二重敬語に注意! 「ご担当者様」の使い方
ビジネスシーンでよく目にする「ご担当者様」という言葉ですが、使い方によっては二重敬語になってしまうので注意が必要です。今回は「ご担当者様」の意味と正しい使い方をビジネスコミュニケーション指導に従事する大部美知子さんに教えてもらいました。
他社宛に文書やメールを送る時、相手の宛名書きで「御中」「様」「殿」「各位」の使い分けを迷うことはありませんか? 会社を代表して送付し、その印象がその後のビジネスにも影響を及ぼしかねないと思うと気を使いますね。
今回は、宛名書きの敬称の使い方で質問が多い「ご担当者様」について、ポイントを確認してみましょう。
「ご担当者様」という言葉が持つ意味
「ご担当者様」はその団体に所属している個人を示す言葉で、相手の名前が分からない、または知っているけど正しいか確証がない場合に「○○様」の代わりに使用します。
「担当者」に敬語の接頭語である「ご」と尊称の「様」が付いた二重敬語のパターンになっていますが、社会的に定着しているため使用可能とされています。
その他、「御担当者様」「ご担当様」という表現もありますが、「ご担当者様」がより一般的です。
どんな場面で誰に対して使うのか
「ご担当者様」は次のようなビジネスシーンで使われます。
(1)文書やメールを送付する時
文書やメールの場合は、原則として宛先の名前を正確に記載する必要があります。
ただ、初めての連絡で担当者の名前が分からない時や、口頭で名前を聞いたためにどのような漢字なのか確証がない時(例えば、「わたなべ」さんには「渡辺・渡部・渡邉」などいろいろな漢字表記があります)は、「ご担当者様」という書き方をする選択肢があります。
(2)電話で相手の呼び出しを依頼する時
電話の場合は先に自分の名前を名乗ってから、「私○○社の○○と申します。恐れ入りますが○○(用件)のご担当者様へお取次をお願いできますか?」のように伝えます。
(3)訪問先で相手への取次を依頼する時
初めての訪問や担当者の名前を忘れてしまった時に、名前を間違えると失礼になるので「私○○社の○○と申します。○○のご担当者様はいらっしゃいますか?」と声がけすると好印象ですね。
ただ、名前が分かり次第、担当者のお名前で呼ぶようにしましょう。
(4)社内で他部署の担当者に連絡を取る時
社内でも自分の所属している部署以外に対して使うことが可能です。
その場合は、「ご」の接頭語を外して「○○担当者様」でも大丈夫です。
「ご担当者様」という言葉の正しい使い方
「ご担当者様」という言葉を使う際は以下の点に注意してください。
(1)二重敬語に気を付ける
「ご担当者様」は相手が1人の場合に使い、宛名が複数人の場合には、「ご担当者様各位」でなく「ご担当者各位」または「ご担当各位」を使います。
「ご担当者様各位」が誤りである理由は、「各位」は「様」と同じ敬称であり、「(ご担当者)様+各位」では二重敬語になるからです。
ただし、「お客様各位」は、「お客各位」と表現すると敬意が伝わらず違和感があるため、例外として使用可能です。
参考「正しい敬称」
ここでビジネスの場面で使用する敬称を整理してみます。誤った敬称を付けたり、二重敬語にならないように気を付けましょう。
・御中→会社や団体
・様→個人名
・殿→役職(課長殿など)や個人名(目上には×)
・各位→所属するメンバーの各個人宛
(会社や団体に対する敬称)
誤)
○○会社様
正)
○○会社御中
(個人に対する敬称)
誤)
総務課長御中
田中総務課長殿(役職だけでは二重敬語ではないが、個人名がつくと二重敬語になるため誤り)
正)
総務課長殿
総務課長田中殿(相手が自分より目上ではない場合)
総務課長田中様(相手が自分より目上の場合)
(所属するメンバーの各個人に対する敬称)
誤)
関係者様各位
正)
関係者各位
(2)分かりやすいように配慮する
「ご担当者様」を使用する時には、「○○株式会社 経理課 ご担当者様」「株式会社○○ 人事部 採用 ご担当者様」など、会社のどこの部署に所属している人なのか(必要に応じて業務担当まで)を指定しておく必要があります。
なぜなら、会社には総務部・営業部・人事部などさまざまな部署がありますから、「○○株式会社 ご担当者様」だけでは、どの部署の担当者宛なのかが分かりません。
受け取った方が内容を確認して届け先を探す必要がないよう、また情報の機密管理の観点からも相手へ迷惑をかけない配慮を心がけることが大切です。
(3)正式名称を使う
会社名は「○○(株)」「(有)○○」などの略式でなく、「○○株式会社」「有限会社○○」という正式名称を使います。
また、「○○株式会社」か「株式会社○○」なのか、社名の位置にも気を付けてください。
「ご担当者様」はあくまで相手の名前が分からない場合に使う表現
いかがでしたか? ポイントを理解すると、使い方に自信が持てるようになりますね。
まとめとして、再度お伝えしたいのは、「ご担当者様」はあくまで相手の名前が分からない場合に使う表現であるということです。一度確認したら次回からは「ご担当 ○○様」を使用しましょう。
(大部美知子)
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