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やつあたりする人の心理と対処法。やつあたりを避けるには?

笹氣健治(心理カウンセラー)

関係のない人に怒りをぶつける「やつあたり」。

よくあるのは上司が部下にやつあたりするケースですが、ほかにも、自分の子どもや配偶者(あるいは彼氏・彼女)、お店の店員などにやつあたりする人もいます。

私たちが何かに怒りを覚えたとき、本来ならその対象へ怒りをぶつけるべきはずですが、どういうわけか関係のない人に怒りの矛先を向けてしまう。なぜそのようなことをしてしまうのでしょうか?

やつあたりする人の心理

怒りが生じたとき、人はさまざまな方法でその感情を処理します。

怒鳴ったり殴ったりといった攻撃的な行動をとるのもそのひとつですし、もっと平和的な方法として、誰かにグチを聞いてもらう、気分転換で運動をする、カラオケで歌って発散するなど、人それぞれ自分なりの方法を選択して怒りを処理しているものです。

そんな中で「やつあたり」は無関係な人に怒りをぶつける行為であり、好ましくない選択のひとつだといってもいいでしょう。

とはいえ、自分なりに選択しているという意味では、やつあたりもその人なりにそうせざるをえなかった事情があったのかもしれません。

なぜ、その方法を選択せざるをえなかったのでしょうか? やつあたりをする人の特徴的な5つの心理状態について説明したいと思います。

心理1:怒りの限界を超えている

イライラすることやムカつくことがあっても、私たちはある程度は我慢することができます。

ところが、我慢の限界を超えると、自分でも制御不能となって、思わず怒りの感情を放出してしまうことになります。

やつあたりをするのもそのひとつ。しかし中には、そんなことくらいでやつあたりするの? と思うような人もいますが、まわりの人にはその人がどれだけの怒りをため込んでいるかはわかりません。

特に、慢性的にストレスにさらされている人は忍耐力が低下していて、ちょっとしたことでも簡単に爆発しやすくなっています。

心理2:他人に配慮する余裕がない

やつあたりするほど怒りをため込んでいるときは、他人に配慮する心の余裕もなくなっています。こんな態度をされたら嫌だろうなと、やつあたりする対象の気持ちを思いやることができなくなっているのです。

自分の怒りをとにかく放出することだけにしか意識が向いておらず、そのときの勢いのまま、自分でも想像がつかないようなひどい態度をとってしまいます。

心理3:孤立感を持っている

自分だけがこんなにつらい目にあっている、自分のつらさを誰もわかってくれない、といったように、自分は孤立していて誰からも援助をもらえないと思い込んでいるのも、やつあたりする人の特徴的な心理状態といえるでしょう。

他人にやつあたりするのは、そんな自分の気持ちを周囲にわかってもらうための行動ととらえることもできます。

やつあたりすることで、自分はこれだけつらいということを誰かに伝えようとしているのです。素直にまわりに助けを求めればいいものを、なんとも不器用な態度です。

心理4:被害者意識を持っている

つらい目にあっても耐えてがんばっているのだから他人に当たるのは仕方ない、許されていいだろう、といった自己正当化の意識も、やつあたりする人は心のどこかで持っています。

自分は被害者であり、被害者は救済されてしかるべきだ、という感覚になっているのです。

このような被害者意識が、相手に配慮せずに怒りを他人にぶつける行為を自分自身で許す理由となっています。

心理5:あたる相手は選んでいる

怒りの感情が制御不能になっているとはいえ、無意識のうちにあたる相手を選んでいるのが不思議でおもしろいところです。

この人は怒らせたら怖い、と思う相手にやつあたりをすることはまずありません。

やつあたりしたら、あとになって自分が不利な状況になるような人事権を持った上司などは、絶対にやつあたりの対象にはしないものです。

自分の怒りに黙って耐えてくれる部下、いつもやさしく許してくれるパートナーなどは、その対象としては安全です。ある意味、その相手に対して甘えているのでしょう。

やつあたりされやすい人の特徴

先ほど述べたように、やつあたりする人はやつあたりする相手を選んでいます。では、どういった人がやつあたりの対象として選ばれやすいのか、典型的な4つのケースを挙げてみましょう。

ケース1:自分にとって安全な人

部下や子どもといった自分よりも立場が弱い人は、やつあたりしても安全なので、その対象としては適任です。どんなにやつあたりしても何も言い返してこない、言い返してこられない、そういう関係性の人がやつあたりされやすいのはある意味仕方ないのかもしれません。

ケース2:自分に迷惑をかけた人

相手のミスに対して注意のレベルを超えた激しい罵倒も、やつあたりの一種です。

怒りの限界ギリギリで爆発寸前。そんなときに、部下がミスをした。カフェの店員がオーダーミスをした。

こういう相手もやつあたりの対象になります。自分に迷惑をかけたのだから怒って当然、というお墨つきが得られたので、遠慮なくあたれるのです。

ケース3:普段からイライラさせられる人

同じ部下でも、なぜかいつもやつあたりされる人とそうでない人がいます。

やつあたりの対象として選ばれるのは、よくミスをする部下、いくら注意しても直らない部下、反抗的な部下、といったように、普段からイライラさせられる相手です。

怒りの限界を超えて我慢できなくなると、日頃たまったうっぷんを晴らそうという意識も加わり、そういった人にやつあたりの矛先が向いてしまうのです。

ケース4:間が悪い人

怒りが爆発するとき、たまたまそこに居合わせただけ、という不運な人もやつあたりの対象になります。

上記の3つのようななんらかの理由があるわけではなく、ただその瞬間に近くにいたというだけでやつあたりされる。

不慮の事故に巻き込まれたようなものなので、防ぎようがありませんし、やつあたりされたからといって特に気にする必要もないケースです。

やつあたりする人への上手な対応

やつあたりはあくまでも本人の心の問題であり、まわりにいる人は、自分ができる対応をするだけです。

とはいえやつあたりされるかどうかは、その人との日ごろの関係性に起因します。

そのため、やつあたりの対象とならないように日ごろから意識して関係性をつくっていくことが、やつあたりへの最強の防御法ということになります。

あとは、それでもやつあたりされた場合はどうすればいいか、次の対処法を実践してみましょう。

対処法1:スキを見せない

やつあたりする対象として選ばれてしまわないように、日ごろからミスをしないように気をつける、仕事ができる人になる。

よくやつあたりをする人の前では、特に意識してそのように努めるといいでしょう。そうすれば、やつあたりされる確率は格段に減るはずで、そもそもやつあたりされることに悩まずに済みます。

対処法2:受け流す

やつあたりは、あくまでもそれをする人の問題であり、受ける人の問題ではありません。

その人がしっかり自分の感情をコントロールできれば、こんなに悩む必要はないのです。そう考えることで、やつあたりで自分が悩むのはバカバカしいことであり、自分がその人の問題まで引き受ける必要はないと割り切ることができるのではないでしょうか?

その人とは今だけの関係であり、いずれ顔を合わせることもなくなるのだからと自分に言い聞かせて、犬に吠えられたようなものだと思って受け流すことを心がけられるといいですね。

対処法3:協力を申し出る

やつあたりする人は、何らかのトラブルが生じていて、その対処に苦慮している場合が多いです。

そこで、やつあたりされたら「何か私にできることはありませんか?」とサポートを申し出るのもひとつの方法です。やつあたりはその人の問題なので手を差し伸べる必要はないのですが、自分にとって大切な人だった場合は、その苦しみを少しでも軽減するように助けてあげてもいいでしょう。

対処法4:ハッキリ指摘する

「やつあたりをする・される」という状況は、「攻撃的に強く当たってくる人・それを黙って聞く人」という構図になっています。

その構図を壊すことで、繰り返されるやつあたりを今後やめさせるきっかけにできる場合も。

具体的には、いつもやつあたりされる人から再びやつあたりをされたとき、「いい加減にしろ! やつあたりされる身にもなってみろ!」と相手のやつあたりをハッキリ指摘します。

言い方としては、逆ギレするような感じで、相手の強い言い方よりもさらに強く怒鳴る感じで言い返すのがポイントです。

この対応によって先ほどまでの構図は逆転して、相手のやつあたりはいったん止まる可能性が高いです。

何を言っても安全だと思っていた相手から不意に驚くような対応をされたので、びっくりして冷静さを取り戻すのです。このような対応を繰り返し続けると、両者の間に新しいパターンが構築されるので、やがてやつあたりがなくなっていくことが期待できます。

やつあたりはその人自身の問題。自分もそうなってはダメ

やつあたりは、自分の感情をコントロールできないその人自身の問題です。

また、その問題の解決に取り組む努力をする代わりに、まわりの人を利用して怒りを処理している点では、他人に甘えている行為ともいえます。

「自分の感情をコントロールできない」「他人に甘えている」という説明からわかるとおり、やつあたりをする人は、まさに精神面が子どもです。

子どもには周囲の大人が教育していく必要があるのですが、いい大人になった今となっては、なかなかそういう機会はありません。そうなると、今後もやつあたりを繰り返し、周囲からは扱いづらい人とみなされて、どんどん自分の立場が悪くなっていくだけですが、それは仕方ないこと。

他人のことはさておき、「人のふり見て我がふり直せ」ということわざの通り、自分自身がやつあたりしていないかどうか謙虚にふりかえって、もしそういう傾向があったら、精神的に大人になるように心がけましょう。

(笹氣健治)

※画像はイメージです

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