お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

「ご愁傷様です」の意味と正しい使い方

松岡友子(コミュニケーションマナーアドバイザー)

葬儀の場では遺族の方に失礼のないよう十分に注意する必要があります。そこで今回は「ご愁傷様です」の正しい使い方についてコミュニケーションマナーアドバイザー®の松岡友子さんに教えてもらいました。

私たちは、喜ぶ人にかける言葉はわりと多く知っています。なぜなら私たちは悲しみを人前に出さない傾向があるため、楽しそうな人に囲まれて過ごしている時間が多いからです。

悲しむ人を目の当たりにする機会が多くないので、そういう場合に使う言葉を考えることがないのは当然です。

ですが、葬儀はそんな私たちのもとに突然やってきます。

悲しみに暮れている人は、心が敏感になっています。そんな人への一言はもしかしたら心に強く刺さるかもしれない……などと考えてしまうと、「何と言ったら良いのか」と戸惑うことが多いはずです。

「ご愁傷様です」という言葉が持つ意味とは

さて、葬儀に使う言葉で、一般的であるにもかかわらず使い方の難しいものに「ご愁傷様です」があります。

まずは辞書にどのように書かれているかを、もう一つのよく使われる「お悔やみ」という言葉と比べてみましょう。

広辞苑(第7版)には、「お悔やみ(悔み)」は「(1)くやむこと。後悔。(2)人の死を弔うこと。また、弔うことば」とあります。

また、「ご愁傷さま」は「人の不幸に際し、その縁者に同情して言うあいさつの言葉。また、相手の期待外れを皮肉っていう時にも用いる」とあります。

よく見てみると違いが分かります。「お悔やみ」は人の死に限定して使う言葉です。それに対して、「ご愁傷さま」は「不幸に同情する」言葉なのです。

つまり、この場合の不幸は死にとどまらず、本人の望まない不幸全般を指しており、このことが「皮肉」という使い方も呼んでいると考えられます。

「ご愁傷様です」の正しい使い方

このように「皮肉」という使われ方もするためか、「ご愁傷様です」は葬儀の場で使うことのできる正しい言葉であるにも関わらず、使い方が今一つ分からない、使うことに抵抗があるという方も多いようです。

実は筆者も、常にこの言葉だけで十分であるとは思えません。なぜなら、故人やご遺族に対する自分の心からの思いを伝えきれていないと感じるからです。

例文

「ご愁傷さまです」は、前述の広辞苑には「人の不幸に際し、その縁者に同情して言うあいさつの言葉」と書かれています。

あいさつというのは、お互いの状況を確認し、そのあとのコミュニケーション、つまり感情のやり取りをする「きっかけ」の言葉です。ですから、そのあとに「心からの」自分の気持ちを伝える言葉を続けると良いのではないでしょうか。

「この度は誠にご愁傷様です」とあいさつしたあと「心より(謹んで)」お悔やみ申し上げます」「ご冥福をお祈り申し上げます」などと続けます。

目上の方に使う場合には「このたびはまことにご愁傷様でございます」と丁寧語で表現します。

また、言葉は心情を表すものですので、自分にとって使い心地の良い言葉を使うことも大切です。ですから、もし「ご愁傷様です」に抵抗を感じるようでしたら「この度は……心よりお悔やみを申し上げます」と最初にあいさつしても何ら問題はありません。

どのシーンでも、誰にでも使えるのか

相手の身内の不幸を聞いた時、あるいは葬儀でご遺族と短いあいさつを交わすだけなら「この度はご愁傷様です」の一言だけでも良いでしょう。

ですが、可能なら「ご愁傷様です」の言葉の後に、自分の思いを伝える言葉を続けるよう心がけてみてください。そうすれば、相手が上司、友人などどなたであっても、ご遺族と直接言葉を交わす場合に使うことができると思います。

身内に使うのは不自然

ただし、「ご愁傷様です」はあいさつとしては少し他人行儀に聞こえます。あまり身内に使うことはありません。

お悔やみの手紙、弔電、メールでは使えるのか

では、弔電やメールなどに「ご愁傷様です」を使うことは適切でしょうか。

手紙や弔電、メールの場合は省く

お見舞いや弔意を伝える手紙は、緊急時であり相手は取り込み中でもあるため、前文のあいさつを省いていきなり本文から書き出すのがマナーです。

手紙の派生形である弔電やメールも例外ではありません。

とすると、あいさつ言葉である「ご愁傷様です」は使う必要がありません。心のこもったお悔やみの言葉から書き出しましょう。

美辞麗句を連ねた空疎なものにならないよう、また自分の嘆きや悲しみばかりを強調することもないよう、文には工夫が必要です。

「ご愁傷様です」を使用する際の注意点

「ご愁傷様です」を使う時の注意点を見ていきましょう。

(1)死亡原因は聞かない

ご遺族をいたわる気持ちが大切ですので、故人が亡くなった経緯をお聞きするのは控えましょう。

(2)忌み言葉は避ける

「重ねがさね」「返すがえす」などの重ね言葉は忌み言葉ですので使用を避けます。中でも「再び」「くれぐれも」「次々」「なおまた」などはつい使ってしまいがちなので注意が必要です。

(3)遺族へのいたわりの気持ちを忘れない

お悔やみを伝える時、悲しみに暮れるご遺族に対して「どうぞお力落としのないように」「お疲れが出ませんように」などのいたわりの言葉も一緒に伝えると良いでしょう。

ですが、もしも「このたびは、何と申し上げればよいのか……」としか言葉が続かないという場合には、無理に使い慣れない言葉を考えるより、何も言わなくても良いのではないでしょうか。一番大切なのは、ご遺族に寄り添う気持ちを表情で伝えることです。

(4)その他の注意点

また、よく葬儀の際に「大往生でしたね」「天寿を全うされました」と声をかける方がいますが、これらはご遺族が故人に用いる言葉ですので、うっかり口にしてはいけません。

ちなみに、「亡くなる」という言葉は敬語ではなく「死ぬ」という強い言葉を婉曲に表現したものです。ですので「母が亡くなりました」と言うことができますし、「先生がお亡くなりになりました」という言い方も二重敬語ではありません。「死ぬ」の敬語としては「逝去」がこれに当たります。

「ご愁傷様です」と言われた時の返事は?

「ご愁傷様です」などのお悔やみの言葉を言われたら、その気持ちに感謝の意を伝えますが、「ありがとうございます」だけでなく「お心遣い恐れ入ります」という言い回しも身につけておきたいものです。

もちろん気持ちがあふれてしまって言葉にならないという場合には、黙礼だけでも十分気持ちは伝わります。

終わりに

冠婚葬祭の二大イベントである結婚式と葬儀。言葉遣いをはじめとするマナーの意識は、どうしてもハッピーなムードの結婚式の方に向いてしまうかもしれません。

参列者にとって、結婚式と葬儀との大きな違いの一つは準備期間の長さです。「明日結婚式を挙げるから来て」と言われることはまれでしょうし、故人をしのぶ会でない限り「来年6月にお葬式をやるから来て」と招待状をもらうこともないでしょう。

つまり、一般的な葬儀は準備時間がありません。ですから言葉遣いなどのマナーをはじめとして、日ごろから備えておくことが大切なのです。

(松岡友子)

※画像はイメージです

SHARE