【第1話】爆エモ青春からの裏切り急展開。ただのキュンじゃ終わらない!?
恋愛・婚活コラムニストのやまとなでし子さんが、月9ドラマ『君が心をくれたから』(フジテレビ系)を毎週考察&展開予想するコラムです。主人公・逢原雨が、愛する男性のために自分の“心”を差し出す宿命を背負うことから始まる、“過酷な奇跡”が引き起こすファンタジーラブストーリー。“奇跡”と引き替えに雨が奪われる“心”とは……? 2人の未来は果たして……?
※このコラムは『君が心をくれたから』1話までのネタバレを含んでいます。
自己肯定感が劇的に低い主人公・雨
主人公の逢原雨(永野芽郁)は自己肯定感の低い女の子。暗い性格で友達もおらず、雨という自分の名前まで忌み嫌っています。その理由は母親に虐待されていた過去のせい。
母親に刃物を向けられ自分の存在を否定されたことがトラウマとなり、自分は誰からも必要とされておらず、価値がない人間なのだと思い込んでいます。
祖母(余貴美子)が愛情を持って育ててくれているのですが、その価値観や自信のなさは拭えないようです。
そんな雨は、ある日同じ高校の先輩である朝野太陽(山田裕貴)と出会います。自分とは正反対の明るくまっすぐな太陽を、最初は疎ましく思っていたのですが、雨はだんだんと心を開き、気づけば友人と呼べるような相手となっていました。
雨に存在理由を与えてくれる存在・太陽
太陽は雨にとって、自己肯定感を上げ、雨を必要としてくれることで、雨が存在する理由を与えてくれる人でした。
例えば「雨なんて降るとジメジメするし鬱陶しいし、みんなに嫌われている……」と、雨という名前が嫌いだと漏らせば「俺は大好きだよ。雨のこと。雨がないと花だって育たない。飲み水にもなる。雨音を聞けば優しい気持ちになれる。雨はこの世界に必要だよ」と、気づいていなかった良い面にそっと光を当てて照らしてくれる、雨にとって本当の太陽のような人でした。
また雨の過去のトラウマを知った太陽は、わざわざ校内放送で「(家業を継ぎ)立派な花火師になりたいと思わせてくれたのは君がいたから。だから君には価値がある。俺の人生を変えてくれたから。雨はこの世界に必要だよ」と、今度は天候の雨だけでなく、雨そのものも太陽にとって必要な人なのだと言葉にしてくれました。
それ、二人きりで伝えるんじゃダメだったん? わざわざ校内放送にするの、行動力が有り余る変人では? と思ったんですけど、これきっと太陽の罪滅ぼしなんでしょうね。
以前、うっかり校内放送のスイッチを入れてしまって、雨の会話を全校に放送してしまった太陽。雨に退学したいと思わせるほど恥ずかしい思いをさせてしまったから、自分も校内放送で気持ちを叫んだのかもしれません。その純粋でまっすぐな気持ちがかわいくてむず痒いですね。
それぞれの夢を目指す理由になったお互いの存在
「もう付き合っちまえよ!」な、エモエモ青春学生生活なのですが、そうはいきません。二人はそれぞれの夢を10年後にかなえて再会することを約束し、雨は東京でパティシエに、太陽は地元・長崎で花火師になる夢に向かって進み始めます。
その夢を目指すきっかけになったのもお互いの存在。
太陽はまだ雨と知り合う前、花火を見つめる悲しい雨の横顔を偶然見たことをきっかけに、彼女を笑顔にする花火を作りたいと花火師を目指すことを決めました。そして偶然にも高校で雨に再会し、距離を縮めていったのでした。
一方雨は、太陽に振る舞った手作りのお菓子を褒めてもらったことがきっかけ。パティシエへのあこがれはありつつ、自分の才能に自信が持てなかった雨ですが、太陽の後押しのおかげで、夢に一歩踏み出しました。
その10年後。雨は太陽の花火を見に、長崎に戻ってくるところから展開が急変します。
突然の裏切り展開
普通のラブストーリーならここで、「それぞれの夢をかなえた二人が再会。あの頃結ばれなかった恋を再度かなえていく」という感じなのでしょう。
しかしここで視聴者は1手も2手も裏切られ、現実を突きつけられます。
巡り巡って再会した二人ですが、二人の描いていた10年後の現実の姿は理想と大きくかけ離れていました。雨は夢見ていた有名店で、パティシエとして働くことができたものの、過去のトラウマなどが邪魔をして、早々にその夢を諦めていました。
一方の太陽は、実は色覚障害があり、赤い色を判別できないというハンデから花火師の夢を諦めていました。太陽が赤い服を着ていたのは、色覚障害をあえて周囲に悟られないようにするためだったのでしょうか?
それを打ち明けるのが皮肉にも、10年後、雨に見せると約束した大晦日の花火の下。別の誰かが作った花火の下で、実は太陽は挫折していたことを雨に伝えるのです。
雨に存在価値を与え、太陽のように見えていた彼も、実は自分に自信がなく、雨に自分が存在する理由を与えてもらっていたのだと分かるシーンはグッとくるものがありました。
そしてやっぱり雨を幸せにする花火を作りたい、と決心し、もう一度太陽は花火師を目指すことを誓います。
しかし、雨を呼ぶためにあの人混みで爆竹ぶん投げて鳴らすのはマジでテロ。ヤンチャ小学生の所業。28歳男性、大晦日に捕まらなかったのを感謝すべき。いくら精霊流しの時に、「雨ちゃんとはぐれたら鳴らすね」と言ってたとはいえ、爆竹常備してるのも、火つけてバチバチ言わせてんのもマジで不審者の極み。
2つめの裏切り。激エグ条件のファンタジー
その帰り、なんと太陽は車に轢かれてしまいます。
そして突然雨の前に、案内人と名乗る男(斎藤工)が現れます。彼は「太陽の命を、雨の心と引き換えに救う」と言うのです。「人間の心を育む五感を、3か月かけて失うことを受け入れれば、太陽の命を救う」というとんでもない条件を、雨は受け入れます。
「(太陽と過ごした時は)最高の3年だった。私を必要としてくれたから、君が心をくれたから」と。
翌日、何事もなかったかのように無傷の太陽と、同じく何事もなかったかのような雨。五感は3か月かけて奪われるので、翌日はいつも通りの雨の姿に少しホッとしつつ、あまりにもグロい条件すぎて……。
これを受け入れられるということは、雨にとって、いかに太陽が大きな存在であるかを改めて感じさせます。
自分の存在意義をくれた太陽がいなくなるということは、雨にとって生きる意味を失ってしまう、ということなのでしょう。
交換条件で五感以上に失うもの
しかし、五感を奪われるということは、雨の夢であるパティシエの道は絶たれますし、太陽がいつか花火師の夢をかなえ、雨のために花火を打ち上げたとしても、それを見ることも、聞くことも、感じることもできないのです。
太陽の命と引き換えに、二人の描く夢全てを失ってしまったようなこの取引。
これは、雨にとっては最良の決断だったかもしれませんが、太陽にとってはきっと事実を知ったらそうではないでしょう……。
青春爆エモ恋愛ドラマかと思って見ていたら、とんでもないファンタジー展開に全く先が読めません。
次回は何が起きるのか。二人の恋や夢はどうなってしまうのか。楽しみに待ちましょう。
(やまとなでし子)
※この記事は2024年01月15日に公開されたものです