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「お時間をいただきたく存じます」とは? 意味・使い方・言い換え表現を紹介【例文付き】

前田めぐる(ライティングコーチ・文章術講師)

「お時間をいただきたく存じます」は、相手に時間をもらいたいことを伝えるフレーズです。ビジネスシーンでもよく見聞きしますが、上司などにも使用できる正しい敬語なのでしょうか? 今回は、「お時間をいただきたく存じます」という言葉について、ライティングコーチの前田めぐるさんに詳しく教えてもらいました。

ビジネスでは「報・連・相」が欠かせません。

報告をしたい。取引先の様子を説明したい。面談をお願いしたい。意見やアドバイスをもらいたい。そんな場面で適切な時間をもらうために使われるのが「お時間をいただきたく存じます」という言葉です。

相手の時間を分けてもらうための大切な言葉ですが、それだけに注意も必要です。

そこで今回は、「お時間をいただきたく存じます」の意味や使い方を解説します。正しい言葉遣いを理解し、ビジネスメールや会話などで有効に活用しましょう。

「お時間をいただきたく存じます」の意味

まずは、意味を把握するために「お時間を+いただき+たく+存じます」に分けて説明します。

「お時間」:「時間」を丁寧にした言葉

「いただき」:「もらう」の謙譲語。「賜る。頂戴する」という意味

「たく」:「希望」を表す助動詞「たい」の連用形。「いただきたく」は「もらいたく」のへりくだった表現

「存じる」:「思う」の丁重語。相手(聞き手や読み手)に対する改まった気持ちを表す言葉

つまり、「お時間をいただきたく存じます」は、「時間をもらいたいと思う」という言い回しを丁寧にしたフレーズです。

上司にも使える正しい敬語?

前述したように、「お時間をいただきたく存じます」は、文法的には正しい敬語表現です。

特にビジネスでは、報告・連絡・相談、いわゆる「報・連・相」が鉄則ですよね。情報を共有することが多いビジネスシーンでは、目上の相手や上司などに対してよく使われています。

ただし、相手に対して「(あなたの)時間をもらいたいと思う」と告げるわけですから、少々勝手な印象を与えることもあり得るでしょう。

日頃から密にやりとりしている上司との間では使えても、取引先や日頃あまり関わりのない目上の相手に対して使うには、やや注意を要することがあります。

そのため、相手の状況や場面に応じて、ふさわしい表現となるよう工夫することが必要です。

「お時間をいただきたく存じます」の使い方と例文

「お時間をいただきたく存じます」は、頼まれた仕事について質問や報告がある、取引先に対してどうしても説明したいことが発生したなど、相手に時間を割いてもらいたい時に使うことができます

以下で、例文を見ていきましょう。

例文

・取引先に対して
「〇〇の件で、どうしても急遽お知らせしたいお話がございます。誠に恐縮ですが、少々お時間をいただきたく存じますが、本日はお忙しいでしょうか」

・上司に対して
「課長、〇〇社の案件でアドバイスいただけないでしょうか。もしご迷惑でなければ、昼食後に10分ほどお時間をいただきたく存じます

・上司に対して
「午前中に訪問したA社の件ですが、部長のご都合がよろしい時に、後ほどご報告のお時間をいただきたく存じます

・受講者に対して
「皆さまお集まりいただきありがとうございます。本日はアンケートがございます。恐縮ですが、セミナー終了後に5分間ほど皆さまのお時間をいただきたく存じます

「お時間をいただきたく存じます」をビジネスで使う時の注意点

「お時間をいただきたく存じます」を使用する際は、注意したいポイントがあります。詳しく見ていきましょう。

(1)具体的な時間の目安を示す

「お時間をいただきたく存じます」と述べるだけでは、どれくらいの時間をほしいのか、いつから時間を空ければいいのかが相手には分かりません。

そこで、以下のような言葉と組み合わせて目安を示すのがおすすめです。

・「少々」:個人差がありますが、長くても5分程度

・「〜ほど」:1時間ほど、10分ほどなど、かかる時間を具体的に示す

これにより、相手は心づもりができるため、時間を調整してもらいやすくなるでしょう。

また、質問や報告をする際に相手に時間を割いてもらいたい場合は、「後ほど」「お昼休みに」「休憩時間に」など、具体的に「いつ時間をもらいたいのか」を示す方法もあります。

くれぐれも突然相手の時間を奪って迷惑を掛けることのないよう、配慮する姿勢が大切です。

(2)押し付けがましくならないようにする

いきなり「お時間をいただきたく存じます」と述べるだけでは、押し付けがましく感じられる可能性があります。

そこで、相手に納得してもらえるように以下のような工夫をしましょう。

理由を示す:「〜の件で」「〜のご報告で」など、時間を割いてもらいたい理由を示す

配慮を示す:押し付けがましくならないように、「ご都合がよろしい時に」「お手すきの時に」など相手への配慮を示す

クッション言葉を使う:「お忙しいところ恐れ入りますが」「もしご迷惑でなければ」「恐縮ですが」などのクッション言葉を使う

それでも失礼にならないか気になる時は、「お時間をいただけるでしょうか」と疑問形にするとベストです。

また、次の段で紹介する柔らかい印象の言い換え表現も参考にしてください。

(3)作業に時間がかかるという意味では使わない

店頭で商品の提供や包装で時間がかかる場合に、「ご用意に10分ほどお時間をいただきたく存じます」という表現を聞いたことがある人もいるでしょう。

しかし、面接や相談のように相手の時間をもらうわけではないため、この場合は「10分ほどかかります」の方が適切です。

失礼にならないかと気がかりな場合には、「ご用意に10分ほどかかりますが、よろしいでしょうか」と疑問形にすると良いでしょう。

「お時間をいただきたく存じます」の言い換え表現

ここからは、「お時間をいただきたく存じます」と同じような意味を持つ言葉を紹介します。ニュアンスの違いを理解して、効果的に使ってみましょう。

(1)お時間をいただければ幸いです

「お時間をいただきたく存じます」よりもソフトな印象の言葉です。目上の相手にも使用可能なので、覚えておくと役に立ちます。

また、話し言葉よりもメールや手紙など書き言葉で使われることが多いでしょう。

(2)お時間を頂戴できると幸いに存じます

「お時間をいただきたく存じます」をさらに柔らかく丁寧にした言い方です。話し言葉よりもメールや手紙など書き言葉で使うと良いでしょう。

ただし、目上の相手に使う表現であるため、同僚や部下には使いません。相手に応じて表現を使い分けることを心掛けましょう。

(3)お時間をいただけるでしょうか

「お時間をいただけるでしょうか」は疑問文になっているため、取引先や上司など目上の人にも安心して使えます。

相手の都合が分からない時など、様子をうかがいたい場合はこの表現を用いるのがおすすめです。

(4)お時間をいただくことは可能でしょうか

「お時間をいただけるでしょうか」と同じく疑問形になっている上、「可能かどうか」を尋ねる表現なので、忙しい相手に配慮したフレーズです。

取引先や上司など目上の人にも問題なく使えます。

「お時間をいただきたく存じます」は相手の時間を分けてもらうための大切な言葉

営業のメールやSNSでのメッセージ、接客での会話など、ビジネスやプライベートのさまざまな場面で、私たちはお互いの時間を調整します。そんな時に「お時間をいただきたく存じます」をうまく活用してみてください。

理解を示して応えてくれる相手がいることは、本当にありがたく貴重なこと。場面にふさわしい適切な表現を使って、お互いに無理のない時間調整を行いましょう。

そして、感謝の気持ちを持って、良いパフォーマンスを発揮したいものですね。

(前田めぐる)

※画像はイメージです

※この記事は2024年01月25日に公開されたものです

前田めぐる(ライティングコーチ・文章術講師) (ライティングコーチ・文章術講師)

コピーライターとして長年「ことば」に関わってきた経験値を元にまとめた「ほどよい敬語」(https://ameblo.jp/comkeigo/)が好評。過剰さや不適切さを排し、明快に説く内容は「違和感の理由がわかりスッキリした」と質問サイトなどでたびたび引用される。

自治体・団体・医療機関向けSNS活用、文章術研修の講師でもある。

著書に『この一冊で面白いほど人が集まるSNS文章術』(青春出版社)『前田さん、主婦の私もフリーランスになれますか?』(日本経済新聞出版社)『ソーシャルメディアで伝わる文章術』(秀和システム)など。公益社団法人日本広報協会アドバイザー。

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