【新連載】壊れたスマホに入っていたのは、昔の彼のメールアドレス……
Story3 ★アンバランスな店と人
それからわたしたちは、なかなか合わない休みを、
なんとかやりくりしてデートをかさねた。
食品メーカーの経営推進部にいるわたしは、
土日はきっちり休めるけれど、
平日はよほどのことがない限り有給はとれない。
隼人は仕事の納期が迫ると、休みがとれない。
加えてお客様にお願いされると、
急に作業を急がなければならない時も。
デートのドタキャンも、いく度かあった。
「ホントにゴメンな」
「いいよ。お客さん商売だもの。
気を使わないでお仕事がんばって」
隼人が相手だと、心からそう思えた。
彼が大好きで、毎日が楽しい。
会えなくても、ぜんぜん不安にならなかった。
そして会えた時は、思い切り遊んだ。
彼の車で緑の山を駆け上がったり、
彼の部屋で好きなサッカーチームの応援をしたり。
外へでかけても、部屋にいても、
アクティブで楽しい思い出ばかり。
今も記憶をたどると、笑顔がこぼれる。