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泣き寝入りしない! 覚えておきたいパワハラ対策

刈谷龍太(弁護士)

三浦一紀

会社で上司から受ける理不尽ないやがらせなどを「パワーハラスメント」、略して「パワハラ」と呼びます。近年、このパワハラが問題視されており、対策に乗り出している企業も増えています。

しかし、相変わらずパワハラが行われているというケースも見受けられます。上司がパワハラという意識がなく、昔からの慣習のように行われていることも多いようです。

また、上司ということで、さまざまないやがらせを我慢しているという人も。特に女性の場合は、パワハラだけではなくセクハラの問題をはらんでいる場合があります。

この記事では、グラディアトル法律事務所の刈谷龍太弁護士に、パワハラ問題への対策方法などを教えてもらいました。

パワハラをする上司の特徴とは?

パワハラをする上司の特徴として、心理や性格面で他者の人格や差異を尊重することができなかったり、誠実さや正直さに欠けていたり、自分を強く見せたいという自意識過剰な面をもっていたりするタイプが多いといわれています。ほかには、支配欲、臆病、神経質、権力志向を持っている傾向にあります。

パワハラは、上記のような心理や性格に根ざした不安や恐怖心からくる嫉妬や妬みに起因し、しかも自分の行動が有害行為であると認識せずに行われる傾向があります。

ケース別パワハラ対策法

パワハラとひと口に言っても、さまざまなケースがあります。そこで、ケース別のパワハラ対策について解説します。

前提として

前提として、パワハラ全般にいえることですが、何よりも自分の安全・健康を最優先するべきです。ひとりで抱え込まず、家族、友人、専門医、弁護士などの第三者に相談しましょう。相談することで自身の状況を客観的に把握することにつながりますし、精神的苦痛が和らぐことがあります。会社を辞めることになるかもしれないと考えると、相談も難しいと思いますが、辞めるかどうかの前に、まずは自分自身の身体的・精神的な健康を一番に考えるようにしてください。その上で、事後に上司・会社と交渉することを踏まえて、証拠をなるべく早く確保しておく必要があります。

身体的攻撃を伴うパワハラへの対策方法

殴る・蹴るなどの身体的暴力を伴うパワハラの証拠としては、まず暴行結果に対する医師の診断書を取得すべきです。パワハラによる精神的疾患も発病した場合には、その診断書も取得します。また、暴行当時のできる限り詳しい状況を記載したメモを残しておきましょう。さらに、同僚や部下などの面前でパワハラが行われ、目撃者の協力が得られる場合には、その証言も重要な証拠となります。ただし、身体的暴力は刑法上の暴行罪、傷害罪、すなわち刑事事件に該当しうる行為ですので、すぐに警察に被害届を提出することも検討すべきです。

精神的攻撃を伴うパワハラへの対策方法

怒鳴る、罵倒するなどの言葉の暴力を伴うパワハラへの証拠としては、録音データが有用です。上司との会話のやりとりを録音することは、たとえそれが上司に隠して行ったものであっても、正当な目的で用いられる限り、違法な証拠となるものではありません。上司の発言がパワハラと感じられる場合には、ボイスレコーダーを常に携帯しておくのもひとつの手段といえます。精神的疾患発病時の診断書、自身のメモ、目撃者の証言が重要な証拠となるのは、身体的暴力を伴うパワハラの場合と同様です。なお、言葉の暴力もその発言自体が脅迫罪、強要罪、名誉毀損罪、侮辱罪に該当するような場合には、警察への被害届の提出も検討しましょう。

無視をされるパワハラへの対策方法

仕事を与えない、連絡事項を伝えないなど、無視を伴うパワハラの証拠としては、明らかに無視されているといえるものが必要となってくるでしょう。たとえば、自分だけがメールのCCの宛先やグループチャットから外されている場合には、協力者を見つけ、それをスクリーンショットや写真に撮って保存しておきましょう。なかなか証拠に残りづらい態様のパワハラですから、しっかりと証拠を準備しておくべきです。

極端な仕事を伴うパワハラへの対策方法

極端な仕事そのものが直ちにパワハラに該当するわけではないないことに注意が必要です。ただ、達成できないノルマが与えられていたとしても、それを達成できないときに叱責されたり、業務上の不利益を課せられたりすると、違法なパワハラといいやすくなります。したがって、そのような不利益等に関する証拠を集めておくことが肝要と思われます。もっとも、自分だけが極端な仕事を与えられているような場合であれば、そのようなノルマそのものが嫌がらせと評価できるかと思われます。そのような場合は、自分だけが嫌がらせを受けているという証拠を集めるべきです。たとえば、同期のノルマと自分のノルマの差に関する証拠などとなります。

プライバシーに関するパワハラへの対策方法

プライベートに干渉してくるタイプのパワハラは、パワハラというよりもむしろセクハラといえるかもしれません。具体的には、恋愛経験や結婚事情などについて不要な発言・詮索するなどの私的な情報に関わってくるもの、休日や退勤後など就業時間外に連絡・接触を求めるなどの私的な時間に関わってくるものが考えられます。いずれにせよ、証拠を集めるべきなのは今までのパワハラと同様です。

なお、セクハラについては男性だから女性だからということはなく、同性の場合でもセクハラとなるとされているので注意が必要です。

我慢できない! パワハラ対策最終手段

会社は、職場環境配慮義務を履行する一環として、パワハラなどのハラスメントに対する相談窓口を設けている場合があります。そのため、まずはそういったしかるべき機関に相談するべきでしょう。そのような機関が存在しない場合や、相談しても何も変わらない場合は、やむを得ず 第三者機関である労働基準監督署や弁護士などに相談するべきです。波風を立てたくないという思いから泣き寝入りをしている人も多いかと思いますが、自身の進退も含めて第三者機関への相談というのは有用であるといえます。

「パワハラかな?」と思ったら証拠を押さえよう

パワハラの疑いがある場合は、パワハラがあったという証拠をしっかりと集めておき、いざというときのために備えておくことが必要です。また、それらをしかるべき機関に提出して訴えましょう。「上司だから」「会社に迷惑がかかるから」なんていうことは考える必要はありません。一番大事なのは自分自身。自分の健康や精神に支障が出る前に、何らかの対策をするのが重要なのです。

(文:刈谷龍太、構成:三浦一紀)

※画像はイメージです

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