「ご高覧」の意味は? 正しい使い方と例文・類語
「ご高覧いただければ幸いです」この意味を正しく理解できますか? 「ご高覧」という敬語の正しい使い方や例文を解説。類語や言い換え表現も紹介します。
「ご高覧」という言葉をプライベートで使う機会は多くありませんが、ビジネスシーンではよく使用される言葉の1つです。
なんだか堅苦しいニュアンスを感じルこの表現。どんな意味合いを持つのか、どんな相手なら使ってOKなのか、正しく理解できていないという人も多いはずです。
ここでは「ご高覧」の意味や正しい使い方、使用の際の注意点を解説します。役立つ例文も紹介しますので、使い方に悩んだ時の参考にしてください。
「ご高覧」の意味とは?
「ご高覧」は“ごこうらん”と読み、他人が見ることを敬って言う言葉です。
「見てください」の尊敬語は「ご覧ください」ですが、「ご高覧」はさらに丁寧な言い回しになります。
「高」は相手への敬意を表し、「覧」は高いところから見渡す、広く見るという意味があります。また「ご」は尊敬の接頭語であり「高覧」をさらに丁寧に表現したものです。
ご高覧の正しい使い方
「ご高覧」はどんな時に使用するのが正しいでしょうか。使用する場面や相手について紹介していきます。
主に文章で使用する
「ご高覧」は書き言葉であり、手紙やメール、ビジネス文書等で使用するのが一般的です。
書類や商品、案内状などを送付する際に使用し、履歴書の送付時に添えることもできます。
口頭での使用も間違いではありませんが、大げさに捉えられるため、通常は「ご覧ください」などと表現することが多いでしょう。
目上の人や上司に使用する
「ご高覧」は、目上の人や上司、顧客など、敬意を示しながら相手にも目を通してほしい時に使用します。
しかし、比較的身近な上司に「ご高覧」と使うのは少し不自然に感じます。堅苦しく、慇懃無礼(※)な印象を与えてしまうかもしれません。
距離感や役職の高さ、関係性等を加味して使う相手を選びましょう。身近な人に使用する場合は「ご覧ください」が適切かもしれません。
※慇懃無礼……言葉や態度が丁寧すぎて、かえって無礼であること。
「ご高覧」を使った役立つ例文集
「ご高覧」は相手に見てもらう時だけでなく、見てもらった後のお礼や感謝を述べる時にも使えます。ここでは「ご高覧」の役立つ例文を紹介します。
(1)相手に見てもらいたい時
目上の人や取引先、顧客に添付した資料などを見てもらいたい時に使用する「ご高覧」の例文です。
・こちらの商品をご高覧ください。
・何卒ご高覧いただければ幸いと存じます。
・弊社のパンフレットをお送りいたします。ご高覧賜りますようお願い申し上げます。
・資料を送付いたしますのでご高覧賜りますようお願いいたします。
・詳細につきましては、同封の資料をご高覧いただきますようお願い申し上げます。
・私の経歴につきましては、同封の履歴書をご高覧いただきますようお願い申し上げます。
(2)相手にお礼や感謝を述べる時
発表会や展示会など自社の商品や制作した作品を見てもらった時、または足を運んでもらった時のお礼の言葉としても「ご高覧」は使用できます。以下に例文を紹介します。
・ご高覧いただきありがとうございました。
・ご高覧くださった皆さまに心より感謝申し上げます。
「ご高覧」を使う時の注意点
相手を敬いながら見てもらいたい旨を伝える「ご高覧」という言葉。
かなり目上の相手や重要な取引先への言い回しに困った時に使える表現ですが、使用する上で気をつけたいポイントもあります。
確認や意見を求める時には不十分
「ご高覧」には「見てほしい」という意味しか含まれていません。
そのため確認や意見、返事がほしい場合は、調べてもらいたい意味合いの「ご精査」や、考えてもらいたい意味合いの「ご検討」などに置き換えるといいでしょう。
くどい言い回しに注意する
「ご高覧」は堅いニュアンスを持つ言葉であるため、他にも同様な印象の敬語を重ね過ぎたり、頻出したりするとくどい言い回しに聞こえてしまいます。
言葉を丁寧に伝えたい気持ちは分かりますが、行き過ぎると大げさに聞こえたり、しつこく思えてしまったりするもの。
伝える相手や場面に合わせて、良い塩梅を調整したいところです。
「ご高覧」の類語
続いて、「ご高覧」と意味が似ている類語を紹介します。言い換え表現に迷ったら、こんな言葉が使えるかもしれません。
ご清覧(ごせいらん)
「ご清覧」は「手紙文などで見ること」を敬った表現で、目上の人への尊敬語です。
「ご高覧」の方が一般的には多く使われますが「ご清覧」も同じように格式高い意味合いがあります。主に自分が書いたものを見てほしい場面で使用します。
【例文】
・私が執筆した作品をぜひご清覧いただきたく、お願い申し上げます。
・手紙をお送りしましたのでご清覧のほど、よろしくお願いいたします。
ご賢覧(ごけんらん)
「ご賢覧」は、相手が見ることを敬った尊敬語です。
目上の人や取引先などにも使用でき「ご覧いただく」よりも丁寧な表現になります。「ご高覧」とほぼ同じように使える言葉です。
【例文】
・展示会についての感想をメールにて送付いたしました。ご賢覧ください。
・ご賢覧のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。
ご笑覧(ごしょうらん)
「ご笑覧」は「笑ってみてください」という意味を持ち、へりくだった表現です。
主に自分の作品や仕事などを人に見てもらう時に使用します。「お恥ずかしいですが、どうぞ見てください」といったニュアンスを含めたい時には、ご笑覧を使用しましょう。
【例文】
・写真をブログで紹介していますので、ぜひご笑覧ください。
・拙稿ながら5月号に掲載されましたので、よろしければご笑覧ください。
ご照覧(ごしょうらん)
「ご照覧」は「神仏がご覧になること」を意味し、神々や王など高貴な身分の人へ使われる表現です。古典や古文書に見られまずが、一般的に使用するのは不自然でしょう。
【例文】
・神々もご照覧あれ。
ご一読(ごいちどく)
「ご一読」は、一度さっと目を通して内容を把握してほしい時に使う言葉です。
会議などで資料を配布された際によく聞く言い回しではないでしょうか。ビジネスシーンで使用され、目上の人にも使える表現になります。覚えておくと便利でしょう。
【例文】
・お渡しした資料をご一読いただければと思います。
・ご一読いただけましたら幸いです。
「ご高覧」と間違いやすい言葉
「ご高覧」は見ることをお願いする言葉ですが、以下に紹介する言葉は見る以外の作業も促す表現です。最後に「ご高覧」と間違えやすい言葉を紹介します。
ご査収(ごさしゅう)
「ご高覧」が見ることを意識した表現であるのに対し、「ご査収」は中身や内容を確認した上で受け取ってほしい時に使用する言葉です。
ビジネスシーンでは見積書や請求書といった文書、または上司に確認してもらいたい書類などを渡す際に多く使われています。
「査収」に尊敬の意を表す接頭語「御(ご)」を付けたのが「ご査収」です。
「査」は「調べる」「同意する」という意味が含まれています。そのため「査収」は「同意した上で受け取る」とも言えるでしょう。
【例文】
・見積書を送付いたしましたので、ご査収くださいますようお願い申し上げます。
・お手すきの際にご査収くださいませ。
ご精査(ごせいさ)
「ご精査」は、よく調べる、正しいか確認するという意味です。資料や報告書などが正しいかよく確認してほしい時、この言葉を添えて依頼するといいでしょう。
【例文】
・資料を添付しております。ご精査のほどよろしくお願いいたします。
・ご精査くださいますようよろしくお願いいたします。
ご高閲
「ご高閲」は、文書や書類に誤りや不備がないか確かめてほしいことを敬って伝える言い回しです。「閲」には「改めて調べる」という意味が含まれます。
目上の人に対し、自分が作成したものをチェックしてほしい時などの依頼で使用します。
【例文】
・ご高閲いただければ幸いです。
ご回覧
「ご回覧」は、書類などを読み終わった後で次の人に回してほしい時に使用する言葉です。
「回覧」は「順に回して伝えて見る」という意味を持ち、グループやチーム内で情報を共有する際に使用します。
「ご高覧」と意味は似ていますが「ご回覧」は複数の人に対して見てほしいことを伝える表現になります。
【例文】
・資料をお渡しします。ご回覧ください。
・案内を皆さまでぜひご回覧ください。
ご観覧
「ご観覧」は、動物園・水族館・博物館・演奏会など実物見物の時に使える表現です。これらの場面で、実際に目にしたことがある人もいるのではないでしょうか?
「見る」という意味では「ご高覧」と同じですが、書類などの文書を見てほしい時には使用しないため、「ご高覧」とは置き換えられません。
【例文】
・公演をご観覧いただき、非常にうれしく思っております。
・快適にご観覧いただけるよう以下のことをお守りください。
「ご高覧」の使い方を覚えよう
「ご高覧」を使う機会は限られていますが、意味や使い方があいまいでは、いざという時に正しく表現できません。
似ている言葉や間違いやすい言葉との違いを知っておけば、どんなシチュエーションでも正しい言葉を使用できますね。
言葉を覚えて、適切な場面で使いましょう。
(大西みき)
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