スポットライト症候群って何? 当てはまる人の特徴と対処法
スポットライト症候群とは「キラキラしていた過去を忘れられず不安になること」の例え。引退した芸能人やアイドルが、再度カムバックするのを揶揄する言葉として使われていました。とはいえ、これは私たち一般人にも当てはまること。その特徴について、催眠心理療法士の浅田悠介さんに詳しく解説してもらいました。
「昔はバリバリ活躍していたんだけどなあ」
「もっと輝く場所にいたい」
「あの頃みたいに目立ちたい」
「ちやほやされたい」
「ああ、このままでいいのか不安になる」
そこの貴女、過去のちやほやを思い出しては「これからどうやって生きていこう」と、不安になっていませんか?
もしかすると、それは「スポットライト症候群」かもしれません。
耳慣れない言葉でしょうか。とはいえ貴女の救いになるかもしれません。具体例や当てはまる人の特徴、向き合い方を解説いたします。ぜひ参考にしてください。
スポットライト症候群とは?
まず「スポットライト症候群」の説明をしますね。
ざっくりいうと「キラキラしていた過去を忘れられずに不安になること」です。もう一度表舞台に戻りたくなったり、現在と比べて苦しくなったりするのです。
ちなみに、これは心理学用語ではありません。
週刊誌やネットニュースで使われる、ある種のスラングです。引退したのに、長い年月の果てに再度カムバックする芸能人を「スポットライトが恋しくなったのか」と、揶揄するための言葉だったのです。
転じて「外見や成績や能力が優れていて、ちやほやされていた人物が年月や環境の変化に耐えられずに自分の価値を見失う状態」という使われ方になっていきました。
スポットライト症候群に当てはまる人の特徴7つ
ここではスポットライト症候群の特徴を解説します。貴女に当てはまるものはあるでしょうか。チェックしていきましょう。
(1)注目を浴びるのが快感だ
大きな特徴です。
スポットライト症候群は「目立ちたがり」に表れるものだといえるでしょう。
人前に出たときの高揚感や快感を忘れられないのですね。ある種、ジェットコースターのようなドキドキが体に染み付いているわけです。
その癖は日常生活の中にも表れます。話題の中心になるのが大好物です。ずっと注目を浴びるために、周囲へ惜しみないサービス精神も発揮するでしょう。

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(2)気付けば過去に浸っている
ふと思い出に浸ってしまいます。
過去の栄光。言葉にすればそれまでですが、やはりキラキラした世界を忘れられないわけです。あまりにリアリティがあるために(現実だったわけですから)。それが現在を生きる気力になっている人もいることでしょう。
もちろん過去を振り返ることは誰にだってあります。しかし、何度も何度も思い出に浸ってしまうならば、スポットライト症候群かもしれません。
(3)カムバックしたらどうなるだろうと想像する
上にも関係します。
その過去の想像は「カムバックしたら受け入れてもらえるんじゃないだろうか?(またキラキラできるんじゃないだろうか)」というアイデアにつながりやすいのです。
実際にカムバックする人物もいますよね。結果は人それぞれでしょう。成功するパターンもあれば、失敗するパターンだってあります。戻った先でどうなるか――それは貴女次第でしょう。
(4)若手や目立っている人に嫉妬する
現在、目立っている人に嫉妬するようになります。
特に若手に対して感じることでしょう。自分にない「若さ」を持っているからです──求めてやまないものですよね。
さらに「嫉妬するジャンルは問わない」という特徴もあります。
過去に俳優だった人が、スケート選手に嫉妬することもあります。なぜなら俳優であることよりも「目立っているか」が基準だからです。大ざっぱにいうと、目立っている人物は誰だって「ライバル」というわけです。
(5)マイナスな側面でも目立とうとする
目立ちたがりは過剰に表れます。
その典型例が、わざとトラブルを起こす迷惑行動。エスカレートするわけですね。注目されるために(目立ちたくて)手段を選ばないのです。
しっかり成果を出して注目されるのではありません。もはや無理やり注目を集めようというわけです。
わざとスキャンダルを起こして名前を売る芸能人のように。少々、反感を買うことにもなるでしょう。キラキラした人生を取り返そうと暴走し、悪目立ちすることさえも快感になってしまうのです。
(6)現在の自分が無価値に思える
訳もなく喪失感や虚脱感に襲われます。
今の自分が「本当の自分でない感覚」かもしれません。どこか抜け殻のような感覚が拭えないのですね。
それもこれも「目立つかどうか」が人生の基準だから。
周りにちやほやされない以上、その人生はダメなのです。つまらないものに感じてしまうのです。華やかなパーティーや大勢での飲み会の後、ふと家に戻ったときの寂しさ、あの最上級だというと分かりやすいでしょうか。
(7)過去の友人に会うのを避けがち
キラキラしていたときの友人知人に会うのを避けたくなります。
過去の自分から逃げるように。後ろめたさや恥ずかしさ、コンプレックスを感じるから──感じることになると知っているからです。現在の自分に自信がないわけですね。自分を認められない以上、堂々と顔を見せられないのです。
身近な例でいえば、同窓会に顔を出せない、といった感じでしょう。

あなたのスポットライト症候群度は? 診断で詳しくチェックします。
スポットライト症候群との向き合い方
輝かしい過去が忘れられず、不安や虚無に押しつぶされそうになる。それは、言葉では言い表せないほどにつらい感情かもしれません。
こうした気持ちとうまく向き合うには? いくつかの対処法があります。
(1)もう一度チャンレンジする
もう一度、何かにチャレンジしてみましょう。
キラキラした世界を忘れられないなら。そのエネルギーを生かすべきかもしれません。
同じ分野でもいいですし、昔と違う分野に挑戦してもいいでしょう。多くの経験をしたからこそ表現できることもあると思います。
いつだってチャレンジは賞賛されるべきです。
(2)「変えられること」と「変えられないこと」を整理する
この発想はどんなときにも使えます。
ものごとを「変えられること」「変えられないこと」に分けて考えるのです。そして変えられることがあるのなら変えるように行動しましょう。どんどん挑戦してください。
しかし、反対に、この世には「変えられないこと」もありますよね。時間の流れや、他人の心──こうしたものについては“受け入れる落ち着き”を身に付けるしかありません。
それが人生のコツでもあります。
(3)他人に話をする
悩みや葛藤は他人に打ち明けることで楽になります。
心が軽くなるのです。輝いていた過去を忘れられない、現在の自分に価値を感じられない──といった話をしましょう。素直に。それは貴女にとって真実ですから。真剣さが伝われば、誰も無下には扱いません。
他人に心の内をさらす勇気を持ちましょう。
(4)過去の友人知人と会ってみる
久しぶりの関係に連絡を取ってみましょう。
すんなり受け入れてくれるものです。思い出してもらうのはうれしいから。肩に力を入れていた分だけ、拍子抜けするかもしれませんね。
昔話に花を咲かせるのは悪いことじゃありません。その時代を過ごした人たちと過去を懐かしむことで心を落ち着けましょう。過去と握手して未来に行くわけです。
(5)丁寧に生活をする
目の前の物事を丁寧に扱いましょう。
過去に想いを馳せるとは、現在をおざなりにするということです。
しかし、言うまでもなく人生は常に現在の中にあります。だからこそ現在の自分を大切に扱う(認めてあげる)ことが大事なのです。
生活を整えると心も安定します。部屋の片付け、服や髪のメンテナンス、人間関係を楽しむ──もっと現在を愛してあげましょう。そういうワクワクもあるんですよ。
私たちは失いながらも前に進むしかないんだと思う
スポットライト症候群というと、何か特殊な症状のような気がしますよね。
しかし、これは「過去に戻れないことに心を痛める」という当たり前のことだと私は思うのです。誰だって過去の中に失ったものがありますよね。ふと思い出した記憶に心が締め付けられる日もあります。
「生きる」とは前へ進み続けること
とはいえ私たちの時間は未来にしか残されていません。
生きるとは、その感覚を胸に抱きながら、流れに立ち向かうボートのように、前へ前へと進み続けることなのではないでしょうか。
大事なのはいつだって、ここから何をするかのはずですよ。
貴女に幸せが舞い降りることを祈っております。
(浅田悠介)
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