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【心理学】学習性無力感とは? 具体例と対処法

高見綾(心理カウンセラー)

「学習性無力感」とは、努力しても結果が出ない場合、「何をしても意味がない」と無気力になり、頑張れなくなってしまう状態のこと。会社や組織にもそんな状態のメンバーや上司がいませんか? なぜそのような問題を抱えてしまうのでしょうか。心理カウンセラーの高見綾さんに、学習性無力感の意味や具体例、対処・対策方法を解説してもらいます。

努力をしてもうまくいかない状態が続いた結果、「何をしても意味がない」と無気力になってしまう学習性無力感。

仕事やプライベートなどで、何をやってもうまくいかないと感じている方もいるのではないでしょうか?

そこで今回は、学習性無力感の意味や具体的な事例について解説します。また、克服方法についても紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

学習性無力感(Learned helplessness)の意味は?

まずは、学習性無力感の意味や概念を見ていきましょう。

学習性無力感とは「無気力になって頑張れなくなる状態」

学習性無力感(Learned helplessness)とは、努力しても望むような結果が得られない状況が続いた結果、何をしても無意味だと諦めが生まれて無気力になり、頑張れなくなってしまう状態をいいます。

セリグマンの犬による学習性無力感の実験

この言葉は、アメリカの心理学者マーティン・セリグマンが提唱した概念です。セリグマンは、さまざまな状況下で犬に電気ショックを与えるという実験を行いました。

(A)電気が流れているが、スイッチを押すと電気ショックを回避できる箱

(B)電気が流れており、何をしても電気ショックを回避できない箱

この2つの箱を用意したところ、(A)の犬は、スイッチを押すことを学習しました。しかし(B)の犬は、何をしても電気が止まないことから行動を起こさなくなりました。

その後、(A)(B)両方の犬を、別の箱(C)に入れました。

(C)は、電気が流れるけれども、低い仕切りの向こう側に行けば電気ショックを回避できる作りになっています。すると、(A)の犬は回避行動を取りましたが、(B)の犬は何もしないまま耐えている結果となりました。

研究結果により実証されたことは?

この実験結果により、自力で状況を変えられないことが続いた場合は、「どうせ次も何をやってもダメだろう」という無力感を学習するとセリグマンは考え、これを「学習性無力感」と呼ぶようになりました。

その後、同じような実験を人間でも行い、人でも同じことが起こり得ることを実証しています。

学習性無力感はどういう状況で現れる? 具体例を紹介

学習性無力感とはどういう状況で起こるのでしょうか。具体例を以下に挙げてみます。

企業・職場などビジネスシーンにおける事例

元々は、仕事に積極的に取り組んでいた社員のケースです。

明るく元気な性格で、ミーティングにおいても積極的に発言をしていました。ある時、社運を賭けたプロジェクトチームに選ばれたことで、本人は成果を出そうと意欲に燃えていました。

ところが、いざプロジェクトが始まってみると、提案した内容がなかなか採用されません。リーダーからは「もうちょっとよく考えて。こんなんじゃダメ」と頭ごなしに否定されます。

何がダメなのかを考えてやり直し、もう一度提案しますが、「全然ダメ。分かってない」と却下されることを繰り返していました。

リーダーから全く認めてもらえていないと感じ、次第に、「何を提案しても無意味だ」と思うようになります。

そのうち、指示されたことしか取り組まなくなり、受け身の姿勢に変化します。以前はよく笑っていましたが、今は表情がなくなって、時折ため息をつくようになりました。

周りからはやる気がないと見なされ、「あの人はサボってる」と思われるようになり、「私が頑張っていたこと、誰にも分かってもらえないんだ」と感じてますます落ち込むようになります。

繰り返し否定されることが原因で無力感が強まる

こんなふうに、ビジネスシーンにおいては、何をしても認めてもらえない、うまくいかない、失敗を指摘される、否定されるなどが繰り返し起こることで、無力感が強くなっていきます。

学習性無力感を克服するための対処法

では、学習性無力感を克服するにはどうすればいいのでしょうか?

ここではその対処法をいくつか紹介します。

(1)やる気のない自分を受け入れる

頑張れなくなってしまった自分がいても、責めないことが大切です。

なぜやる気がなくなったのか、それはいつから続いているのか、過去を少し振り返ってみます。思い当たることがあれば、「そりゃあ、あんなことがあれば、やる気なくなるよね!」と思ってあげましょう。

学習性無力感という心理状態があることを認識し、そんな自分を否定せずに受け入れることが回復への第一歩になります。

(2)自分を承認する

学習性無力感に陥る前は、試行錯誤しながら頑張っていたはずです。

努力したことを「意味がない」とばっさり切り捨てるのではなく、「あんなに頑張れたのはすごいよ!」「私、めちゃくちゃ試行錯誤していたよね」と、自分の頑張りをしっかりと認めてあげましょう。

今回は思うような結果に結びつかなかったかもしれませんが、条件が変われば成就することもあるはず。真剣に取り組んだプロセスは承認してあげたいですね。

参考記事はこちら▼

「私なんて」と思いがちな癖を直し、自己肯定感を上げるために日頃からできる方法を紹介します。

(3)信頼できる人に相談する

燃え尽きている時は、「今までのやり方ではうまくいかない」というサインです。

「自分の思うようなやり方でやりたい」と思う人もいますが、自分のやり方にこだわりすぎてしまうと、うまくいかない状況が続いて無気力状態から抜け出せなくなってしまうことも。

そんな時は、自分以外のやり方からヒントを得ましょう。信頼できる人に相談してみることがおすすめです。第三者から見れば、案外あっさりと解決の糸口が見つかる場合もあります。

また、人に話すことで、自分の状況を客観的に見られるようになり、考え方の癖にも気付けるでしょう。

(4)「70%で合格」という意識を持つ

責任感が強くきっちり取り組もうとする人の中には、完璧にやり遂げたいと考える人もいます。少しのミスでも「うまくいかなかった」「失敗した」と捉えて落ち込んでしまうと、学習性無力感に陥りやすくなります。

そこで、「そこそこ(70%くらい)できれば合格!」という意識を持つように切り替えてみましょう。「最初からうまくいかなくて当たり前」「ミスしちゃったけど、またやり直せばいいよね」とハードルを下げることで、無力感から解放されていきます。

(5)小さな目標を立てて実践する

できるだけ小さな目標を立てて実践を積み重ねていきしょう。面倒くさく感じてしまう時は目標が高すぎる状態なので、「これくらいならできそうだ」「物足りないな」と思えるようなレベルであることが望ましいです。

そして少しずつ実践して、「私にはできる」という感覚を身につけていきましょう。「よくできた、私!」と都度自分を褒めることも忘れずに。自分にできることを積み重ねていけば、自己効力感が回復していきます。

参考記事はこちら▼

自己効力感の意味や概念、自己肯定感との違いや自己効力感を高める方法などを紹介します。

学習性無力感に陥ったら、自分を責めずに受け入れよう

努力してもうまくいかないことが続くと、「何をしても無意味だ」という学習性無力感に陥ることが分かりました。

無気力状態が続いていたとしても、そんな自分を責める必要はありません。そういう心理があることを認識して「あんなことがあったらしょうがないよな」と自分を受け入れてあげましょう。

そうやって自分を労うことが、学習性無力感を克服する大きな第一歩となります。

(高見綾)

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