コンドームが破れた! 妊娠の確率と2つの対処法【医師監修】
セックス中にコンドームが破れた時、どう対応すればいい? 「妊娠してしまうかも……」と焦る前にやるべきことを産婦人科医・医学博士の宋美玄さんが解説。対処法に従って、冷静に適切な対応をしましょう。
セックスの最中にコンドームが破れた……! そうなるとそれまでの雰囲気も一変。望まぬ妊娠の可能性が高まったことで、不安になったり戸惑ったりしてしまいます。
セックスの時にコンドームが破れたり、外れたりすることは、じつはよくあること。大切なのはそうした時の適切な対処法を知っておくことです。
セックスの時、コンドームが破れたら妊娠する?
セックスの時にコンドームが破れてしまったり、しっかり付けていたはずなのに外れてしまったりしたからといって、即、妊娠するわけではありません。1年間まったく避妊をしなかった場合でも、妊娠する確率は85%です[*1]。
「85%もあるじゃないか!」と思うかもしれませんが、言い換えれば15%の人は妊娠しないということになります。
お互いの年齢などを考慮すると、妊娠の確率がもっと低くなる場合もあるでしょう。もちろん1回のセックスで妊娠するケースがないわけでもないですが、まずはコンドームが破れたことでパニックにならず、落ち着いてその後の対処を考えましょう。
ちなみに「コンドームが破れたことに気付いて、射精前にセックスを中断したらセーフ」と思うのは間違い。精子は精液だけに含まれるわけではありません。
性的興奮を感じて勃起した段階から分泌される、通称「ガマン汁」と呼ばれるカウパー腺液にも精子が含まれます。したがって、射精をしていなくても妊娠する可能性はあります。
コンドームが破れた時の緊急措置
そもそもコンドームは妊娠する確率が15%程度あるとされています[*1]。コンドームだけで確実に避妊することは難しいのです。より確実に避妊したいという場合は、経口避妊薬(ピル)を併用するとよいでしょう。
ピルとは、エストロゲンとプロゲステロンの2種類のホルモンを配合した薬で、女性が毎日1錠ずつ服用する必要があります。避妊効果だけでなく、子宮体がん、卵巣がんの発症減や子宮内膜症の緩和、月経困難症の軽減にも効果があり、PMS(月経前症候群)や生理痛に悩まされることが少なくなるという効果も期待できます。
服用開始1~2週間くらいまでは気持ちの悪さや少量の不正性器出血を伴うことがありますが、ほとんどの場合、徐々に落ち着きます。服用をやめれば妊娠が可能です。コンドームが破れたり外れたりすることを心配する前に、もっと確実な避妊方法を利用しておくことが大切といえます。
ですが、事前に対処ができないままコンドームが破れて避妊に失敗してしまったという場合には、望まぬ妊娠の可能性を大きく下げられる緊急措置的対策があります。
(1)緊急避妊薬(アフターピル)
緊急避妊薬(アフターピル)は、避妊をしなかった、または失敗したセックスの後でも服用することで、妊娠の確率を下げることができる薬です。セックスの後、72時間以内に服用することで、妊娠を9割程度、阻止することができるとされています[*2]。
しかしアフターピルを使うにはいくつか注意すべき点があります。
まず原則として婦人科の受診が必要ですが、すべての婦人科がアフターピルの処方に対応しているわけではありません。あらかじめアフターピルの処方が可能な婦人科を探せる検索システムなどを利用して、近くの病院を探しておくのがよいでしょう。
また、費用面のハードルも高めです。保険適用外で自費診療となるため、8千円から1万5千円程度が必要です(ただし性被害にあった場合は、警察に届けると無料で処方してもらえます)。
そのほか、アフターピルを避妊方法として常用しないこと、1回の生理周期の中で何度も服用しないことにも注意が必要です。
(2)銅付加IUD
銅付加IUDとは、子宮内に挿入、装着して使用する避妊具(IUD)に銅を加えたものです。装着することで受精卵が子宮内膜に着床するのを防ぐ働きがあり、避妊をせずに行ったセックスの後、120時間(5日)以内に銅付加IUDを挿入すると、緊急避妊の方法としてほぼ100%の効果があるといわれています[*3]。
緊急避妊のために装着したIUDをそのまま挿入しておけば、避妊の効果は数年間持続します。
ただし、銅付加IUDを挿入するには、婦人科の受診が必要です。かかる金額はアフターピルよりも高額で、婦人科によって異なりますが3~4万円ほど必要になります。また、銅アレルギーがある人には挿入することができません。銅付加IUDを置いていない医療機関も多いです。
副作用については、生理に影響が出ることがあり、月経以外の性器出血、腹痛などの症状が現れることがあります。
アフターピルと銅付加IUD、どちらも緊急措置的避妊方法で、さまざまな注意点があるため、妊娠をしたくない時には継続的に低用量ピルを飲むようにしたほうがよいでしょう。
コンドームが外れたり、破れたりしないために気を付けること
また、コンドームの装着や使用で不安にならないためには、正しい扱い方を知っておくことが必要です。
コンドームは男性主体の避妊方法ではありますが、男女ともに正しい知識を持っておくことで、より安全なセックスをすることが可能になります。コンドームを使用する際は、以下のことに気を付けましょう。
(1)正しく装着する
まずはなによりも、コンドームを正しく装着することが大切です。
そのため、使用の際はコンドームの向きをしっかりと確認しましょう。コンドームには表裏があり、それを間違えるとコンドームをペニスの下まで巻き下ろすことができず、正しく装着ができません。いつも途中で外れてしまうという人は、もしかしたら裏表を逆に付けている可能性があるかも。あらためて確認しておきましょう。
それと、装着の際は必ず先端をつまみ、その部分にたまった空気を抜いてからペニスにかぶせてください。
先端に突起があるタイプはその突起部分を、そうでないタイプのコンドームでもペニスの先端があたる部分をつまんで、空気を抜きましょう。そうしないとペニスとコンドームの間に入った空気が摩擦を起こし、コンドームが破れてしまう原因にもなります。
(2)傷を付けないように注意する
薄くデリケートなコンドームは、ちょっとした傷がきっかけで破れてしまうこともあります。爪を立てたり、ピアスや指輪などのアクセサリーに引っかけたりして傷を付けないように気を付けましょう。
コンドームを個包装から取り出す時も要注意です。個包装を破く際にコンドームを傷付けてしまうことは少なくありません。コンドームを個包装内で片側に寄せ、十分なスペースを作ってから開封し、取り出すようにすると、比較的傷が付きにくいでしょう。
(3)重ねて装着しない
「コンドームを2つ重ねて使うと避妊効果が高まる」という都市伝説がありますが、それはまったくのでたらめです。むしろ重ねてしまうことで摩擦による破損の可能性が高まり、避妊効果が下がってしまうことにもつながります。必ず1枚ずつ使いましょう。
(4)ちょうどよいサイズを選ぶ
コンドームには、男性のペニスに合わせたさまざまなサイズがあります。コンドームのサイズが合わず、窮屈だったりゆるかったりする場合、セックス中に外れてしまうことがあるかもしれません。
人それぞれ、サイズの合ったコンドームを使用するほうが、セックスをより快適に楽しめるはずです。いくつか試して、ぴったりのものを選んでみましょう。
(5)潤いを足したい場合は潤滑ゼリーを使用する
コンドームがうまく装着できない時、滑りを良くしようとハンドクリームやオイルなどの油分を使用する人がいるかもしれません。しかし油分はコンドームの大敵です。劣化を招き、破れやすくなる原因を作ってしまいます。
潤いを足したいときは潤滑ゼリーを使用しましょう。潤滑ゼリーはひとつ持っておくと、女性側の体調の影響などで潤いが足りない時にも使えて便利ですよ。
(6)使用期限を守る
コンドームには使用期限があります。期限が過ぎたコンドームは劣化し、破損のリスクが高まるため、要注意です。使用期限は商品やメーカーによって異なります。
お店で買ったばかりのコンドームを使用するのであれば心配はいらないかもしれませんが、しばらく自宅で保管していたコンドームを使用するといった場合はとくに、必ず期限を事前にチェックしておきましょう。使用期限はパッケージの側面や裏面などに書かれています。
(7)直射日光や高温多湿を避けて保管する
保管の際は、直射日光の当たる場所や高温多湿の環境下にコンドームを置かないよう、気を付けましょう。コンドームを劣化させる原因となります。そのほか、防虫剤などの揮発性物質もコンドームの品質に影響を与えるので、避けて保管しましょう。
(8)持ち歩く際は容器に入れておく
「コンドームを財布に入れて持ち歩く」という人もいますが、その方法では摩擦によってコンドームが破損する可能性が高まります。持ち歩く場合は、破損や劣化のリスクが少ない容器に入れておきましょう。缶入りのコンドームなども売られているので、そうした容器に入ったものを購入するのもよいですね。
なお、言うまでもないかもしれませんが、コンドームは必ず使い捨てしましょう。一度使ったコンドームは破損のリスクが増し、避妊の効果が低下する可能性があります。コンドームの再利用は絶対にNGです。
コンドームだけに頼らず、より確実な避妊を目指しましょう
コンドームは手軽に入手することができるうえ、避妊+性感染症の予防効果もあるという頼れる避妊方法です。ただし、コンドームだけでは確実な避妊にはならず、破れてしまったり外れてしまったりというリスクもあります。
コンドームだけに頼らず、女性主体でできる避妊方法も併用することで、より安全で安心なセックスをしていきましょう。
(監修:宋美玄、取材・文:山本尚恵)
※画像はイメージです
参考文献
[*1] 平成22年度厚生労働科学研究費補助金 望まない妊娠防止対策に関する総合的研究「反復中絶防止を目的としたカウンセリング技術の開発に関する研究」パンフレット p6
http://www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2017/02/24b8aaafa1f584a840da5d0fbc600d8f.pdf
[*2]「病気がみえる vol.9 婦人科・乳腺外科 第4版」p97
[*3] 子宮内避妊器具(IUD) – 22. 女性の健康上の問題 – MSDマニュアル家庭版
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/22-%E5%A5%B3%E6%80%A7%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E4%B8%8A%E3%81%AE%E5%95%8F%E9%A1%8C/%E5%AE%B6%E6%97%8F%E8%A8%88%E7%94%BB/%E5%AD%90%E5%AE%AE%E5%86%85%E9%81%BF%E5%A6%8A%E5%99%A8%E5%85%B7-iud