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「俯瞰」の意味は? 使い方や例文・言い換え表現を解説

前田めぐる(ライティングコーチ・文章術講師)

ビジネスシーンで「俯瞰的に考える」などと使われることも多い「俯瞰」という言葉。その意味を正しく説明できますか? 今回はライティングコーチの前田めぐるさんに、「俯瞰」の意味や使い方、言い換え表現を紹介してもらいました。

「俯瞰的に」という表現は、ビジネス書などでよく見かけます。考え方や視野の話だろうと想像はつきますが、具体的にどのようなことを指すのでしょうか?

「俯」も「瞰」も常用漢字ではなく、響きもちょっと難しい感じがする「俯瞰」という言葉。早速調べてみましょう。

「俯瞰」の意味や「鳥瞰」との違い

ここではまず「俯瞰」の意味と、似た言葉「鳥瞰」との違いはあるのかどうか、解説します。

「俯瞰」の意味は「高いところから見下ろすこと」「全体を上から見ること」

「俯瞰」は「ふかん」と読みます。

次のような意味があります。

ふかん【俯瞰】
高いところから見おろすこと。
全体を上から見ること。鳥瞰。
(『広辞苑 第七版』岩波書店)

それぞれの漢字の意味も調べてみます。

【俯】フ・ふ-す・うつむ-く
顔やからだの正面を下のほうへ向ける。うつむく。ふす。

【瞰】カン・み-る
みる。高所から見下ろす。
(『例解新漢和辞典』三省堂)

以上のことから、「俯瞰」とは空から地上を見下ろす鳥のような視点で、全体を広く見渡すことを意味していると考えられます。

なお、物理的に見下ろす場合と、比喩として見下ろす場合があります。

「俯瞰」と「鳥瞰」は同じ意味

「俯瞰」と同じく「鳥のように見下ろす」という意味で「鳥瞰」という言葉があります。

ちょうかん【鳥瞰】
鳥が見おろすように
高い所から広範囲に見おろすこと。
転じて、全体を大きく眺め渡すこと。
(『広辞苑 第七版』岩波書店)

辞書からも分かるように、「俯瞰」と「鳥瞰」は全く同じ意味です。

ただし、「鳥瞰」には「鳥」という文字が入っているため、どちらかといえば物理的なニュアンスの方が強く感じられます。

そのため、比喩的に使う場合には「俯瞰」の方がよく使われているのです。

「俯瞰的に見る」は誤用?

ビジネスシーンなどで耳にすることもある「俯瞰的に見る」という表現。

「俯瞰的に見る」という言い方は重複表現ではないか、と思うかもしれません。重複表現とは、「後で後悔する」のように2つの言葉の意味が重なることです。

前述の意味から考えれば、「俯瞰的に」は「見下ろすように」「全体を見渡すように」という意味です。

「見る」を加えた「俯瞰的に見る」は、「見下ろすように見る」「全体を見渡すように見る」という意味になります。

この意味合いからも分かるように、「俯瞰的に」は「視野」を表す表現です。そのため、重複表現だから誤用であるとまではいえないでしょう。

ただし、無理に「見る」を使わずに済むのであれば、他の表現にする方が無難でもあり、すっきりするでしょう。

例えば、物理的に見下ろす場合には、そもそも「俯瞰する」だけで「全体を見下ろす」という意味が成立します。

また、比喩として使う場合には、「見る」よりも「俯瞰的に考える」などの方が良い場合もあります。

特にビジネスシーンでは、なるべくシンプルに言葉を使う方が洗練された表現になるはずです。

「俯瞰」はどんな時に使えるのか?(例文付き)

さて、実際に「俯瞰」という言葉は、どんな場面でどのように使われているでしょうか?

例文とともに、以下に掲げます。

高い所から低い所を見渡す場合(物理的な意味で使う時)

物理的に、高い場所から低い場所を見渡す場面で使います。

例文

・ようやく頂上にたどり着き、街を俯瞰した。

・私たちのチームは俯瞰図を見ながら、さらに緻密な計画を練った。

全体を見渡すように、広い視野で考える場合(比喩的な意味で使う時)

全体を見渡したり、広い視野で考えたりという場面でも使うことができます。

例文

・難問に直面した時は、俯瞰して考えると答えを見つけやすいものだ。

俯瞰的にデータを読めば、確かに全国で感染が拡大しています。

・彼がチームリーダーに選ばれたのは、俯瞰力が高いからだと思う。

「俯瞰」の類語・言い換え表現

ビジネスでよく「俯瞰」という言葉が使われるのは、働く上でそれだけ大切な要素だと考えられるからです。

しかし、似たような意味の言葉を知っていれば、プレゼンテーションなどの場面で何度も同じ言葉を使わずに済むでしょう。以下に紹介します。

「眺め遣る」

「ながめやる」と読みます。

「俯瞰」が「高いところから見下ろすこと」を意味しているのに対し、「眺め遣る」は「遠くへ視線を移すこと」を意味しています。

例文

・彼は、電車の窓から眺め遣るようにして「やっと来れたね」とつぶやいた。

「見晴らす」

「眺め遣る」と同じく、「遥か遠くまで広く目をやること」を意味します。

例文

・こうして見晴らせば、空はどこまでも続いています。

「展望」

「遠く広く見渡すこと」という意味。比喩で使うこともできます。

「俯瞰」が「今」を捉える見方であれば、「展望」は展望台からはるか遠くを見るようなイメージで「未来」を捉える見方です。

例文

・子どもたちのためにも、今こそ未来を展望した街づくりを進めるべきです。

「鳥の目で」

比喩的に「鳥が見るように」という意味で、「鳥瞰」「俯瞰」と同じように使えます。

例文

鳥の目で市場を眺め、虫の目で消費者と向き合う。

「大局」

「全体の動き」という意味。

「大局的」は「俯瞰的」とほとんど同じ意味です。

例文

大局的に考えれば、今になって計画を中止する理由が見つかりません。

「俯瞰」の対義語

「俯瞰」と反対の意味を持つ言葉を紹介します。

「仰視」

「ぎょうし」と読みます。「仰ぎ見る」の意。物理的な意味における「俯瞰」の対義語です。

例文

・2階から「おーい」と呼ぶと、彼女はこちらを仰視した。

「近視眼的」

「近いところばかり見て、大局の見通しがないこと」を意味します。

例文

近視眼的な考え方では、この難局を乗り越えることはできないだろう。

「限局」

「内容や意味を狭く限定すること」を意味しています。

例文

・本日は、まず経済的影響に限局してのご意見をお伺いしたい。

「狭い視野」

「視野が狭く、対局的に考えられないこと」を意味します。

「俯瞰」とは逆に、ネガティブな印象の強い言葉です。

例文

狭い視野から抜け出せた先にこそ、未来を開く発見があるはずです。

「虫の目」

「鳥の目」が「俯瞰」する時の視点であるのに対し、「虫の目」は対象に近づいて観察する時の視点を意味します。

例文

・マーケッターが市場を眺める際には、鳥の目と虫の目の両方が必要です。

俯瞰して考えながら、視点を自在にスイッチすること

「俯瞰」の物理的な意味と比喩的な意味について解説しました。

ビジネスでは、比喩的な用法の方がよく見受けられます。

「今」と「未来」は常につながっているはずですが、時に人は「今」だけに気を取られてしまいがちです。まずは、ぐるりと今を俯瞰して、物事を考えたいものです。

そして、鳥の目と虫の目で、見渡したり近くを見たりと、自在に視点を切り替えることができれば、それだけ考え方の幅も広がるというものでしょう。何らかの課題が生じても、解決策が見つけやすくなるはずです。

(前田めぐる)

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