加熱しても食中毒に!? カレーの常温保存が危険なワケ「ウェルシュ菌は熱で死滅しない」「密封→急速冷凍が◎」
家庭料理の定番ともいえるカレー。大量に作って何日かに分けて食べるという人も多いのではないでしょうか。一晩寝かせると美味しくなると言われているカレーですが、この時期、常温で保存しても大丈夫なのでしょうか。そんな素朴な疑問を料理研究家のスギ アカツキ先生に聞いてみました!
■常温放置したカレーが菌の温床に!?
断然、カレーは常温で放置派の筆者に「それはあまりオススメ出来ませんね……」と、スギ先生。そうなのか……。でも、食べる前に温め直せば問題ないのでは?
「それがそうとも限らないのです。分かりやすい例でイメージすると、熱帯夜で寝苦しい真夏、コップに水を入れて一晩放置した水を次の日加熱して飲む気になれますか? カレーについても同じことが言えます」
た、確かに! 水やお茶などは抵抗があるのに、なんでカレーは例外だと思っていたのかしら。
「そうですね。実際、調理したカレーを温度や湿度の高い場所に置いておくと、食物の腐敗する危険性は高まってしまいます。特に、室内の気温が25度を超えるような場合は、身体にダメージを与えたり、食中毒の原因となる細菌の繁殖が起こりやすくなるので、注意するにこしたことはないでしょう」
そういえば、給食や仕出しの弁当を食べて集団で食中毒に、なんて事件もよく聞きますよね。温め直せば細菌は死滅するものだと思い込んでいたのですが、そうでもないのでしょうか。
「 “加熱すると安心”と信じる人もいるようですが、腹痛や下痢を伴う食中毒症状を引き起こすウェルシュ菌は加熱しても死滅しないため、温め直したものを食べても食中毒になる可能性はあるのです」
加熱すると100%安心ってわけではないのですね。初めて知りました! 人づてに聞いた情報を鵜呑みにするのではなく、正しい知識を持つことが食中毒の予防にも繋がるのかもしれません。
■一晩たったカレーは本当に美味しい?
カレーの常温保存が良くない、ということは分かりましたが「カレーを一晩寝かせると美味しくなる」という理由から、あえて時間をおいてから食べる人もいるかと思います。常識のようになっている「寝かせると美味しくなる説」ですが、そもそもそのように言われているのはなぜなのでしょう?
「作りたての状態から時間が経つと、使われている具材の旨み(アミノ酸)や甘み(糖分)がカレーソースに溶け出し、それがカレーのまろやかさやコク、旨味を生み出すためだと考えられます。また、肉や野菜に含まれるタンパク質は分解が進むと、『イノシン酸』や『グルタミン酸』など旨味のもととなるアミノ酸へと変化します。それらが、カレーのマイルドさを引き立てるのでしょう」
へー! 美味しいと言われるにはちゃんと理屈があったんですね!
「ただし、スパイスの『香り成分』は、長時間の加熱によって揮発してしまいます。そうすると風味や香りはなくなってしまうため、これを残念に感じる方もいるでしょう。『一晩寝かせると美味しくなる』というのは、マイルドなカレーを好む日本人ならではの味覚にまつわる話かもしれませんね」
なるほど。当然、味の好みは人によって違うわけだから「時間をおいたカレーがベスト」とは必ずしも言い切れないのかも。ただ、どのみち作り置きをするにしても常温では良くないわけですよね。では、カレーの適切な保存方法とは?
「食物の腐敗は、微生物の汚染、高温、酸素、水分が要因となって発生します。ですから、最もオススメなのは、なるべく空気に触れないような状態で『冷凍保存』をすることです。タッパーもしくは冷凍保存用の密閉パックに入れて急速冷凍するのがベターです」
鍋ごと常温保存どころか、作ってすぐ冷凍庫にINする“急速冷凍”がベストだったんですね。ちょっと一手間加えるだけで、腐敗や食中毒のリスクが減るならそれに越したことはありません!
8月も過ぎたとはいえ、残暑や湿気などまだまだ油断は出来ないこの季節。作りおきをする際にはぜひ気をつけましょう!
◆スギ アカツキ
長寿美容食研究家・料理研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。発酵学や微生物学、基礎医学や生命科学などを幅広く専攻する。在院中に方針転換、独自で長寿美容食の研究を始める。モットーは、「長く美しくを、簡単に」。ヨガ教室やブログ(http://saqai.com/)も手がけている。
(松原麻依/清談社)
※この記事は2014年09月01日に公開されたものです