【新連載】20代最後の夜を、ひとりぼっちで迎えるなんて
でもわたしも、まったく引く気になれなかった。
「いい加減にしてほしいのはこっちよ。
わたしもう、30歳なのよ。
いつまでこんな中途半端な生活が続くの?」
「そんな中途半端って……じゃあ聞くけど、
なんでそんなに結婚したいの?」
駿は眉をひそめながら、怪訝そうな顔だ。
本当にわたしが何で結婚したがっているのか、
わからないらしい。
「だって……もう若くないもん」
すごく答えづらかったけれど、言葉にしてみた。
ひどく悔しい気持ちになった。
「そんなさあ、気にするほどの年じゃないよ」
駿はケラケラと笑っている。
ぜんぜんわかってないみたいだ。
そこへ鮮やかなオレンジ色のにんじんサラダがきた。
味はいいけれど、おいしいという感覚になれない。
「だって駿はこれからも若い女のコが捕まるけど、
わたしはそうはいかないんだよ」
「何いってんの。おれは若い子と付き合うなんて、
考えないから、絢子とずっといっしょだよ」
「でも合コンみたいな飲み会、何度もいってるよね」
わたしはこの時、駿をにらんで言ったと思う。