悪口を言わない人になりたい! 3つの対処法
悪口を言わない人になるには、どうしたらいいのでしょうか。悪口を言わない人になりたいあなたへ、そのヒントを紹介。心理カウンセラーの笹氣健治さんが、悪口を言う人・言わない人の心理を分析します。
「あの人は決して他人の悪口は言わない。だから、周りの誰からも好感を持たれている。でも、私から見ると、逆に信用できない。悪口を言わない人ってつまらないし、少し怖い。いったい何を考えているのかしら?」
あなたはこのように思ったことがありますか? このモヤモヤした気持ちの正体を一緒に考えてみましょう。
今回は、悪口を言わない人の心理を紐解き、言わない人になる方法について考えていきます。
人間はなぜ悪口を言うの? 悪口を言う理由
そもそも人はなぜ悪口を言うのでしょうか?
人間が悪口を言う瞬間リスト
私たちが悪口を言いたくなるのは、例えば、誰かが次のような行為をした時です。
・自分だけサボって楽をしていた
・ずるをした。抜け駆けをした
・自分勝手な行動をして他人に迷惑をかけていた
・誘っても乗って来なかった。ノリが悪い
・話しかけたら無視された。冷たい態度を取られた
・表向きはいい人を装っているが、裏の顔がある
・正論やきれいごとばかり言っている
・自分のことを棚に上げて他人を注意している
悪口を言うのは「怒りを鎮める」ため
こんな人を見ると、ついその人の悪口を身近な人に言いたくなってしまうものです。
この時に湧き上がっているのは、その人に対してムカついたり、イラっとしたりしている気持ちです。その気持ちの根底にあるのは、怒りの感情。
人は、怒りを覚えると、それを鎮めようとして無意識にさまざまな反応を示します。
身近な人にその人の悪口を言うのも、その反応の1つです。
悪口を言うことによって、自分の気持ちを共有したり、自分の考えが間違っていないことを確認したりしようとするのですが、それが怒りを鎮めることの役に立ちます。
悪口を言うのは、実は、怒りを鎮めるための行為だったのです。
悪口を言わない人の方が本当は腹黒い?
悪口は怒りを鎮めるために役に立つと言いましたが、では、なぜ全く悪口を言わない人がいるのでしょうか? そこには、腹黒さや裏表があるからなのでしょうか?
必ずしも腹黒いわけではない!
私は、必ずしもそうは言い切れないと考えています。
もちろん中には、優等生ぶって人前で絶対に悪口を言わない人もいるでしょう。そして、裏ではネットの掲示板に匿名で批判コメントを書いていたりする……。
こういう人がどれくらいいるのか分かりませんが、このことに対して「腹黒い」とか「裏表がある」と決め付けてしまうのは、ちょっと厳し過ぎる気がします。
怒りを解消する手段は「悪口」以外にもある
人間であれば、多かれ少なかれ誰かに対して腹が立つ時があるもので、その怒りを鎮める方法は、他人に迷惑をかけないのであれば、人それぞれ自由でいいはずです。
自分は悪口で怒りの解消をしているからと言って、他人にも同じ方法を押し付けたり、そう決め付けたりしなくてもいいと私は思うのです。
悪口を言わない人の心理
他人に対してムカついたり、イラっとしたりする時、身近な人に悪口を言って怒りの解消をする人がいる一方で、誰にも一切悪口を言わない人がいます。
悪口を言う人にとってみれば、なぜ悪口を言わないのか疑問に思うかもしれませんね。
悪口を言わない人は、なぜ言わないのでしょうか? その主な理由として、次のような心理が考えられます。
(1)悪口を言う人を反面教師としている
悪口を言う人が周りにいると、その人をまねて自分も悪口を言うようになる場合がありますが、逆に、それを反面教師にする場合もあります。
周りの人が頻繁に悪口ばかり言うのを聞き、それにうんざりして、「私は決して悪口を言うまい」と心に決めたのかもしれません。
(2)悪口を言って注意された経験がある
悪口を言ったら、友人から「他人の悪口を言うなんてサイテー」と言われた。親、先生、先輩などから、「他人の悪口を言ってはいけません」とたしなめられた。
このように、悪口を言ったことを注意された経験があると、我慢するようになる場合があります。
(3)自分をさらけ出せない
悪口を言うのは自分の本音を伝える行為。よほど信頼できる相手でなければ言いづらいものです。
悪口を言わない人は、身近に安心して何でも言える人がいないのかもしれません。
対人関係で慎重だったり、警戒心が強かったりするために、自分をさらけ出すことができないのです。だから悪口を言わない可能性も考えられるでしょう。
(4)悪口を聞くのが嫌い
悪口を言った当人は怒りが鎮まってスッキリするからいいのですが、悪口を聞かされた側は、どう対応していいか困る時があります。
自分がそういう経験をしている人は、自分が誰かの悪口を言って聞かせることに申し訳なさを感じます。そのため、自分は悪口を言わないように心がけていると考えられます。
(5)怒りをうまく解消している
悪口を言うのは、怒りを鎮めるための行為だと前述しました。つまり、別の方法で怒りを鎮めることができれば、言う必要がないことになります。
悪口を言わない人の中には、他人に対して湧いてきた怒りの感情をうまく解消する方法を心得ている人もいます。それがどのような方法なのかは、次に詳しく説明したいと思います。
悪口を言わない人になりたいあなたへ
ここまで読んできて、「悪口を言わない人のことが理解できた。できれば私も悪口を言わない人になりたい」と思われた方もいるかもしれません。
そこで最後に、悪口を言わないで済むにはどうすればいいか、他人に対してムカついたり、イラっとしたりした時の怒りの解消法をご紹介しましょう。
ちなみに、他人に怒りを覚える典型的なケースとしては、大きく分けて次の3つがあります。
ケース1:他人が悪いことをしたのを見聞きした
ケース2:自分がひどいことをされた
ケース3:人として許せない言動をしているのを見聞きした
それぞれ怒りのポイントが異なりますので、解消法も変わります。3つのケース別に簡単に解説しますので、ぜひ参考にしてください。
ケース1:他人が悪いことをしたのを見聞きした
・サボって楽をしている
・ずるをした
・抜け駆けをした
・自分勝手な行動をして他人に迷惑をかけている
こういった人に対しては、誰だって怒りを覚えて当然です。全面的にその人に非があるのは明白であり、その人は自分の行為を反省して改めるべきです。
対処法は「自分の問題と切り離し事情を認める」
ただし、それはその人の問題であって、こちらの問題ではありません。そこで、次のように考えてみることをおすすめします。
「本来、悩むべきは誰だろうか?」
他人の問題によってこちらがストレスを抱えるのは、何とも理不尽なことです。その人の問題を引き受ける必要は全くないのですから、これは自分が悩むべき問題ではないと、しっかり切り離して考えましょう。
このように考えを変えた上で、その人に対して寛容になれたら最高です。
例えば、次のように考えることもできるかもしれません。
「この人はこの人なりの事情があって、サボったり、ずるしたり、抜け駆けをしたりしたのかもしれない」
「自分勝手な行動をせざるを得なかった理由が何かあるのかもしれない」
「他人の迷惑を考えられないのは、心に余裕がなく、精神的に未熟な人なのかもしれない」
人が行動する時には、その人なりの事情があるものです。もちろん悪いことをやってはいけないのですが、人は聖人君子ではありません。時には悪いことをしてしまうのも仕方がないと考えられないでしょうか?
それを認めることができて、「まあ、仕方ないのかな」と思えたとしたら、怒りも薄らいでいくでしょう。
ケース2:自分がひどいことをされた
・誘っても乗って来なかった
・ノリが悪い
・話しかけたら無視された
・冷たい態度を取られた
こういった素っ気ない対応をされたために、ついその人の悪口を言いたくなることもあるかと思います。この時に怒りの感情が湧いてくるのは、自分を拒絶されたような感覚になったことが原因だと考えられます。
せっかく仲良くしようと思って声をかけたのに、その態度はないだろう。私はとても傷付いた……。
これはある意味、逆恨みとも言えますが、私たちは往々にして自分が大切に扱われなかったことで激しい怒りを覚えるものです。クレーマーが「店員の対応が悪い」と言って激怒するのも、これと同じ心理です。
それくらい激しい怒りですから、なかなか解消するのは至難の業です。
対処法は「行動で怒りを発散」
激しい怒りの解消として手っ取り早く有効な方法は、行動で怒りを発散することです。
具体的には“悪口”を言うのではなく、誰かに“その体験”を話して共有し、じっくり聞いてもらいながら自分の気持ちを受け止めてもらう行為は、怒りを鎮めるためには有効です。
あるいは、大声で歌ったり、強度の高い運動したりをするのも同様の効果があります。
そうやって怒りを鎮めて冷静になれたら、自分の視点を広げる考え方をしてみるといいでしょう。
「他人は私を喜ばせるために生きているわけではない」
「人はあくまでも自分の都合で生きているものだ」
この言葉を聞いて、どのようなことをお気付きになったでしょうか?
私は良かれと思って声をかけたのに、残念ながら、相手は私を受けいれなかった。人はそれぞれ自分の人生を生きているのだから、仕方がないことだ。
この現実に気付いて、相手の立場も認めようかなと思えたら、それはとても素晴らしいことです。
ケース3:人として許せない言動をしているのを見聞きした
・表向きはいい人を装っているが、裏の顔がある
・正論やきれいごとばかり言っている
・自分のことを棚に上げて他人を注意している
こんな人を見たら、頭に来て誰かに悪口の1つも言ってやりたくなるものです。
この時の怒りの背景にあるのは、失望の気持ちです。
「この人にはこうあってほしかった」といった期待があったのに、現実はそういう人ではなかった。その時、期待が強ければ強いほど、失望は大きくなります。
対処法は「期待を押し付けない」
しかし、よく考えれば、これは期待の押し付けだと言えます。
人は皆、自分の人生観や価値観を持っていて、それに従って生きています。だから、他人が自分の期待通りに行動しないのは当然のことであり、そこに失望を感じる必要はないはずです。
それなのに、なぜ自分の期待を他人に押し付けてしまうのでしょう?
その期待は、常に自分が大切にしている人生観や価値観に根差したものである可能性があります。
自分の人生観や価値観は、知らず知らずのうちに、皆が遵守すべき規範となって、他人にも強要してしまうことが起こります。
ですから、誰かの悪口を言いたくなったら、「私はこの人に何を期待していたのだろうか?」と自問自答してみてください。
そうやって、自分の期待を押し付けていることに気づいたら、次のような現実を思い出してください。
「私は、私の期待によって相手に失望し、怒りを感じている。つまり、怒りの発端は私にある」
「私が期待を持つのは、その人にとって良かれと思うから。でも、残念ながら私の期待が誰に対しても常に正しいと限らないのは、仕方がないことである」
「私の期待は、あくまでも私が作り出したものである。だから、私が期待を取り消すことができる」
このように考えられたら、私はなぜそんな小さなことにこだわっていたのだろうか、と思えてくるかもしれません。
自分の期待を他人に押し付けるのをやめることは、その人の人生を尊重することでもあります。他人の人生への介入はやめて、自分がすべきことに集中できるといいですね。
貴重な時間を悪口に費やすのはもったいない
悪口を言うのは怒りを鎮めるためであり、気持ちが晴れる行為でもあるので、つい言いたくなるのは仕方がないことです。
とはいえ、悪口を言ってばかりいるのは、自分の貴重な時間を浪費することにもなります。
他人は他人。自分は自分のすべきことをする。そう割り切ることができて自分が自由に使える時間が増えたら、あなたはその時間を何に使いたいですか?
(笹氣健治)
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