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定性的と定量的の意味と違い。使い分けとは

トイアンナ

定性的、定量的、どちらもよく耳にする言葉ですが、意味や違いが分からないという人は多いのではないでしょうか? マーケターでもあるコラムニスト・トイアンナさんに、両者の違いや用い方について、分かりやすく解説してもらいました。

私はマーケティングを専門にして約8年になります。

マーケティングでは、消費者(お客様)の声を聞き、それを商品開発や広告に生かしていきます。その「お客様の声を聞く」段階で登場するのが定性的・定量的データ分析です。

この記事をご覧になっている方は、学生でレポート・卒論と格闘しているか、マーケティングやコンサルティングなど、統計・分析を扱う業務に就いていらっしゃるかと思います。

そこで今回、リサーチの前提知識として必要な定量的データと、定性的データの違いを解説できれば幸いです。

定性的・定量的データの違い

まずは定性的データと定量的データがそれぞれどのような意味で、どう違うかについて、お菓子の具体例を用いながら解説します。

定性的データとは

定性的とは、「質的な」という意味です。数量的に判断することが難しい「心理的にどう感じたか」などを調査する際に使います。

例えば、「このお菓子のパッケージをどう思いますか?」と質問したとしましょう。そこで消費者はこう答えます。

「人目を引きますし、この緑色が好きです。あまり緑ってお菓子のパッケージで見ないですし。ただ、もっと爽やかなグリーンだったらうれしいです」。

「よし、じゃあパッケージを爽やかなグリーンにしよう!」と思ったら、あなたはマーケター失格です。その人が本当に過去、緑のパッケージを買っているのでしょうか。

だとしたら「キシリトールガム」「プリッツ」「たけのこの里」「キャベツ太郎」コレクターじゃないとおかしくないか?

というわけで、深掘りしていくと実はこの消費者、過去に買っているのは真っ赤なパッケージばかりと分かりました。商品パッケージを緑にする案は、ボツになりそうです。

という風に、会話でどんどん深掘りしていくと見えてくる姿は「アンケート調査」ではどうにもならないものです。これを定性的データと呼んでいます。

定量的データとは

定量的データは、逆に「数字で表せる」データです。

例えば、同じお菓子のパッケージの例でも「このパッケージは好感度でいうと何点ですか? 100点満点で教えてください」といったような質問なら、アンケート調査で実施できますし、平均点を出すことも可能です。

定量的データは「集計、計測ができる」データです。

アンケート調査以外にも売上データ、顧客の年代、男女比、住んでいる地域差などは定量的データの具体例として挙がります。

定性的データと定量的データはどんな時に使うもの? 効果的な場面とは

分析においては、定性的・定量的データを両方駆使し、かつ使い分けることが大切になります。

定量的データは数値目標に役立つ

・制作コストを10%削減する
・ミスを月に1回までとする

など、数値目標の設定には定量的なデータがふさわしいでしょう。これが定性的になって「ミスを減らそう」だと何となくふんわりして、やる気が出ないのが分かるはずです。

定性的データは深掘りに効果的

・お客様がこのエステサロンを選ぶ理由は本当に「担当者が好き」だから?
・「結婚したい」と言っているのは本音だろうか、それとも仕事が嫌なだけ?

など、深掘りして真実を探りたいときは定性的データで分析した方が良い結果が得られます。

定量・定性いずれも調査としては行うべきですが、適材適所なわけです。

定性的と定量的を使い分ける方法

では、実際に定性的データと、定量的データをどう使い分けるべきでしょうか。

理想と現実で加味する

現場からぶっちゃけた声をお届けすると、「定量的データはお金がかかるので、定性的データで妥協する」ことが多くあります。

お菓子のパッケージ分析だって、理想は1万人に定量的なアンケート調査を行った上で、さらに絞り込んだ100名に深掘りして定性的データを集め結論を出すことでしょう。多分この調査、1,000万円くらいかかるんですけどね……!!

というわけで、中小企業では定性的データをなるべく多くとって、結論を出さざるを得ません。

ですが理想は定量的に集計して「大まかな傾向」を出し、その中で偏りが少ない人から「定性的なヒアリング」をして結論を選ぶことです。ああ、無限にお金が欲しい。

プロジェクトマネージャ試験に出るリスク分析

さらに、プロジェクトマネージャ試験(情報処理技術者試験の科目)に出てくる定性・定量的データも触れておきましょう。

プロジェクトマネージャ試験では「リスク分析」という項目があります。

リスクとは「あるプロジェクトを進めるときに、不確実になっている部分」です。例えば、お菓子のパッケージを緑にした結果、売れなくなる不確実さなどを「リスク」と呼びます。

あらゆるビジネスでの選択はリスクを伴います。ですが、どう動くか決める前にリスクの大きさを調べる必要があります。

このとき、リスク分析にも「定量的分析」「定性的分析」の2種類があります。前者が数字で測れるリスク、後者が数字で表現できないリスクです。

ここでもマーケティングの調査と同じで予算があれば定量的に「お菓子を1万回作って調べたところ、不良品率が0.02%ある」とリスク分析できます。

が、「サンプルの菓子を1万回作る金はどこにあるっちゅーねん」となるのが大半の現場でして、そうなると「他社からヒアリングしたところ、お菓子の新製品パッケージ制作では工場で不良品が出る可能性がある」と、定性的な調査に止めることも多いものです。

定性的データが「定量的データ」に劣るわけではない!

誤解されやすいですが、定量的データが優れていて、定性的データが劣るわけではありません

そのことを示すため、最初にお菓子のパッケージで「消費者が自分でも本音に気付いていない」事例を出しました。こういった深掘りする調査は、定性的データでしかできません。

定量的データは大きなトレンドをつかむのには適していますが、心理の奥深くや、なぜミスが起きるかを現場スタッフに聞く分析には向いていないかもしれません。

定量データ分析と定性データ分析を使い分けて、ぜひ質の高い論文やレポートを作成してください。

(トイアンナ)

※画像はイメージです

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