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結婚か充実したキャリアが無いと「幸せ」ではない? 人生詰んだ「元アイドル」が教えてくれた、前を向いて生きていくコツ

ミクニシオリ

2023年11月3日(金・祝)に公開される映画『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』。仕事無し、貯金無し、男無し。人生に詰みかけた元アイドル・安希子が、自分らしさを求め再生していくストーリーをライターのミクニシオリさんがレビューします。人生詰んだ「元アイドル」が教えてくれたこととは?

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「人生、詰んだ」。上手くいかないことが重なると、ふとそんなふうに思ってしまうことがあります。

仕事、恋愛、人間関係、趣味。何かひとつだけが充実していれば良いというわけでもないから、人生は難しくて。ちゃんとしなくちゃ、と自己啓発本を読んでも、人生を変えるような行動ができるわけではない……まだ自分探し中で、たまにもやもやしちゃうあなたに、おすすめの映画があります。

仕事無し、貯金無し、男無し。人生に詰みかけた元アイドルが、自分らしさを求め再生していくストーリー。人生の目標がまだ分からないのに、周囲の意見が気になってしまう真面目なアラサーにピッタリの映画の名前は……『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』。

過去の栄光にすがっても、人生うまくいかない「元アイドル」が映画の中で教えてくれたのは、うまくいかないことがあっても、また前を向いて人生を歩き続けるためのコツでした。

「がんばってるのに空回り」人生がうまくいかない主人公の葛藤に、共感の嵐

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タイトルだけでもキャッチーなこの作品は、元SDN48メンバーの大木亜希子さんの実録私小説が原作となっています。

「って言っても、元アイドルと私じゃあ、詰んでるレベルが全然違うでしょ……」

と考える人もいるかもしれませんが、映画は文字通り、かなり“詰んだ”状態からスタートします。

大手アイドルグループを卒業するも、芸能界には残らず、セカンドキャリアとして始めた仕事はうまくいかず、恋愛も本命昇格できずに撃沈。

仕事がうまくいかなかったせいで貯金も無く、現役時代とは体型も変わり、当時着ていた衣装のチャックはもう閉まらない……。一般人の私たちと多少状況は違えど、悲壮感は十分すぎるほど伝わってきます。

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主人公の安希子は、29歳の誕生日を迎える直前のアラサー女子。もう少しで30歳なのに、仕事も恋も思うようにいかない。自分が何者なのかも、何を糧に生きていけばいいのかも分からない。

安希子はアイドルを辞めた後は会社員として転職し、慣れない仕事もがんばった末、身体を壊してフリーターになってしまいます。

がんばってもうまくいかない、だけどがんばり続けないと詰んでしまうから、もっとがんばる。彼女のもがきは、いわゆる“アラサー病”のひとつでもあるように思えます。

流れ星のように過ぎ去ってしまった20代。楽しいこともいろいろと経験してきたものの、自分はまだまだ子どもっぽいようにも感じる。だけど、もう30歳。大人にならなければいけない、誰かに必要とされなければいけない。

その責任感の裏には、心の奥底にある「本当は誰かに頼りたい」「一人で生きていきたくない」という安希子の寂しさも感じさせます。

今の30歳って、まだまだ若くて、エネルギーにあふれています。だけどその反面で、結婚や出産、キャリアには“消費期限”があるようにも感じてしまうのも事実。

今の自分がやりたいことと、なりたい自分が一致しないから、逆流の中も必死に泳ぎ続けなければいけない。作中の安希子の葛藤には、誰しもどこか共感してしまうはずです。

飾らず、等身大に生きるおっさんから学ぶ、人生のコツ

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誰だって、無理してまではがんばりたくはないですよね。けれど、世間体や親の期待、周囲の友人との比較……自分の価値観とは違う何かに背中を追いかけられて「もしかしてこのままじゃヤバいのかな」という不安から、がむしゃらに行動しはじめるもの。

たいてい、自分ではがんばっていることにすら気づけないものですが、安希子の行動・言動を見ていると、自分は大丈夫だろうか、と一抹の不安を覚えるはず。

だって映画の中の安希子は、誰がどう見てもがんばっています。仕事中に過呼吸になっても「大丈夫ですから」と笑い、病院の診察でも「私めっちゃ元気なんですよ」と、早口で医者に伝えます。“大丈夫”と口に出していても、見ている側はこんなにもハラハラするものなのだな、と思い知ります。

仕事を辞め、貯金も無くなった安希子は、友人の紹介で“赤の他人のおっさん”と同居することになります。しかし、このおっさんとの出会いが、彼女の人生をほんの少し変えていきます。「てきとうでいいよ」が口癖の56歳のおっさんの名前は、ササポン。

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酸いも甘いも知った大人であるササポンは、いつも等身大。朝起きて仕事に行き、帰ってきたらテレビの前で缶ビールを開ける。休日は庭をいじって過ごし、同居人の安希子のことも、細かく詮索しません。生き急ぎすぎて溺れかけている安希子とは、対照的です。

いつも周囲と自分を比べてしまい、限界を超えてがんばってしまいがちな安希子も、ササポンとの生活の中で心が温まっていきます。

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ササポンはおっさんですが、彼から学べたこともたくさんあります。

肩の力が抜けているササポンは、安希子に何度か「まだ若いんだから」「そんなに無理しなくていいんじゃない」と諭します。ふと、自分も周囲の大人にそういった言葉をかけてもらったことがあるな、と思い出します。

ササポンの過去や、ササポンと関わる安希子の変化を見れば、その言葉の真意が理解できるはず。30歳は、もう若くない。そう思っている人ほど、なるほどと思えることが多いはず。

見終わった時、きっと今ある幸せに目を向けたくなる

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作中、とても印象的だったシーンがあります。がんばりすぎて満身創痍の安希子は、ササポンにこう尋ねます。

「友だちでも恋人でも家族でもないのに、なんで優しくしてくれるの?」

このシーンを見た時、思わず涙がこぼれました。たしかに、と思ってしまったからです。アラサーは大人だから、周囲の人に迷惑をかけてはいけないと思っている、安希子の気持ちに気づいてしまったからです。

ここまで読んで「なんて暗い映画なんだ」と思った人もいるでしょうか。しかしこの作品は、人生に詰んだ元アイドルが、転落していくだけの映画ではありません。

体調が悪くても、仕事がうまくいかなくても、人生は続きます。安希子の人生は、本人の主観ではうまくいっていないのですが、周囲には彼女を心配してくれる友人がいて、大変な時に支えてくれるササポンのような他人もいます。

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人生に焦りを感じていた安希子は、自分が持っている幸せを大切にできず、卑屈になっていました。女友だちは、結婚すれば自分から離れていくかもしれない。他人に頼るのは、よくない。何かひとつうまくいかないと、他のものや、もともと持っている幸せに目が向かなくなってしまうものです。

ササポンとの暮らしや、周囲の友人からの助言で、安希子は少しずつ前を向き始めます。日常の中にハッピーエンドを見つけるような形で、映画は幕を閉じます。

映画の前半は、共感しすぎて「キツいな〜」と感じる人もいるかもしれません。この作品はそのくらい、今を生きる女性たちが抱える悩みの根本を捉えています。

生きるのって、なんか大変。そう考えているのは自分だけではないんだ、と安心すると同時に、それでも前を向いて生きていく方法は、ササポンと、変化していく安希子が教えてくれます。

詰んでる元アイドルは、どうやって人生をリスタートしたのでしょうか。その答えはぜひ、劇場で確かめてみてください。

(ミクニシオリ)

Information

『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』

【深川麻衣×井浦新】
元アイドルアラサー×56 歳おっさんが共同生活!? 元SDN48・大木亜希子のまさかの実話

<ストーリー>
元アイドルの安希子(深川麻衣)は、幸せで充実した人生を歩んでいると自分に言い聞かせながら、仕事もタフにこなしているつもりだったが、ある日の通勤途中、駅で足が突然動かなくなってしまう。メンタルが病んで会社を辞めた安希子は、家賃5万円の風呂なしアパートで、仕事ナシ、男ナシ、残高10万円の現実を前に、「人生詰んだ……」という思いに包まれていた。そんなとき、友人のヒカリ(松浦リョウ)から勧められたのが、都内の一軒家で一人暮らしをする56歳のサラリーマン、ササポン(井浦新)との同居生活。意外な提案に安希子は戸惑いながらも、ヒカリの「家賃は、風呂付きで3万円」との言葉に背中を押されて、まさかのおっさんとの奇妙な同居生活をスタートさせ……。

原作:大木亜希子「人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした」(祥伝社刊)
主題歌:ねぐせ。「サンデイモーニング」
音楽:Babi
脚本:坪田文
監督:穐山茉由
製作幹事:KDDI 制作プロダクション:ダブ 配給:日活/KDDI

※この記事は2023年11月03日に公開されたものです

ミクニシオリ

1992年生まれ。2017年にライター・編集として独立。芸能人やインフルエンサー、起業家など、主に女性に対するインタビューを多数執筆。恋バナと恋愛考察も得意ジャンル。ハッピーとラッキーがみんなに届きますように。

Twitter:https://twitter.com/oohrin

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