【医師監修】妊娠中期に起こる5つの症状の注意点と対処法

【医師監修】妊娠中期に起こる5つの症状の注意点と対処法

妊娠中期はお腹のふくらみも少しずつ目立ってきますが、流産の可能性が低くなり、つわりも落ち着くため過ごしやすくなります。俗に安定期と呼ばれる妊娠中期ですが、どんなことに注意すればよいのでしょうか。


妊娠中期とはどんな時期?

Lazy dummy

※画像はイメージです

妊娠中期のなかでも、妊娠16週0日から27週6日頃は、一般的に安定期と呼ばれます。妊娠初期より体調の安定する妊婦さんが多くなりますが、無理をしないように心がけましょう。

赤ちゃんの成長と妊婦さんの体

赤ちゃんの主な器官がほぼ確立し胎盤の形や機能も出来上がって、つわりの落ち着く人が多くなる時期です。

赤ちゃんの成長に伴って、妊婦さんのお腹も目立ちはじめ、体全体に皮下脂肪がついて妊婦さんらしい体になってきます。赤ちゃんがおなかの中で動く様子を徐々に感じるようになります。

妊娠中期に起こりやすいマイナートラブルと対処法

お腹の赤ちゃんは安定しますが、妊婦さんはお腹が大きくなるのに伴って、マイナートラブルが起きやすくなります。

妊娠中期に起こりやすい主なマイナートラブルには以下のような症状があります。

(1)動悸・息切れ

動悸や息切れにはいくつかの要因があります。妊娠すると、妊娠していないときに比べて心拍数は10回/分程度増加すると言われています。また、妊娠中期ごろから、心臓が1回の拍動で送り出す血液量が急速に増加します。そのため心臓に負担がかかるようになり、動悸を感じることがあります。

これはエストロゲン、プロゲステロンの働きによるもので、胎盤を通して赤ちゃんへ十分な血液を送るための生理現象です。

加えて、血液の液体成分(血漿)が増えるのに比べて赤血球の数はそこまで増加しないため、貧血を起こしやすくなって、そのために動悸を感じやすくなります。

ほかに、妊娠によってプロゲステロンの分泌が増えた影響で、一回の呼吸を深くしようとするようになります。

対処法

お腹がそれほど大きくならないうちから動悸や息切れが始まることがあるのは、子宮によって胸が圧迫される以外にも要因があるためなので、あまり心配はいりません。普段からゆっくり動作するように心がけ、動悸・息切れを感じたときには治まるまで休みましょう。

安静にしても治まらないときや、咳、全身のむくみ、倦怠感などを伴う場合は医師に相談しましょう。

(2)貧血

妊婦さんは血液の液体成分(血漿)の増加に比べて赤血球の数が不足することによって貧血になりやすくなっています。妊娠中の貧血のほとんどは鉄欠乏性貧血で、赤血球をつくる鉄が不足することが原因です。

赤血球は赤ちゃんへ酸素を運ぶ大切な役割があります。貧血でも妊婦さんは無症状であることが多いといわれていますが、動悸、めまい、頭痛、たちくらみなどさまざまなマイナートラブルを引き起こすこともあります。

対処法

レバー、ほうれん草など鉄分の多い食事を摂ることが大切ですが、鉄分のみを多く摂るのではなくバランス良い栄養摂取をするようにしましょう。レバーの摂りすぎはビタミンAの過剰摂取になります※。

食品に含まれる鉄のなかでも、動物性食品に含まれるヘム鉄は植物性食品に含まれる非ヘム鉄に比べ吸収されやすいといわれています。非ヘム鉄は、ビタミンCと一緒に摂取することで吸収率が高まります。

食事で貧血が改善されず鉄剤の服用をする場合、便秘や胃のむかつきなどを起こすことがありますが、服用しやすい薬もあるので医師に相談しましょう。

※妊娠初期にビタミンAを摂りすぎると、胎児奇形が増加するといわれているため、注意が必要です。

(3)腰痛

大きくなったお腹のため、お腹をせり出し反り返った姿勢になります。そのため腰の湾曲が大きくなり、腰や背中に痛みを感じるようになります。妊娠中期から後期にかけて症状が悪化しやすくなります。

対処法

体重増加を適正範囲内に抑えること、靴は幅広で少しかかとのあるものを履くこと、長時間立ち続けたり・座り続けたりしない、寝るときは硬めのマットレスにするなどが挙げられます。

痛み止めとして市販されているシップのなかには、妊娠中は原則使用できない成分が含まれているものもあるため、安易な使用はやめてどうしても必要な場合は、事前に必ず医師に相談しましょう。

(4)便秘・痔

便秘は妊娠初期から黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が増えること、大きくなった子宮が腸を圧迫することで起こりやすくなっています。便秘や硬い便になると、排便時にいきみやすくなり、肛門周囲の静脈がうっ血して痔が出来やすくなり、妊婦さんの半数近くに痔が出来るといわれています。

さらに、頑固な便秘の場合、排便時に肛門裂傷を伴い出血したり、こぶが腫れて強い痛みを伴います。

まずは便秘にならないようにすることが一番ですが、便秘になっても排便時にいきまないようにしましょう。また就寝時は横向きで寝ることが良いとされています。

対処法

すでに痔ができてしまった場合は、肛門周囲をお湯で洗い局所を清潔に保つことが大切です。適度なウォシュレットの使用は構いませんが、ビデは腟内の常在菌のバランスをくずしたり子宮に刺激を与えるため控えたほうがよいでしょう。

(5)皮膚の痒み、その他のトラブル

妊娠中は、基礎代謝がアップし、発汗も増えます。さらにはホルモンの影響もあって皮膚が敏感になり、痒みを感じやすくなります。特に妊娠中期から妊娠後期に痒みを伴った発疹が全身に現れることがあり「妊娠性瘙痒性丘疹」といいます。

対処法

妊娠中は、皮膚が敏感になっているので刺激を与えないようにしましょう。症状がひどいときは、自己判断で市販薬を使わず、産婦人科や皮膚科を受診しましょう。

その他のトラブルとして、頭痛、肩こり、むくみ、疲労感なども妊娠中期に感じやすい症状です。脂肪分や塩分の摂りすぎに気をつけ、バランスの良い食事で栄養を摂りましょう。体調がよいときに簡単な運動をすることで代謝、血行が促進されリフレッシュもできます。

妊娠中期のカロリー摂取と体重管理

つわりが治まる妊娠中期は食欲が旺盛になる時期です。体重の急な増加や増えすぎは、さまざまなリスクを招きます。とはいっても妊娠中に太ることを恐れて妊娠初期からあまり体重を増やさず、痩せすぎでいることで起こるリスクもあります。

太りすぎ、やせすぎで起こるリスク

●太りすぎで起こるリスク
妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、分娩遷延など
(分娩遷延とは、陣痛がきてから赤ちゃんを産むまでに通常よりも時間がかかることで、赤ちゃんがお腹の中で大きくなりすぎた場合にも起こりやすくなります)

●痩せすぎで起こるリスク
胎児の発育不全、低出生体重児など

妊婦さんの適正な体重増加とは?

では、妊婦さんの体重の増加はどれくらいが適正なのでしょうか。

適正な体重増加は、妊娠前の体重によって目標値が分かれており、厚生労働省は、妊娠中の望ましい体重増加の目安をBMI(Body Mass Index)の数値によって以下のように設定しています。

妊娠前のBMI18.5未満(やせ) 適正体重増加:9~12kg
妊娠前のBMI18.5以上25.0未満(標準) 適正体重増加:7~12kg
妊娠前のBMI25以上(肥満) 適正体重増加:増加体重を個別に医師と相談

BMI(肥満度)は以下の計算で算出されます。
BMI=体重(kg)÷[身長(m)÷身長(m)]

(厚生労働省 健やか親子21)

ただし、上記は妊娠中を通して全期間の体重増加の目安です。

通常、妊娠初期は妊娠前と体重がほとんど変わらず、増えても2kg未満としています。妊娠中期になると次第に体重が増えやすくなります。妊娠中期を通しての体重増加の目安は5kg程度、急な体重増加はしないように、1週間に0.5kgまでの増加とすることが望ましいとされています。ただし、妊娠前のBMIが25以上の方については、主治医の先生と相談して対応してもらうようにしましょう。

妊娠中期に必要なエネルギー

適正な体重増加を目指してどのくらいのエネルギーを摂取すればよいのでしょうか。妊娠時期によって一日に必要なエネルギー量は変わってきます。

妊娠中期:妊娠していないときのエネルギー必要量+250 kcal
(妊娠初期:+50kcal、妊娠後期:+500 kcal)

妊娠中期は、妊娠初期に比べると200kcal多く摂る必要がありますが、食欲がある時期はうっかりするとカロリーオーバーになりがちです。牛肉より鶏肉、モモ肉よりささみ、揚げるより蒸す、茹でるなどで工夫をし、カロリーを抑えましょう。

また、妊娠中も塩分摂取は1日7gが目安とされています。塩分の摂りすぎはむくみや妊娠高血圧症候群のリスクを高めます。

妊娠中期の運動

食欲が旺盛になり太りやすい妊娠中期の体重管理には、食事面だけでなく適度な運動も取り入れるほうが効果的です。

また、適度な運動は、むくみや便秘といったマイナートラブルを軽減するためにも大切です。

適度な運動が大切、どんなスポーツがおすすめ?

では、どんなスポーツが良いのでしょうか。日本産科婦人科ガイドラインでは、妊娠中のスポーツを動き方や強度によって、好ましいスポーツ、好ましくないスポーツ、危険なスポーツの3種類に分類しています。

●好ましいスポーツ
ウオーキング、水泳、ヨガ、ラケットスポーツ、エアロビクス、固定自転車、ピラティス

●好ましくないスポーツ
ホッケー、バスケットボール、サッカー、ボクシング、レスリング、(ホットヨガ)

●危険なスポーツ
体操競技、スキー(水上、雪上)、ハングライダー、スキューバダイビング、激しいラケットスポーツ、乗馬、スケート、重量挙げ

(日本産科婦人科ガイドライン2017より)

適度な運動(スポーツ)は、妊婦さんでも健康維持や増進に効果的と言われていることから、妊婦さん向け水泳、ヨガ、エアロビクス教室なども増えています。

上記にある「好ましいスポーツ」以外を行う場合の考え方として、転倒しやすかったり、激しくぶつかり合う運動はおすすめできません。また、ホットヨガは好ましくないスポーツに分類されていますが、これは、ホットヨガの環境が高温であるため、脱水を起こしやすく負担が大きいためです。

ただし、妊娠前から行っていたスポーツは、体が慣れているので加減をして行うのであれば、すべて好ましくないというわけではありません。ジョギングについても、妊娠前から走っていた方は、速度を落としたり距離を短くしたりして走るのであればあまり問題はないでしょう。

スポーツをすると脱水になりやすいので水分補給をしっかりとし、真夏の炎天下では行わないようにしましょう。

運動がいつまでできるかについては、妊娠経過が順調であれば、特に制限はないようです。ただ、産科の主治医や、スポーツを実施しているときのメディカルチェックなどで異常がないことが条件になります。無理をしないようにしましょう。

ただし、切迫流産、早産、子宮頸管無力症、妊娠高血圧症候群などの方のスポーツは勧められていません。

スポーツを始める際には、主治医に相談してから行い、運動後の体の変化はセルフチェックするようにしましょう。
疲れを感じているときは、ゆっくり休み、また、体を動かした後に、腹痛や出血などの変化があった場合はすぐに受診しましょう。

生活の動作の中の注意点

動きやすい安定期には、思わずいろいろな動きをしてしまいがちですが、普段の生活の中でも気をつけたい動作があります。

●仰向けの体操、休憩
大きくなった子宮が背骨沿いの静脈を圧迫することで心臓に血液が流れにくくなり、血圧が急激に低下(仰臥位低血圧症候群)することがあります。またこれによって、赤ちゃんへの血液量も不足してしまいます。

●自転車での移動
移動手段として妊娠前から自転車に乗っていた方も多く、安定期には乗っても良いのではと思いがちです。しかし、お腹が大きくなってくると視野が変わり、バランスをとりにくくなるため転倒しやすくなります。そのため安定期であっても移動のための自転車の運転は避けたほうが良いでしょう(スポーツとしての固定自転車は別)。

【医師監修】妊娠安定期はいつから?過ごし方と8つのトラブル&注意点

https://woman.mynavi.jp/kosodate/articles/76

妊娠中期に入るとつわりが治まることが多く、お腹の赤ちゃんもこれ以降ぐんぐん大きくなっていきます。俗に「安定期」と呼ばれますが、妊婦さんにはうれしい時期ですね。でも、油断は禁物。充実したマタニティライフを送るためにこの時期に注意すべきこと、つわりが落ち着いてくる時期だからこそしておきたいことなどをご紹介します。

腹帯は必要? どんな種類があるの?

現在では、安産祈願の日(妊娠5カ月目に入った最初の戌の日)にだけさらし(腹帯)を着けてお参りをする人もいれば、冷えや腰痛対策として普段から着用している人もいますね。

妊婦さんの着けやすさや目的によって腹帯の種類を選ぶことができます。
・コルセットタイプ(腹巻き状、ソフトな着け心地、着脱は簡単)
・ガードルタイプ(ショーツのようにはくタイプ、お腹をつつみ込む感覚)
・補助帯つきタイプ(コルセットやガードルタイプの上に着脱可能な補助帯がついたもの)
・さらしタイプ(長いさらしの布をお腹にぐるぐる巻きつけて装着)
・ベルトタイプ(ベルトで骨盤付近のみに着けるタイプ)

まとめ

安定期であっても、毎日、規則正しい生活を送りましょう。適度な運動とバランスの良い食事が大切ですが、運動は体を鍛えるというよりは、マイナートラブルの軽減とリフレッシュを目的として行うほうが良いでしょう。丈夫な体を作るには食事面が大切と心掛け、急な体重増加に気をつけながら必要な栄養をしっかり摂りましょう。

(島田直子/毎日新聞出版MMJ編集部)

この記事の監修ドクター
総合病院土浦協同病院 坂本雅恵先生
1990年東京医科歯科大学卒業、同年産婦人科入局
東京医科歯科大学大学院を卒業後、2003年より総合病院土浦協同病院勤務。2009年より産婦人科部長、2015年より総合周産期母子医療センター長。
医学博士、産婦人科専門医、指導医、周産期専門医、指導医(母体・胎児)

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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