「俯瞰」の意味や読み方は？　使い方や類義語との違い

「俯瞰」はビジネスでの指導などでも使われる機会が多い言葉の1つ。

読み方や大体の意味は知られていても、そう頻繁に用いられる言葉ではないため、使い方に迷う人もいるかもしれません。

今回は、「俯瞰」の意味や使い方、類義語などをご紹介します。正確に言葉を扱うために、確認していきましょう。

「俯瞰」の意味や読み方

辞書を調べると、「俯瞰」には下記のような意味があります。

ふかん【俯瞰】

高い所から広い範囲を見おろしながめること。鳥瞰。

(『精選版 日本国語大辞典』小学館)

元々の意味は高いところから見下ろすことです。意味が派生し、ビジネスなどでは「客観的に見ること」を表す場合にも使われるようになりました。

「俯瞰」に使われている「俯」には、「身をかがめて下を向き、うつむく」という意味があり、訓読みは「ふせる」「うつむく」などです。「瞰」という漢字は、「見下ろす、眺める、望む」などの意味があり、訓読みには「みる」「みおろす」などがあります。

つまり「俯瞰」は、どちらにも「眺める」という同じような意味を持つ漢字を組み合わせてできている熟語です。

「俯瞰」の使い方と例文

実際に、「俯瞰」という言葉をどう使えば良いのか、例文と共にご紹介します。

「俯瞰する」

「俯瞰」には、動詞である「する」を組み合わせるのが一般的な使い方です。

「俯瞰する」は、人が遠方から景色や状態を眺めることを指します。景色を眺める時だけでなく、ビジネスで全体概要やタスクを客観的に判断する際に使われることがあるなど、幅広く使える言葉です。

「俯瞰的」

「的」の意味は、「〜の」「〜のような」などです。つまり「俯瞰的」とは、「高いところから見下ろすように全体を見渡すことのような」という形容の意味があります。

ビジネスなどで問題点を洗い出したい場合などに、「俯瞰的に見る」「俯瞰的に考える」などという言い回しが用いられることが多いので、覚えておきましょう。

◇「俯瞰図」

「俯瞰図」には、下記のような意味があります。

ふかんず【俯瞰図】

高い所から地上を見おろしたように描いた図。鳥瞰図。

(『精選版 日本国語大辞典』小学館)

「俯瞰図」には「鳥瞰図」と同じような意味があります。鳥が上空から眺めたかのような表現となっており、三次元的な描写が用いられていることも多いです。

「俯瞰撮影」

「俯瞰撮影」には、下記のような意味があります。

ふかんさつえい【俯瞰撮影】

被写体を上から見下ろした角度で撮る撮影

(『デジタル大辞泉』小学館)

「俯瞰撮影」は上から見下ろして撮ることなので、元々は風景の撮影などで使われていました。しかし、SNSにアップする料理写真などにも俯瞰撮影の技法が使われるようになり、スマートフォンを用いた身近な撮影の手法としてもよく使われています。

「俯瞰」の類義語と対義語

「俯瞰」には類義語と対義語がいくつかありますので、表現の幅を広げるためにも覚えておきたいもの。「俯瞰」の類義語・対義語をご紹介します。

「俯瞰」と「鳥瞰」は同義語

「鳥瞰」には、下記のような意味があります。

ちょうかん【鳥瞰】

鳥が空から見おろすように、高い所から広い範囲を見おろすこと。また転じて、全体を大きく見渡すこと。俯瞰。

(『デジタル大辞泉』小学館)

「鳥瞰」の意味は「俯瞰」と全く同じで、同じシーンで言い換えできます。つまり「俯瞰」と「鳥瞰」は同義語です。

その他の言い換え表現は？

「俯瞰」を言い換える表現には、他にも「包括的に眺める」「マクロに見る」「巨視的」「眼下に見下ろす」「一望」などがあり、それぞれ下記のような意味があります。

☆包括的に眺める

ほうかつてきにながめる【包括的に眺める】

物事を距離を置いたところから全体を捉えようとすること。

(『Weblio類語辞書』weblio)

☆マクロに見る

まくろにみる【マクロに見る】

物事を距離を置いたところから全体を捉えようとすること。

(『Weblio類語辞書』weblio)

巨視的

きょしてき【巨視的】

事物を全体的に観察するさま。マクロ的。

(『デジタル大辞泉』小学館)

眼下に見下ろす

がんかにみおろす【眼下に見下ろす】

高い所から景色を眺めること。

(『Weblio類語辞書』weblio)

一望

いちぼう【一望】

広い景色などを一目で見渡すこと。

(『デジタル大辞泉』小学館)

物ごとに対して使う場合の類義語は「包括的に眺める」などです。使う目的によって類義語となる言葉が異なります。

例えば、景色に関する言葉として使う場合、「一望する」や「眼下に見下ろす」などが適切でしょう。

「仰視」「微視的」は対義語

「俯瞰」の対義語には「仰視」「微視的」などがあり、それぞれの意味は下記の通りです。

ぎょうし【仰視】

あおぎ見ること。

(『デジタル大辞泉』小学館)

 

びしてき【微視的】

物事を微細に観察するさま。

(『デジタル大辞泉』小学館)

「上から見下ろす」の反対で「下から見上げる」意味として使う表現、「全体を見渡す」ことの反対で「細かく見る」意味として使うか表現などが対義語となります。

「俯瞰」の英語表現は？

「俯瞰」の英語表現にはさまざまな言い回しがあります。いざという時のため、代表例を覚えておきましょう。

「long shot」

「long shot」には、下記のような意味があります。

long shot［名詞］

1、遠写し
2、大胆な大穴

(『新英和中辞典』研究社)

上記1の意味が、「俯瞰」が持つ元々の意味と同じです。

「overlook」

「俯瞰する」として使う場合の英語表現は「overlook」で、下記のような意味があります。

overlook［動詞］

1-a、見晴らす、高いところにある
1-b、見渡す、見おろす
2-a、大目に見る、見逃す
2-b、見落とす、見過ごす

(『新英和中辞典』研究社)

1-a、1-bでの使い方が、「俯瞰」の英語表現です。

「俯瞰図」は「overhead view」

「俯瞰図」の英語表現として代表的なのがoverhead viewです。overheadには「頭上の」という意味があり、景色や見ることを表すviewと組み合わせることで、「俯瞰図」の英語表現となります。

「俯瞰撮影」の英語表現は「bird’s-eye shot」などさまざま

「俯瞰撮影」の英語表現として使えるのがbird’s-eye shotです。直訳すると「鳥の目で撮影する」であり、「鳥の目の高さで撮影すること」という、「俯瞰」の同義語である「鳥瞰」と同じ意味を用いた表現です。

類義語には、映画用のクレーンを使って撮ることを表す「crane shot」がありますので、併せて覚えておきましょう。

「俯瞰」は高いところから見下ろすときに使う言葉

「俯瞰」は元々、高いところから見下ろす意味として使われていた言葉です。それぞれ見下ろす意味を持つ「俯」「瞰」という2つの漢字が組み合わせられ、「俯瞰」となりました。

意味が派生して、ビジネスシーンなどで客観的に見ることを表す場合にも使われています。

「俯瞰」は「俯瞰する」という使い方が代表的ですが、「俯瞰撮影」「俯瞰的」など、他の言葉と一緒に使われることも多いです。

「包括的に眺める」「眼下に見下ろす」などの類語や、「微視的」などの対義語、「long shot」などの英語表現がありますので、併せて覚えておきましょう。

（武田麻希）

※画像はイメージです