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女性の管理職になったらすべきこと。活躍のためのポイント

小野勝弘(キャリアコンサルタント)

篠崎夏美

昨今、日本でも管理職に就く女性が増えています。ただ、諸外国と比べるとその割合はまだまだ少ないようです。今回は女性が管理職として輝くための方法について、キャリアカウンセラーの木村俊夫さんに教えてもらいました。

女性管理職の実態

まずは、女性の管理職の実態や「管理職になりたくない」と思う女性たちの本音について見ていきましょう。

女性管理職の実態って?

女性管理職の割合

平成29年7月に厚生労働省から発表された平成28年度雇用均等基本調査によると、女性管理職の割合は、課長相当職以上(役員含)では12.1%、係長相当職以上(役員含)では12.9%、部長相当職では6.5%、課長相当職では8.9%、係長相当職では14.7%という結果です。女性管理職の割合は6%~15%の間で推移していて、その比率は高いとは言えません。ひとつの要因は「M字カーブ」と呼ばれるもの。日本ではいまだに女性は結婚を機に一度仕事を離れ、育児をする流れがあります。管理職として出世するコースに進むのであれば、30代後半から30代前半にかけての打診が多く、仕事か家庭かを選ばざるをえないような状況に陥っており、女性管理職が少ない原因の一部になっていると考えられます。

女性たちはキャリアを築きにくい?

上記に加えて、育休明けに復帰し時短勤務などで働いたとしても、キャリアを築きにくいのではないかと感じます。たとえば子どもが熱を出したら休まなければならない、参観日などのイベントも大切にしたい、ほかにもママ友や実家との関係、近所の目など、いろいろな関係があります。その中で女性たちは疲れてしまい、管理職どころではないという実態もあるのではないでしょうか。本来なら自分のキャリアプランに合わせ、時短勤務でも管理職をしているといった状態が望ましいのかもしれません。しかし、実際は管理職を含めて女性たちが自分のキャリアを積み上げて活躍できていないのが現状です。

管理職になりたくない女性たちの本音

私がよく聞く女性管理職の悩みが「責任が重い」、「仕事が多い」、「部下を使うのが苦手」という3つです。これらの悩みは女性たちが管理職になりたくないと思ってしまう、大きな原因になっていると言えるでしょう。それぞれを詳しく解説します。

責任が重い

自分が果たすべき責任の量と質が増えてしまう状況です。そして自分のやりたいことや大事にしていることが脅かされると、責任が重いと感じやすくなるのかもしれません。本来はどんな仕事であっても責任が伴うもの。特に自分が果たしたい責任であれば、客観的にどんなに負担に思えることでもがんばれたりしますよね。しかし、ほかにも果たす必要のある責任が増えてしまったらどうでしょうか? 本来、自分が果たしたかった責任が果たせないという意味で、ほかから要求される「責任」が重いと感じるかもしれません。

仕事が多い

単純に仕事の量が増えるという面もありますが、それ以上に自分の中の「お母さん像」やキャリアプランとの葛藤で、やらなければならないことが多いと感じるケースをよく見かけます。男性にはわからない悩みや、やらなければならないことも数多くあるでしょう。たとえば、毎日のメイクが既に負担という女性もいます。まわりから暗に求められていることをやりつつ仕事をする必要がありますから、仕事が増えるということはとても大きな負担になるのです。

部下を使うのが苦手

この問題はそもそも管理職経験がある女性が少なく、ロールモデルの不在や異性の部下との接し方がわからないことに端を発しているかもしれません。たとえば、何げない会話の中で常に結婚や子どもの話をされてしまい苦痛に感じるなど、本人からするとセクハラまがいのケースが発生することも……。さらに、女性管理職としては部下に不満を持たれないようにがんばらなければならないし、働きやすい職場を作っていかなければならない。けれど相談できる相手もいない。自分にかける時間も余裕もない。こういった環境の中で、職場の人たちと関わることが難しくなってしまい、部下を使うのが苦手という意識になるのではないでしょうか。

女性管理職の悩み別対処法

次に、女性管理職の悩み別に対処法をご紹介します。

悩み1:責任が重いと感じてしまう

「責任が重い」と感じてしまう悩みに対処するには、まず悩みの本質を明らかにすることが必要。何を大切にしているのか、何を責任と考えているのか、負担に感じている点はどこなのかなどをはっきりさせた上で対処を考えることが望ましいでしょう。以下に主な悩みの原因をまとめました。

期待が重く不安になる

管理職に抜擢される場合、「この人なら管理職ができる」と考えさせる何かがあると思われます。しかし、その考えがあなたにうまく伝わっているとは限りません。抜擢する方のかける期待が、期待される側には単純に重く感じてしまい、増える仕事にただ不安を募らせているというケースもあるのです。

プライベートに支障が出る

責任が重くなることでプライベートに支障が出ると考えている場合もあるでしょう。子どもとの時間や家庭を大切にしている方の場合、責任が重いと感じることで自分の大切にしているものが脅かされるのではないか? という不安が出てくることも。大事にしたいものは家庭であるのに、仕事の上での責任を果たさなくてはならないと考えることによって、重たいと感じてしまいます。

責任のミスマッチ

自分が果たしたいと考えている責任と、仕事で果たさなくてはならない責任との間にミスマッチがあり、悩む場合もあります。たとえば、今までは自分の営業の数字を追うことには責任を持って取り組んでいたが、今後は部下の数字の責任やチームの数字の責任も果たす必要があるといった場合です。やりたいのは営業であって部下の管理ではありませんから、不必要に重い責任が押し付けられたと感じてしまいます。

このように一見同じように思える「責任が重い」と感じるケースでも、その悩みの本質は異なります。だからこそ、まずは負担に感じていることや大切にしていることを明らかにて対処することが必要となります。

悩み2:男性の部下への指導

「アイメッセージ」で伝える

女性管理職が男性の部下をマネジメントする際のコツは、話をよく聞き、アイメッセージで伝えることです。アイメッセージとは「私は○○だ」といった形で相手に伝えること。たとえば、「あなたは遅刻を直すべき」と主張したい場合、「私はあなたの遅刻を見ると毎回心配になる」といった形で伝えましょう。伝える手段はたくさんありますが、それが伝わるかどうかはわかりません。マネジメントの際に大切になるのは相手に伝わること。より抵抗を持たれない伝え方として、私はアイメッセージをおすすめしています。言葉の印象も伝わり方も大きく変わりますよ。

性別に関係なく相手を理解する姿勢を持つ

世間では「男性脳」、「女性脳」というワードが話題になることがありますね。すなわち、男性は論理的で察するのが下手で、女性は感情に敏感で察するのが得意……といった内容です。これが本当に正しいかはわかりませんが、当然ながら男女間の性差はありますし、お互いにわかってくれないと不満を抱えることもあるでしょう。ただひとつ言えるのは、男女という差を除いた場合でも、自分ではない誰かをマネジメントしているという状況は同じ。ですから、相手を理解する姿勢と自分の言葉でうまく伝えていく姿勢は欠かせないはずです。

悩み3:結婚・出産との両立

女性の管理職において、結婚や出産・育児と仕事を両立するコツは、自分の目標を決めることと、決して無理をしないことの2点です。

ライフプランとキャリアプランを立てる

私は女性の管理職の方々には、はじめに可能なら配偶者とともに、ライフプランとキャリアプランを同時に見直してみることをおすすめしています。そもそも結婚や出産、育児といったライフイベントは女性だけのものではありません。プランを立てるというと難しく感じますが、仕事は人生の一部。だからこそ配偶者と共に、自分なりのライフプランやキャリアプランを自分で立てていく必要があるのです。

まわりに助けを求める

恥ずかしがったり、自分の親としての能力に疑問を持ったりすることなく、外部に助けを求めていきましょう。現在は働き方も多様化してきており、親の世代やまわりの人の状況と自分の状況が一致しているということはほとんどありません。たとえば会社に相談して管理職として最低限果たすことを明確にするのもいいと思いますし、困った時にどこに相談するべきかをリストアップしていくことも有効ですよ。このように、将来の自分のために今できることを考えるという姿勢がとても大切なのです。

女性管理職の活躍にはまわりの協力が不可欠

女性が管理職に就くことはまだまだ男性よりも大変な時代。だからこそ、会社内や家族、まわりの人たちのサポートが必要です。そして、働く女性たちも自分の悩みの原因を探り、周囲に援助を求めてみてはいかがでしょうか。社会全体で女性たちをサポートすることで、より多くの女性たちが管理職として活躍できるといいですね。

(文:小野勝弘、構成・篠崎夏美)

※画像はイメージです

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