「ご足労」の意味は? 正しい使い方と言い換え表現
ビジネスシーンで一度は聞いたことがある「ご足労おかけします」という言葉。なんとなく使っている方も多いですが、正しい意味を理解していますか? 今回は株式会社櫻井弘話し方研究所の櫻井弘さんに、注意点や言い換え表現と併せて、「ご足労」について解説してもらいます。
ビジネスシーンのやりとりでよく見聞きする「ご足労おかけします」「ご足労いただきまして、ありがとうございます」という表現。
よく聞く言葉だからこそなんとなく使いがちですが、その意味や使い方についてしっかり理解しているでしょうか?
ここで正しい意味や使い方について押さえておきましょう。
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「ご足労」という言葉の意味
まずは、「足労」の意味を辞書で確認しましょう。
そくろう【足労】
足をつかれさせる意で、人に足をはこばせること。
(『広辞苑 第六版』岩波書店)
以上のことから、「足労」の元の意味合いとしては、「来てもらう」となります。この言葉を敬語表現にしたものが「ご足労」です。
そこから転じて、自分たちの要求・要望のために、こちら側へわざわざ足を運んでくださることに対する感謝・敬意を表す言葉となります。
よって、ビジネスシーンでよく使われる「ご足労おかけしますが」という表現は、「わざわざ足を運んでくださることに対しての感謝」を表す言葉であると覚えておきましょう。
「ご足労」の使う時の注意点
前段でお伝えした通り、「ご足労」は相手にわざわざ足を運んでくださることに対しての感謝を伝え、敬意を示す表現となりますが、実際にはどのように使うのでしょうか?
まずは、注意点を確認していきましょう。
「ご足労」は相手に来てもらうことが確定してから使う
「ご足労おかけしますが」や「ご足労いただき」という言葉は、いつ使うのかのタイミングが重要です。
例えば、相手が出向いてくれることを承諾していない時点で「ご足労をおかけしますが」と言ってしまうと、来てもらうことが前提となり、上から目線の押し付けがましい印象を与えかねません。
こちらに来ていただくことを意味する言葉であるが故に、その事実が確定するまでは使わないようにしましょう。
目上の人にも使えるが、自分に使ってはいけない
基本的に社外の人に使うことが多い言葉なので、もちろん目上の人に使うことも問題ないです。
ただし、相手を敬って使う表現ですので、「御社にご足労させていただいてもよろしいでしょうか?」といった使い方はしません。
「ご足労」の使い方(例文付き)
次に、ご足労の使い方を確認していきましょう。
クライアントに現場で進捗状況を確認してもらう時
例文
・本日はご足労おかけし、大変恐縮でございます。
上司に結婚式に出席してもらう時
例文
・ご足労いただくことになりますが、当日は何卒よろしくお願いいたします。
相手に手間をかけさせてしまった時
例文
・お客さま、ご足労をおかけして大変恐縮ではございますが、ご予約は来週の月曜日でお伺いしています。
「ご足労」の言い換え表現
ビジネスシーンで使うことが多い言葉だからこそ、言い換え表現も知っておくと便利です。
以下に紹介します。
「ご来訪いただき」
「訪ねてくる」という意味を持つ「来訪」に、接頭語の「ご」を付けた表現です。
例文
・お足元の悪い中、ご来訪いただきありがとうございます。
「お運びいただき」
「ご足労」と同様に、相手に出向いてもらった時に使える表現です。
例文
・遠路はるばるお運びいただき、大変ありがたく存じます。
「お手間」
相手の時間や労力を割いてしまった時に使える表現です。
例文
・お手間おかけしますが、お待ちしております。
言葉選びは相手への配慮
その言葉を発する人の「人となり」がでるのが、「言葉遣い」です。そして、言葉を選ぶ時の重要なポイントは、相手への配慮ということに集約できます。
正しい意味を知り、あなたの心が伝わる表現を心掛けたいですね。
(櫻井弘)
※画像はイメージです
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