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【新連載】20代最後の夜を、ひとりぼっちで迎えるなんて

「どうしよう、もう総合職むずかしいよね」
「うん。早期退職者を募ってるくらいだから、
一般職から総合職への転換は、まず無理だと思う」
わたしと木下さんは、同時にため息をついた。

帰り道も、ため息が止まらない。
「ああ、あの時、総合職になっておけばなあ」
そうだ。以前に上司から一度だけ、
総合職を薦められたことがあった。
でもあの時、ちょうど6年前は、
駿と同棲を始めたばかり。
「たぶん1、2年で結婚するから、
一般職のままでいた方が、いいよね」
そう思って、総合職への転換は断ったのだ。
「まさかこんなに宙ぶらりんの生活が続くとは」

あの時、駿と同棲を始めなければ、
総合職になって将来への不安なんてなかったかも。
でなければ他の人と巡り合って、
今ごろ結婚して、子どもだっていたかも。
そうだ。このまま駿とダラダラ同棲していたら、
誰とも結婚できないまま、時間がすぎるだけだ。
今はつらくても……駿とは別れなければ。
わたしは手頃な賃貸物件をいくつかチェックすると、
不動産会社に連絡し、見せてもらえるよう相談した。
もう後戻りしている時間はない。先に進まなければ。

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