「お祈り申し上げます」の使い方とは? 正しい意味や言い換え表現
ビジネスシーンなどで利用される「お祈り申し上げます」という言葉。少し大げさな印象もありますが、どんな使い方が適切なのでしょうか。今回は、語彙解説が得意なライターの律さんが、「お祈り申し上げます」の意味と使い方、言い換え表現を解説します。
メールや手紙などでよく見かける「お祈り申し上げます」という言葉。ビジネスシーンでは定番フレーズの1つですが、「祈る」と聞くと少々大げさなイメージを感じる方が多いはずです。
そもそも「お祈り申し上げます」とは誰に何を祈っているのでしょうか。今回は「お祈り申し上げます」の意味や適切な使い方を具体的に紹介します。
「お祈り申し上げます」の意味とは
「お祈り申し上げます」の意味は何なのでしょうか。また誰に対して何を祈っているのか。「お祈り申し上げます」の意味や敬語の種類について解説します。
お祈り申し上げます
相手によいことがあるように祈っている、ということを表明する言い回し。祈る内容は相手の健勝や健闘、あるいは、冥福などであることが多い。
(実用日本語表現辞典)
「お祈り申し上げます」には、相手の健康や幸福を始め、ビジネスでは会社の発展や商売繁盛、活躍を願っていますという意味があります。
「祈る」の言葉から宗教的なイメージを連想するかもしれませんが、宗教的な意味はありません。
「お祈り申し上げます」は謙譲表現
「お祈り申し上げます」とは「祈り」に尊敬表現の「お」と、相手に対してへりくだる「申し上げる」を合わせた謙譲表現です。
「申し上げる」は「言う」の謙譲語で、「お祈り申し上げる」「お待ち申し上げております」など「お(ご)~~申し上げる」とすることで、相手への敬意を表す補助動詞として使われます。
ただし、「お祈りを言わせていただきます」のようには使いません。ここでいう「お祈り申し上げます」は「言う」の意味ではなく「する」の謙譲表現となります。
「お祈り申し上げます」の使い方(例文つき)
「お祈り申し上げます」は文中で使う場合と、口語で使う場合の2つのパターンが存在します。ここではそれぞれの場合を詳しく紹介します。
「お祈り申し上げます」を文中で使う場合
文中で「お祈り申し上げます」を用いる場合は、メールや手紙などの締めの一言に使われることが多いです。
文章の締めくくりに、会社の活躍や発展、相手の健康や幸福を祈る際の定番フレーズとして使われています。また他にも、何か不幸があった時に、相手を気遣う一言として添える場合もあります。
例文
・貴社の益々のご発展を心よりお祈り申し上げます。
・皆さまのご多幸をお祈り申し上げます。
・新天地での益々のご活躍をお祈り申し上げます。
・新事業の成功を心よりお祈り申し上げます。
・本年もより一層のご支援を賜りますよう、心よりお祈り申し上げます。
「お祈り申し上げます」を口語で使う場合
口語で「お祈り申し上げます」を用いる場合は、スピーチの締めとして使われることが多いでしょう。主に新年会や忘年会、結婚式など、改まった席で活用できます。
また、「お祈り申し上げますとともに○○」のように使われる場合もあります。
例文
・最後になりますが、皆さまのますますのご活躍をお祈り申し上げます。
・お2人の人生が素晴らしいものになりますよう、心からお祈り申し上げます。
・御社のますますの発展をお祈り申し上げますとともに、今後とも何卒よろしくお願いいたします。
・新店舗も活気にあふれますようお祈り申し上げます。
・この度は誠にご愁傷さまです。ご冥福をお祈り申し上げます。
「お祈り申し上げます」の類義語
「お祈り申し上げます」は便利なフレーズである一方、むやみやたらに用いると業務的な印象に。そのため、状況や相手に応じて言葉を使い分けるのがポイントです。
ここでは「お祈り申し上げます」に代わる別の表現を紹介します。
祈念
・最後になりますが、皆さまのますますのご活躍をお祈り申し上げます。
・お2人の人生が素晴らしいものになりますよう、心からお祈り申し上げます。
・御社のますますの発展をお祈り申し上げますとともに、今後とも何卒よろしくお願いいたします。
・新店舗も活気にあふれますようお祈り申し上げます。
・この度は誠にご愁傷さまです。ご冥福をお祈り申し上げます。
「祈念」は「祈り念ずる」を意味しており、「お祈り申し上げます」と同様に目上の人などに使います。
「申し上げます」が連続してしまうなど、不自然さを避けたい時に使うのが良いでしょう。
例文
・御社のますますのご発展を祈念しますとともに、本年もなおいっそうのお引き立てを賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
・皆さまのご健康とますますのご活躍を祈念して、締めのあいさつとさせていただきます。
「お祈り申し上げます」に対する返答
ここでは「お祈り申し上げます」を言う側ではなく、言われた(手紙やメールをもらった)場合の返答について解説します。
基本的には「感謝とお返しの気持ち」を丁寧に伝えるのがポイントです。
発展や活躍に対する返答
当たり障りのない返答は「ご連絡ありがとうございます。○○様におかれましても、ますますのご発展とご活躍をお祈り申し上げます」とするのが良いでしょう。
自分が言われた時と同じように、相手の発展や活躍を願う気持ちを伝えます。
健康に対する返答
健康に対する「お祈り申し上げます」に対しては、相手の体を気遣う気持ちを伝えます。
相手の立場や身体の状況にもよりますが「お心遣い感謝します。○○様もどうぞご自愛ください」とするのが一般的です。
就職の不採用に対する返答
不採用通知、いわゆる「お祈りメール」が届いた場合、特にこちらから返答しなくてもマナー違反にはあたりません。
ただし最終面接までいった場合や、採用担当者にお世話になった場合は、簡潔に返信するのも良いでしょう。その場合は感謝の気持ちを述べた後で、今後の抱負を伝えるのがポイントです。
例えば、「選考結果につきましては残念ではありますが、謙虚に受け止め、今後の就職活動に活かして参りたいと思います。末筆ながら貴社のますますのご発展を心よりお祈り申し上げます」のように、短い文章でまとめましょう。
故人の冥福に対する返答
自分が遺族の立場で声を掛けてもらった場合は、まずは感謝の気持ちを丁寧に伝えましょう。返答の仕方は「恐れ入ります」「痛み入ります」「ご丁寧にありがとうございます」が適切です。
また「ありがとうございます」だけではなく「ご丁寧に」「ご親切に」などを直前につけると、さらに丁寧さが伝わります。
「お祈り申し上げます」の英語表現
「お祈り申し上げます」を海外の取引先や目上の人に伝えるにはどうしたら良いのでしょうか。ここでは「お祈り申し上げます」を英語で伝える際のフレーズやポイントを紹介します。
英語では主に「wish」(望む・願う・祈る)が用いられます。しかし自分から見た相手の立場や状況に応じて使い分けるようにしましょう。
例文
・I wish your company will have many more successful years.
(貴社のますますのご発展をお祈り申し上げます)
・I wish you all the best.
(ご健勝をお祈り申し上げます)
「お祈り申し上げます」を正しく使おう!
今回は「お祈り申し上げます」の意味や適切な使い方を具体的に紹介しました。これまで「お祈り申し上げます」を何となく使っていた方にとっては、より親しみのあるフレーズになったのではないでしょうか。
「祈る」という言葉が入っているからといって大げさなイメージを持つ必要はありません。「お祈り申し上げます」には相手を思いやる気持ちが隠されているので、ビジネスシーンはもちろん、手紙やメールでも積極的に使ってみましょう。
(律)
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