【新連載】28歳、私の一番きれいな時期はもう終わったのかな……
Story1 ★得たものと失くしたものと
最近、勘が鋭くなってきたのかもしれない。
ふと顔を上げるとその瞬間、
ドアが開いて学生が飛び込んでくる。
「安西です。桜川教授いらっしゃいますか」
今日もやはり息を切らした女子学生が、
この学生課に飛び込んできた。
外はこまかい霧雨が降っているのだろう、
髪にはビーズのようにこまかな水滴がついている。
「桜川教授との面談ね。ちょっと待って」
すばやく立ち上がるとカウンターの横にある、
成績相談のスケジュール表に手を伸ばす。
「あ……ごめんなさい。もう時間よね。
でも教授、まだ授業が終わってないみたい。
もう少し、待っててもらっていいかな」
「はい。わたしも時間ギリギリでしたから。
先生をお待たせしなくてよかった」
安西さんはそう言って首をかしげて微笑んだ。
かわいいなあ。産毛がブロンドに光る頬は、
とても健康的でお化粧の必要がない。
今このコがつけているのも、
日焼け止めのクリームぐらいだと思う。