「お大事に」はどう使う? 意味や例文・言い換え表現を解説
誰かが病気やけがをした時、「お大事に」と声を掛ける機会もあると思います。しかし「お大事に」とは、目上の人や取引先に対しても使える表現なのでしょうか? 今回はコミュニケーションアドバイザー®の松岡友子さんに、「お大事に」の意味や使い方、言い換え表現などについて教えてもらいました。
病気になった時、けがをしてしまった時、私たちは「どうしてこうなってしまったんだろう」という悲しさや「どうして自分だけが」という孤独感にとらわれてしまいます。
そんな時、周囲の人たちから「お大事に」と声を掛けられると、ほっと安心できるものです。
今日はそんな「お大事に」という言葉について考えてみましょう。
「お大事に」の意味
「お大事に」の意味を知るために、辞書で調べてみましょう。
だいじ【大事】
(1)大切なさま。重要なさま。
(2)粗末に扱わないよう気をつけるさま。価値を認めて注意深く扱うさま。大切。
[「お大事に」の形で、相手の健康を祈る挨拶の言葉として、病床を辞去したり、手紙文の末尾に書き添えたりする場合に用いる]
(『大辞林 第四版』三省堂)
つまり、「お大事に」には「相手の健康を祈る」という思いと、「病人やけが人を気遣う」という思いが込められた言葉である、ということが分かります。
「お大事に」を目上の人に使うのは避ける
「お大事に」は、「お大事になさってください」を短くした省略形です。
本当なら「お大事になさってください」と最後まで言うべきところを途中までしか言っていないということは、時には相手に対して失礼な印象を与えかねません。
そのため、目上の方へ「お大事に」と使用することは控えた方が無難でしょう。
日本語には、他にも省略形の言葉が多く存在します。例えば「ただいま」も「ただいま戻りました(帰りました)」を短く省略したものです。
これらの省略形は、一般的に使われていますので、一概に全てが失礼とは言えません。
ですが、やはり目上の方や取引先、改まった席などでは、きちんと敬意を表した言葉を使えるように、省略しない正しい言い方を知っておくことはとても大切です。
なお、「お大事にしてください」という言い方もありますが、目上の人に対しては「お大事になさってください」の方がより良いでしょう。
なぜなら、「なさる」は「する」の尊敬語で、「お大事にしてください」より「お大事になさってください」の方が、より丁寧で敬意が高い表現だといえるからです。
「お大事に」を使う上でのポイント
「お大事に」や「お大事になさってください」は、対面においてはもちろんのこと、電話やメールでも使うことができます。
締めの言葉としてさりげなく添えることができれば、とても洗練された、気遣いのできる人という印象を残すことができるでしょう。
使用に際して意識したいのは、「お大事に」があいさつ言葉である、ということです。
あいさつ言葉は、時に儀礼的で機械的と受け止められてしまうことがあります。
そのため、あいさつ言葉を使う時には、相手を思いやるプラスアルファの一言をぜひ添えてみましょう。
どのような言い方があるのかは、次項の例文も参考にしてみてください。
「お大事に」や「お大事になさってください」はどんな時に使えるのか?(例文付き)
では、「お大事に」や「お大事になさってください」はどのような場面や状況で使うことができるでしょうか。
前段でも触れた通り、「お大事に」は「お大事になさってください」の省略形です。
そのため、親しい間柄に対しては「お大事に」と略して使用しても問題ありませんが、目上の人や取引先などに対しては、「お大事になさってください」と使うのが良いでしょう。
ここでは、「お大事に」「お大事になさってください」を使える場面と合わせて、例文を紹介します。
相手の健康や体調を心配して祈る時
例文
・体調は大丈夫? お大事にね。
・まだまだ寒い日が続きます。どうぞお体お大事になさってください。
病気やけがを負った人を励まし気遣う時
例文
・1日も早いご回復(ご快復)をお祈りいたしております。どうぞお大事になさってください。
「お大事に」の言い換え表現
「お大事に」「お大事になさってください」と似た意味を持ち、言い換えられる表現がいくつかあります。
「ご自愛ください」
相手の健康や体調を心配して祈る言葉として、手紙やメールでは「お大事に」よりもよく使われる表現です。
「ご自愛」は、「自分の体を大事にする」という意味ですので、「お体ご自愛ください」と二重表現をしないよう注意しましょう。
また、「ご自愛の上、ご活躍くださいますようお祈りしております」などと続けるのも気が利いています。
例文
・寒さ厳しき折、どうぞご自愛ください。
「大切に」
こちらも、相手の健康や体調を心配して祈る言葉として用いられる表現です。
「大事」と「大切」に大きな意味の違いはありませんが、「お大事に」がよく使われるのに対して「お大切に」と声掛けすることはあまりありません。
また、「御身(おんみ)お大切になさいますよう、心からお祈り申し上げます」という表現も、洗練された印象を与えることができるでしょう。
例文
・年度末でお忙しいことと存じます。くれぐれもお体大切になさってくださいませ。
「お大事に」と言われた時はどう返事をする?
もしも「お大事に」と言われた時には、相手の気遣いに素直に感謝の気持ちを表すことが大切です。
自分の体調を心配して気遣ってもらった場合には、以下のように伝えましょう。
例文
・ありがとうございます。○○様もどうぞご自愛くださいませ。
・お互いかぜをひかないよう、注意して過ごしましょう。
また、病気やけがに際して声を掛けてもらった場合には、お礼に加えて、その後の状況や回復の具合などを報告し、相手を安心させる一言を添えましょう。
必要に応じて、「ご迷惑をお掛けいたしました」というおわびの言葉を書き添えるのを忘れないようにしましょう。
例文
・ご丁寧なお見舞いのお言葉、誠にありがとうございました。ご心配をお掛けしましたが、おかげさまですっかり回復いたしました。温かいお励ましに、とても力づけられました。
「お大事に」は頑張る仲間への思いやり
いかがでしたか?
「お大事に」は「お大事になさってください」の省略形で、相手の健康を祈ったり、病人やけが人を気遣ったりする気持ちが込められていると紹介しました。
私たちは心身について健康であるのが当然であるかのように日々過ごしてしまい、ついつい無理をしたり注意を怠ったりしがちです。
そして病気やけがを抱えた時、健康の価値を改めて知ることになり、健康維持に努めようと気持ちを新たにするものです。
「お大事に」という声掛けは、そんな私たちが、頑張っている仲間を思いやる気持ちを表している言葉なのかもしれません。
(松岡友子)
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