよく使われる言葉ですが、使い方を間違っている人は少なくありません。今回はビジネス系ライターのSaiさんに、正確な使い方や使用上の注意点などを解説してもらいます。

公的文書や手紙などでよく使われる「貴殿」という言葉。ビジネスシーンでも頻繁に見る表現ですが、使い方を間違うと失礼な印象を与えてしまうこともあります。

今回は、「貴殿」の正確な使い方を例文つきで解説。

また、「貴殿」を使う上での注意点や類語・言い換え表現なども併せて紹介するので、使うためのポイントを押さえておきましょう。

「貴殿」の読み方と意味


「貴殿」は「きでん」と読み、『デジタル大辞泉』によれば意味は以下のように説明されています。

き‐でん【貴殿】

二人称の人代名詞。男性が目上または同等の男性に対して用いる。あなた。

[補説] 目上の相手への敬称として用いたが、のちに、同輩に対する親愛の気持ちを表す語としても用いるようになった。現代では多く手紙や文書で用いる。

(『デジタル大辞泉』小学館)

尊敬の二人称の代名詞で、「あなた」を言い換えた言葉です。元々は目上の人に対してのみ使用していましたが、現在は立場が同じ人に対しても使える表現となっています。

「貴殿」を使う上での注意点

「あなた」を文語的にした「貴殿」は、職場やフォーマルな文書などでよく見る表現です。

使い方を間違うと相手に失礼な印象を与えてしまう可能性があるため、十分に注意して使用しなければなりません。

ここからは、「貴殿」を使う上での注意点を紹介します。使用上のポイントをよく押さえておき、誤用を避けるようにしましょう。

男性に対して使うのが一般的

「貴殿」は、本来男性が相手の男性を敬って使う言葉です。

近年では女性に対して使われることもありますが、本来の意味を考えると女性に使う場合は「貴女(きじょ)」と言い換えた方が無難です。

また、男性が同等もしくは目上の女性に対して使う敬称としては「貴姉(きし)」という言葉もあり、こちらも「貴殿」の代わりとして使用することができます。

なお、女性から男性に向けて「貴殿」を使うこともあまり一般的ではないため覚えておくといいでしょう。

目上の人に使う場合は注意が必要

元々は目上の人に対して使う言葉である「貴殿」。

しかし、最近では地位や年齢などが同等な相手に向かって使うことが増えてきているため、目上の人に使うと相手や状況によっては不適切だと思われることがあります。

特に、日本のビジネスシーンでは目上の相手を呼ぶ時に個人名に「様」をつけたり肩書で呼んだりするのが一般的です。

したがって、ビジネスメールなどで上司や先輩に敬称をつける場合は、むやみに「貴殿」を使わず「様」や役職名などをつけた方が無難でしょう。

話し言葉としては使わない

「貴殿」は、基本的に書き言葉として公的な書類・定型文的な文書などで使われる表現です。したがって、面と向かって相手を「貴殿」と呼ぶことはありません。

具体的には手紙の前文や結びのあいさつなどでよく使われる言葉ですので、使うシーンを間違えないように気をつけましょう。

複数人に対しては使えない

尊敬の二人称の代名詞である「貴殿」は、複数の相手に使うことはできません。

相手が2人以上の場合は、「貴殿方」や「皆々様」「各位」などを使用するのが正しい表現です。

なお、「貴殿ら」という表現も「貴殿」の複数形となりますが、「ら」という言葉をつけられることに対して悪い印象を持つ人もいるため、使用は避ける方が無難です。

「貴殿」の使い方と例文

フォーマルなシーンで使うことが多い「貴殿」という言葉。誤用を避けるためにも、間違いのない使い方や具体的な使用シーンなどを理解しておいた方が良いでしょう。

ここからは、「貴殿」の場面別の使い方を例文つきで紹介します。

公的な書類などで使う場合

「貴殿」は、手紙の前文やフォーマルな文書の結びのあいさつなどで使われることが多い言葉です。

「貴殿」を用いた定型文的な表現もたくさんありますので、代表的なフレーズを確認しておきましょう。

例文

貴殿におかれましては益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。

・末筆ながら、貴殿の益々のご活躍をお祈り申し上げます。

貴殿の温かいお心遣いには深く感謝いたします。

貴殿のご尽力の賜物であると感謝しております。

貴殿のご多幸をお祈り申し上げます。

辞令や表彰などで使う場合

「貴殿」をビジネスシーンで使う場合は、社内の公的な書類の中で使われることが多いです。

例えば、表彰や辞令・採用通知などにおいて敬意を込めて相手を呼びたい場合に「貴殿」が使われます。

職場などで問題なく使用するためにも、例文を確認しておきましょう。

例文

・慎重かつ厳正なる選考の結果、この度貴殿を弊社社員として採用することに決定いたしましたのでご通知申し上げます。

貴殿のこれまでに得た部下からの信頼や功績をたたえ、令和3年4月1日付をもって営業本部本部長に任命します。

貴殿は令和3年7月において、輝かしい成績を収められ個所の牽引役として大いに貢献されました。

貴殿の功績をたたえ記念品を贈呈し、永年の努力に深く感謝の意を表します。

・採用選考や入社手続の際、貴殿に関する個人情報の提供をお願いしております。

「貴殿」の類語や言い換え表現

「貴殿」には、状況や場面によって言い換えをすることができる類語がいくつかあります。

知っておくとビジネスシーンで役に立つ場合が多いため、代表的なものの意味や「貴殿」との違いなどを確認しておきましょう。

(1)貴兄

「貴兄」は「きけい」と読み、「貴殿」と同じく、男性が男性に対して使う二人称の人代名詞です。

「あなた」を表すという意味で「貴殿」の類語とはなりますが、「貴兄」は同輩や親しい先輩に対して使う言葉であり、目上の相手に使用することはできません。

また、軽い敬意や親しみを込めた言葉のため、使われる場面も「貴殿」と異なってくる場合が多いです。

使うシーンや相手によってうまく使い分ける必要があるため、それぞれの言葉の意味をしっかり理解しておきましょう。

(2)貴方

「貴方」は「あなた」を漢字にした表現であり、対等または目下の相手に対して使う言葉です。

丁寧な言葉ではありますが、現代語では敬意の程度は低くなっており目上の相手に使うことはできません。

また、ビジネスメールなどでも避けた方が良い言葉なので、覚えておくようにしましょう。

(3)貴台

「貴台」は「きだい」と読み、「貴殿」や「貴兄」などと同じ二人称の人代名詞
の1つです。

「貴殿」よりもさらに敬意を込めた言葉であり、主に手紙文などで用いられます。

なお、「貴殿」のように男性が男性に対して使う言葉というわけではなく、男女どちらにでも使用できる点が「貴殿」との違いとなっています。

(4)貴社

「貴社」は、相手が個人ではなく会社の場合に使われる尊敬表現です。

ビジネス文書やメールなどにおいて、取引先の会社等を尊敬の気持ちを込めて呼びたい時に重宝する表現でしょう。

なお、話し言葉で「貴社」というと、「記者」や「帰社」などの同音異義語と間違われる可能性があるため、会話表現では「御社」を代わりに用います。

また、会社と区別される組織に対しては、適切な呼称を用いるのが望ましいとされています。例えば学校に対しては「貴校」、病院に対しては「貴院」などの表現を使うことも併せて覚えておきましょう。

注意点や使い方を理解して正確に使おう

公的文書やフォーマルな手紙などでよく使用される「貴殿」という言葉。

ビジネスシーンにおいても見聞きする機会のある表現ですが、正確な使用方法が分からない人も多いでしょう。

しかし、「貴殿」を使う上での注意点を理解して、場面別の使い方を把握しておけば、正確に使用することはそこまで難しくありません。

「貴殿」の類語や言い換え表現なども併せて理解しておき、どんな場面でも自信を持って使えるようになりましょう。

(Sai)

※画像はイメージです

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