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生理の量が多い。一般的な量の目安と多くなる原因・対策とは

生理の基礎知識

尾西芳子(産婦人科専門医)

「生理の量が多い気がする……」と心配になったことありませんか? 正常な量の目安とは? また、生理の量が多い「過多月経」の裏に潜む危険な病気や対策について、産婦人科専門医の尾西芳子先生に教えてもらいました。

「なんだか最近生理の量が多い気がする……」と心配になったことありませんか?

自分の生理の量が多いのか少ないのかは、なかなか分からないものですよね。そもそも「正常な生理の量ってどのくらいなの?」と疑問に思っている人も多いのではないでしょうか。

仲がよくても人には聞きにくい生理の量。

正常な量とはどのくらいか、自分の生理が多いかどうかがわかる目安とは? また、生理の量が多い「過多月経」の裏に潜む危険な病気について、産婦人科専門医の尾西芳子先生に教えてもらいました。

健康な女性の生理とは

まずは健康な女性の生理についてわかりやすく解説します。

生理とは

生理とは。生理の仕組みの図解

生理とは、医学用語では「月経」といいます。

女性の体は、生理周期ごとに妊娠に備えて子宮内膜を厚くします。妊娠が成立した時、受精卵のベッドにするためです。

妊娠しなかった場合は、不要になった子宮内膜が剥がれ落ち、出血(経血)として体外に排出されます。これが生理です。

一般的な経血量

医学的には、1回の生理期間に排出される経血量の合計が20~140mlの範囲を「正常」としています。平均の量は37~43mlです。

経血量が20ml以下を「過少月経」、140ml以上を「過多月経」といいます。

・正常な経血量:20~140ml
・過少月経:20ml以下
・過多月経:140ml以上

とはいっても、自分の経血量はなかなか調べられないと思います。このあと、「どのくらいだと量が多いの?」の項で、経血量の目安を紹介します。

一般的な生理期間とは。経血量は何日目が多いもの?

生理は通常、3~7日間続くとされています。平均の日数は5日間です。8日以上続くものを「過長月経」、2日以内を「過短月経」としています。

・正常な生理期間:3~7日
・過短月経:2日以内
・過長月経:8日以上

一般的に経血の量は生理が始まって2日目が一番多く、3日目から減っていくことが多いといわれています。

どのくらいだと量が多いの?

生理の期間中に合計して140ml以上の経血があると「量が多い」、つまり「過多月経」となります。

生理の量はかなり個人差が大きいのでこれも目安にはなりますが、1日に3~4回ナプキンを替える程度であれば、一般的と考えられます。

一方で、「ナプキンを1時間以内に替えないともたない」「夜間、夜用ナプキンで朝までもたない」「昼でも夜用ナプキンを使う日が3日以上続く」などの場合、量が多いことが疑われます。

厳密なものではありませんが、具体的には次のような内容に当てはまるものがあれば、過多月経が疑われるので、受診しましょう。

過多月経のセルフチェック

(1)1時間もしないうちに、昼用ナプキンでは経血があふれてしまう
(2)経血にレバー状の塊が混じっている
(3)タンポンとナプキンなど、2種類の生理用品を併用する必要がある
(4)昼でも夜用ナプキンを使う日が3日以上続く
(5)夜用ナプキンをしていても夜中に起きて交換しないと朝までもたないくらいの出血量がある
(6)貧血と言われたことがある
(7)生理になると、めまい・動悸・疲れやすいなどの症状があらわれる
(8)生理の出血が8日以上続く

海外の文献ですが、昼用の生理用ナプキンに少しだけ血がついていれば1~2ml、半分ぐらいの面積に付いていれば3ml前後、全体的に付いていたら5mlぐらい、夜用の場合は、同様の順で、1~3ml、6ml前後、10~15mlと考えるとする報告があります[*1]。

製品によってサイズや吸収性は異なるのであくまでも目安にはなりますが、これを参考にすると、自分の経血量がだいたいどのくらいか把握するのに役立つかもしれません。

また、過多月経では、生理で多量に血液が失われるため、鉄欠乏性貧血になることがあります。生理になると、めまい・動悸・疲れやすいなどの症状が起こる人も過多月経が疑われます。

経血の量が多い原因とは? 過多月経の可能性

ここまで読んでみて、「もしかすると、自分の生理の量は通常よりも多いのではないか?」と思った人もいるかもしれません。

経血の量が通常よりも多くなる「過多月経」を引き起こす原因とはいったい何なのでしょうか?

経血の量が増える=過多月経の原因

過多月経の原因となるものは主に次の通りです。

(1)ホルモンバランスの乱れなど

ストレス、急激な体重減少、多膿胞性卵巣症候群(PCOS)、肥満、甲状腺の異常などによりホルモンのバランスが乱れると、排卵がなくなり、経血の元となる子宮内膜の増殖サイクルがくるって、過多月経となることがあります。特に若い人や、閉経直前の人に多く見られます。

(2)子宮筋腫

子宮の本体の筋肉の一部にゴムボールのような塊ができる子宮筋腫。30歳以上の女性の20~30%に見られ、珍しいものではありません[*2]。良性の腫瘍で自覚症状のない人もいますが、できる場所によりさまざまな症状が出ます。

特に子宮の中の空洞(内腔)に飛び出したようなタイプ(粘膜下筋腫)の人は過多月経が多くなることが多いです。

(3)子宮腺筋症

子宮本体の筋肉組織の一部に子宮内膜の成分が入り込み、増殖していく病気です。女性ホルモンの影響を受けて組織が増殖し、子宮の一部が分厚く、硬くなっていきます。

30代後半~40代の経産婦(出産を経験した人)に多いとされていましたが、近年は20歳~30歳第前半の出産経験のない女性にも増えています。

過多月経だけでなく、生理痛がひどくなる、生理の期間が長くなるなどの問題も起こってきます。また、進行するにつれて、子宮全体が大きくなっていきます。

(4)子宮内膜ポリープ

子宮の中の内膜がおできのように膨らむのが子宮内膜ポリープで、良性のものです。

子宮の中の空洞部分(内腔)にポリープが飛び出すことで内腔の表面積を増やすため、過多月経、不正出血の原因となります。

(5)子宮内膜増殖症・子宮体がん

子宮の中の内膜が異常に増殖するのが、子宮内膜増殖症です。

子宮内膜増殖症には癌化しやすい「異型細胞のあるタイプ」と「異型細胞のないタイプ」があり、異型がない場合には自然に治癒することもあるので経過を見ることも多いのですが、異型がある場合には子宮体癌に進行するリスクが高いため、手術が検討されます。

なお、病名が似ているので間違われやすいですが、「子宮内膜増殖症」と「子宮内膜症」とは異なる病気です。

(6)その他

稀ですが、血がなかなか止まらなくなる血液の病気や肝臓、腎臓などの病気の影響で過多月経となることもあります。

また、血液が止まりにくくなる薬の使用が原因の場合もあります。

若い女性の過多月経はホルモンバランスの乱れが原因であることが多いのですが、中にはがんや前がん病変など悪性の病気が原因である場合もあります。生理の量が多いかなと感じたら、放っておかず、一度婦人科を受診しましょう。

過多月経の対処法

「不快だけど、とくに症状もないし……」と、過多月経を放っておくとどうなるのでしょうか。

ここでは過多月経を放っておくことの危険性と、病院に行った際の治療法について解説します。

過多月経、放っておくとどうなるの?

過多月経を放っておくと、生理のたびに血液が減少し、貧血になってしまうことがよくあります。

急に貧血になると、めまいや動悸、疲れやすさ、頭痛といった症状に気付きやすいのですが、徐々に貧血になるとこうした自覚症状がなく、自分で気付かないうちに輸血が必要なほど重度の貧血になる場合もあります。

また、子宮筋腫などの子宮の病気が原因の場合、病気そのものの治療をしないと悪化して不妊の原因になったり、がんの場合は転移する可能性もあります。放っておかず、一度婦人科を受診することをおすすめします。

過多月経の治療方法

過多月経の原因やその程度によって治療法はさまざまです。

低用量ピルなどのホルモン剤や止血薬による治療、経過観察、手術などがあります。痛みや貧血といった症状の軽減のために、鎮痛薬、鉄剤が処方されることも。

また、最近では子宮の中にLNG -IUS(レボノルゲストレル放出子宮内システム)といわれる小さな装置を入れることで出血量のコントロールを行うこともあります。

過多月経は放置しないで

「生理の経血量」というのは、人と比べることがあまりないので、「自分が多いのか、少ないのかわからない」という人も多いことでしょう。

知らない間に過多月経による貧血になっていた場合、治療をしたら、勉強や部活、仕事の効率が上がったということもあるそうです。

まずは前半で紹介したセルフチェックを確認してみて、「当てはまるかも!」というものがあったら、医療機関を受診してみましょう。

(尾西芳子)

※写真はイメージです

参考文献
[*1]
Magnay JL, O’Brien S, Gerlinger C, et al. : A systematic review of methods to measure menstrual blood loss, BMC Women’s Health 18:142,
[*2]日本産科婦人科学会:子宮筋腫
http://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=8

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