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「忖度」の意味とは? 正しい使い方と言い換え表現

武田 麻希

「忖度」という言葉はニュースなどでよく見聞きする言葉の1つですが、本来の意味はあまり知られていません。今回は、正しい意味や使い方、類語表現などを詳しく解説します。

「忖度」は、社会的地位の高い人に過剰に配慮する言葉だと思っている人が多いかもしれませんが、実際の意味は異なります。意味や語源は何なのかなど、正確な意味はあまり知られていません。

特に政治系のニュースなどで悪い意味として使われがちな「忖度」ですが、自分が使う時には、正しい意味を理解しておきたいですよね。

この記事では、「忖度」の意味や語源、さらに使い方や類義語などを紹介します。語彙力を増やしてビジネスで活用したいと考えている人は、ぜひ読んでください。

「忖度」の意味と語源は?

「忖度」は、相手に配慮する場合に使われることが多い言葉です。辞書によると、「忖度」には下記のような意味があります。

そんたく【忖度】

他人の心をおしはかること。また、おしはかって相手に配慮すること。

(『デジタル大辞泉』小学館)

「忖度」に使われている「忖」は、「推し量る」という意味を持ちます。「度」には「示される言動や心の様子」という意味があります。

2つの漢字が持つ意味を組み合わせて、「推し量る心やそれによって示された言動」を意味する言葉となりました。

「忖度」の語源

「忖度」の語源は、古代中国から始まっているという説があります。中国最古の詩集である『詩経』に、「他人心あり、予(われ)これを忖度す」という文がありました。

「詩経」は紀元前11世紀から紀元前6世紀頃(諸説あり)の作品を集めた儒学の経書です。「忖度」も「詩経」がつくられていた頃には使われていた言葉であることが推測されます。

「忖度」は誤用されやすい?

元々の意味を考えた場合、「忖度」は誰が相手であっても問題なく使える言葉です。

しかし、2017年頃の国会答弁で「忖度」という言葉が使われたことをきっかけに、本来の使い方とは異なり、根回しを指す文脈で使われることが増えています。

「立場が上の人の意図をずる賢く察し、根回ししながら行動すること」が「忖度」の意味と思われがちですが、本来の意味は「気持ちを推し量ること」であり、そういったニュアンスを含まない点に注意して使いましょう。

「忖度」の正しい使い方

「忖度」は間違った使い方をしやすい表現ですので、意味を正しく理解して使いましょう。ここでは、「忖度」の具体的な使い方を、いくつか言葉の例を挙げながら紹介していきます。

「忖度」を使った例

・取引をスムーズに進めるためには、忖度がものを言うこともある。

・迷っている顧客に必要以上に話しかけないのは、彼なりの忖度である。

「忖度」には「他人の心を推し量ること」や「推し量って配慮すること」などの意味がありますので、実際は使用する相手を問いません。

上記の例文のように「気遣い」に似たような意味として使われることも多いですよ。

「忖度する」を使った例

・クライアントへ忖度して、打ち合わせ日程を調整する。

・残業がある妻に忖度して、夕食の用意を済ませておく。

・周りに忖度しすぎると、かえってうまくいかないことがある。

「忖度」は動詞「する」と組み合わせて、人の行動を表す言葉としても使われます。一番使われる機会が多い「忖度」の使い方として、覚えておきましょう。

「忖度」の誤用例

・彼のプレゼンが成功したのは忖度の結果に違いない。

・Aさんが昇進した裏には忖度があったと噂されている。

「忖度」は誤用されやすい表現です。「気持ちを推し量って裏から手を回した」という意味で使われることが多くなっていますが、本来はそこまでの意味を持ちません。

純粋に「気持ちを推し量る」「気持ちを推し量って配慮する」という意味である点を理解しておきましょう。

もちろん、言葉は時代背景と共に変わっていくものです。今ではこうした根回しのニュアンスを含む使い方も一般的になりつつありますが、本当の意味を知っておくことで、使い方の正確性がUPし、言葉の幅も広がります。

「忖度」の類義語

「忖度」は意味を誤解しやすい表現だからこそ、正しい類義語は何なのかを押さえておきたいもの。そこで、「忖度」の類義語をご紹介します。

推測

「忖度」の類義語である「推測」には下記のような意味があります。

すいそく【推測】

ある事柄をもとにして推量すること。

(『デジタル大辞泉』小学館)

「忖度」に比べると広い意味ではありますが、「推測」にも「忖度」と同じように「推し量る」という意味があります。使い方の例は「人生経験が増えてくると、人の心について経験に基づいた推測ができることもある」などです。

憶測

「憶測」にも「忖度」と若干似た意味があります。

憶測【おくそく】

自分でかってに推測すること。当て推量。

(『デジタル大辞泉』小学館)

「忖度」も「憶測」も推測する意味が含まれているものの、「憶測」は「勝手に」推し量ることで、「彼は憶測でものを言うことがある」などの使い方があります。

斟酌

これは「しんしゃく」と読みます。「斟酌」にはいくつかの意味があり、「忖度」と似た意味もある言葉です。

しんしゃく【斟酌】

1 相手の事情や心情をくみとること。また、くみとって手加減すること。

2 あれこれ照らし合わせて取捨すること。

3 言動を控えめにすること。遠慮すること。

(『デジタル大辞泉』小学館)

上記1が「忖度」と似た意味であり、「まだ子どもであることを斟酌して責任を問わない」などの使い方があります。

推察

「推察」には下記のような意味があります。

すいさつ【推察】

他人の事情や心中を思いやること。おしはかること。推量。
(『デジタル大辞泉』小学館)

「相手に配慮する」までの意味はないものの、「他人の心を推し量る」という意味が「忖度」と共通しています。

「顧慮」

これは「こりょ」と読みます。「顧慮」の意味は下記の通りです。

こりょ【顧慮】

ある事をしっかり考えに入れて、心をくばること。

(『デジタル大辞泉』小学館)

「忖度」とほぼ同じような意味で使われ、「上司の立場を顧慮して行動する」などの使い方があります。

「忖度」の対義語

「忖度」は正確な意味が一般にはあまり浸透しておらず、対義語もよく知られていません。ここでは、「忖度」と反対の意味を持つ表現を1つご紹介します。

独善

「独善」には下記のような意味があります。

どくぜん【独善】

1 他人に関与せず、自分の身だけを正しく修めること。

2 自分だけが正しいと考えること。ひとりよがり。

(『デジタル大辞泉』小学館)

相手の心を推し量ることや配慮することを意味する「忖度」とは真逆の意味であることから、「忖度」の対義語として「独善」が挙げられます。

「忖度」の英語表現

「忖度」は日本的な考え方であり英語では表現しにくいニュアンスがあるものの、いくつかの英語で表すことができます。「忖度」の英語表現は下記の通りです。

speculate

「speculate」には下記のような意味があります。

speculate[動詞 他動詞]

1(確実な根拠なしに)(…について)あれこれ思索する、沈思する、推測する

2(株・土地などに)投機する、(…を見越して)思わくをやる。

(『新英和中辞典』研究社)

「あれこれ思索する」という意味が「忖度」と似たような意味ですので、「忖度」の英語表現として使えます。

surmise

「surmise」には下記のような意味があります。

surmise[動詞 他動詞]

1(想像に基づいて)推量する、推測する

2〈…であると〉推量する、…かと思う

(『新英和中辞典』研究社)

動詞としてだけでなく、名詞としても使える表現です。他人の心を推し量ることを意味する「忖度」と意味が似ていますので、「忖度」の英語表現に適しています。

「忖度」の元々の意味を押さえよう

「忖度」とは、「他人の心を推し量ることや、推し量って相手に配慮すること」を意味する言葉です。「推し量る」という意味がある「忖」と、「示される言動や心の様子」という意味がある「度」との組み合わせでできています。

国会答弁などの影響で、「気持ちを推し量って裏から手を回した」という意味で使われることが増えていますが、本来であれば誤った使い方ですので注意してください。

「忖度」は、動詞「する」をつけて使うことが多いです。「推察」や「顧慮」など類義語もたくさんあります。

本来の意味や周辺の言葉を理解した上で、正しく使っていきましょう。

(武田麻希)

※画像はイメージです

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